今日もネットで何かが燃えている。明日もまた何かが燃える。あまたのネット炎上はときに激しく燃え盛るが、いつの間にか煙のように風に吹かれて忘れられていく。それでも続くのが人生ならば、彼らのその後はどうなったのか。炎上を経験した人たちのもとを訪ねてみた。今回は、’15年6月、町おこしのための「萌えキャラ」で炎上した浜口喜博さん(46歳・元鈴鹿8耐レーサー)のその後に迫っていく。◆<炎上の経緯>
’14年11月に三重県志摩市の海女をモチーフにしたご当地萌えキャラ”碧志摩メグ”が誕生。胸元が強調され、太ももがはだけたコスチュームであることから、発表から半年ほどたった頃に一部で「性的だ」などと非難される。
◆地元に愛される碧志摩メグ
三重県の伊勢神宮内宮を出てすぐにある「おはらい町」を歩いてみると、至るところにご当地萌えキャラ“碧志摩メグ”のパネルやグッズが並んでいる。かつて炎上したキャラクターとは思えないほどの愛されぶりだ。
“碧志摩メグ”の生みの親である浜口喜博さんは、元鈴鹿8耐レーサーとして13年間プロの世界で活躍。現役時代の’13~’14年に、『ヤングチャンピオン烈』で連載しているバイクマンガ『ばくおん!!』とコラボし、漫画ファンをモータースポーツの世界に引き込んだ。
「出身地であり聖地鈴鹿がある三重県からもキャラを作って盛り上げよう」と志摩市公認キャラの制作に踏み出すと、’14年11月には“碧志摩メグ”を発表。
◆「海女さんにこんな人いない」「性差別キャラ反対」
瞬く間に人気となるも、半年ほどたった頃、「海女さんにこんな人いません」「性差別キャラ反対」などと批判の声が集まり、志摩市の公認キャラクター撤回を求める署名運動にまで発展。
G7伊勢志摩サミットの開催決定もあったことで、批判的な報道が過熱していった。
◆批判は意見と受け止めて自ら市公認キャラを撤回
「『海女さんたちを侮辱している』など間違った報道がされましたが、実際の海女さんたちに聞くとほとんどの方が『かわいい』と言ってくれていた。『服の裾を長くしたほうがいいんじゃないか』など市から議論も上がりましたが、結局は何も変えていません」
公認撤回は市からの強制ではなく、結果的に浜口さんのほうから申し出た。
◆非公認キャラになったことでかえって活動の場が広がった
晴れて非公認キャラとなったことで、特定の市に限られることなく活動できるようになると“碧志摩メグ”人気が加速。人気声優・小松未可子さんを迎えてアニメ化したり、東京・立川市でラッピングバスを運行させたりするなど、次々と新たな取り組みを成功させた。
しかし、「海女とモータースポーツの世界の後継者不足」は深刻である。「まずは知ってもらえるような新たなことをしないと」と“碧志摩メグ”とともに考えている最中だ。
◆炎上はチャンス。気に留めてもらっている証拠
「炎上はチャンス。マイナスなことを言ってもらえるのは、気に留めてもらっている証拠です。肯定的な意見ばかりでは何も進まない。間違ったことをしていないなら、そのまま進むだけ。やりながら軌道修正していけばいい」
炎上の炎が消えないうちに次の仕掛けを実行する。その行動力こそが、何かを成し遂げる者の秘訣かもしれない。
<取材・文/週刊SPA!編集部>