ウーバーイーツ配達員の男が、いわゆる「当たり屋」行為で、現金をだまし取ったとして逮捕された。男が関わった交通事故は、10年間で40件以上にのぼっていて、警視庁交通捜査課など、当たり屋の常習犯とみて捜査している。
ウーバーイーツ配達員の加藤雄太容疑者(36)は、おととし11月29日、東京・中野区の路上でバイクを運転中、タクシーとすれ違った際に事故に遭い、ケガをしたなどとウソをついて、休業の損害金などとして、タクシー会社から150万円余りをだまし取った疑いがもたれている。
当時、加藤容疑者は、警視庁野方署には、ケガをしていない「物件事故」として届け出ていたという。これに対して、タクシー会社の担当者に対しては、タクシーとすれ違った際に「橋の欄干に接触した。バイクが傷ついた。足をケガした」などと連絡していたという。
そして、ケガの治療費、負傷したため仕事を休まざるを得なくなった間の損害金、バイクの修理代などを請求。タクシー会社から、9回に渡って合わせて155万5374円を受け取ったという。ところが、野方署が、加藤容疑者の”当たり屋”疑惑に気づいたという。
去年1月ごろ、野方署から、警視庁本部の交通捜査課に、加藤容疑者が多数の交通事故に関わっているとの情報提供が寄せられた。当たり屋とは、わざと交通事故を起こしたり、交通事故を偽装するなどして、保険金や賠償金をだまし取る詐欺師のこと。
交通捜査課が内偵捜査を進めたところ、加藤容疑者が、東京23区内で、2013年以降、40数件の交通事故に関与していたことが判明。2019年~2022年までに、交通事故に遭ったとしておよそ313万円の保険金を受け取っていたことも明らかになった。
ところが、これらの保険金収入があったにもかかわらず、居住地の中野区から、およそ500万円の生活保護費を受け取っていたというのだ。交通捜査課と野方署は、生活保護費のうち、およそ300万円について「不正受給」と判断し、先月8日、加藤容疑者を逮捕した。
さらに、加藤容疑者は、「打撲」の診断書を得て、ギブスを着用していたものの、「実際には、事故は起きていなかった」と断定。今月2日、詐欺の疑いで、加藤容疑者を再逮捕した。交通捜査課などは、他の”不審な”交通事故についても、当たり屋行為の余罪とみて追求する方針だ。
調べに対して加藤容疑者は、生活保護費の不正受給について「(返還の)申告をしないといけないことは分かっていた」と容疑を認めている。一方、当たり屋行為については「金をだまし取ったことは間違いない」などと認めているという。
しかし、逮捕容疑のうち、事故の有無については、「事故は本当にあった」と主張しているそうだ。タクシー会社からだまし取った金や生活保護費の使い道については、「競艇と競馬などギャンブルに使った」などと話しているという。