「激しく咳き込んで体調が悪そうです」
男が女性の母親に連絡を入れたのは、昨年10月12日の朝のことだ。両親が女性の自宅マンションへ駆けつけると、意識はあったが咳が止まらない状態。救急搬送された病院で、3日後の15日に死亡が確認された。司法解剖の結果、女性の死因は毒性の強いタリウム中毒による急性呼吸窮迫症候群だった。
「タリウムは以前、殺鼠剤や農薬に使われていた劇物です。1グラム体内に入っただけで、成人でも死に至るといわれます。過去には殺人事件に使われたこともあったため、現在は厳しく規制され入手は困難です。警察は、亡くなった女性と一緒にいた男から任意で事情聴取をしていました」(全国紙社会部記者)
女性と一緒にいた男――。大阪府警捜査1課は3月3日、不動産会社を経営する京都市左京区の宮本一希容疑者(37)を殺人の疑いで逮捕する。宮本容疑者は亡くなった立命館大学3年の浜野日菜子さん(当時21)と、事件直前の昨年10月11日に京都市内の高級バーなどで飲食後、彼女の自宅マンションへ移り2人で酒を飲んでいたという。
「宮本容疑者は不動産業の他にも、京都を訪れた観光客のために舞妓のイベントなどを手がけるビジネスをしていました。京都五花街の一つで、お茶屋も購入していたとか。浜野さんは、宮本容疑者が開くイベントのスタッフとして働いていたそうです。2人はとても仲が良く、頻繁に高級レストランで食事をしていたといいます。
宮本容疑者の事業は、新型コロナウイルスの影響で一時厳しい状態の時もありましたが、おおむね好調だったそうです。宮本容疑者の自宅は京都市内の高級住宅地に建ち、ベンツなど複数の外国車が停まっていました。家族はたいへんな資産家で、京都の観光業界では知らない人がいないほどの有名な人物です。大人しい性格で、物腰が柔らかい。宮本容疑者には妻子がいたという話もあります」(観光業関係者)
一方、大阪市内の高校から立命館大へ進学し1人暮らしをしていたという浜野さん。漫画が好きで、イラストレーターを目指していたという。
「宮本容疑者と交際していたと思っていた人も多いようでした。事件直前も、2人で飲食をした後に浜野さんの自宅へ。浜野さんの体調が急変したことに対し宮本容疑者は逮捕前の事情聴取で、こう話していたそうです。『飲酒後に浜野さんが咳き込んだ。薬局で薬を買って飲ませた』と。実際、防犯カメラには宮本容疑者が1人で薬局に行く姿が映っていました。
119番通報しなかった理由については、『浜野さんが拒否したため』と話しています。警察は、宮本容疑者がなんらかの方法でタリウムを浜野さんに摂取させ殺害したと判断。治療を遅らせ、介抱したように装ったとみられます。事件直後には、ゴルフの練習場へ行ったとの情報も。宮本容疑者は逮捕後、黙秘を続けているそうです」(前出・記者)
浜野さんの両親によると、彼女には様々な予定があり自殺する理由はなかったという。浜野さんの自宅からは、タリウムは見つかっていない。警察は宮本容疑者が外部から持ち込んだとみて、タリウムの詳しい入手経路や犯行動機を調べている。