カードを集めて、自分のデッキを作り対戦するトレーディングカードゲーム(以下、TCG)。『遊戯王』、『ポケモンカード』、『デュエルマスターズ』などさまざまなTCGがあり、知略を巡らせ手に汗握る対戦をしたことがある方も少なくないだろう。
昨年6月に日本玩具協会が発表した統計によれば、2021年度の「カードゲーム・トレーディングカード」の市場規模は1782億円4900万円。2001年に統計を取り始めてからの最高額を叩き出しており、業界は好調と言えそうだ。
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そんな市場規模拡大を背景に、TCGのカードの中古価格が今、かなり高騰しているのをご存じだろうか。たとえば、遊戯王シリーズの人気モンスターカード「青眼の白竜」の初期のシークレットレアは、現在では美品だと1枚300万円の高値で売買されることも珍しくはないという。ほかにも少し前まで数万円で取引されていたポケモンカードが、現在では何十万~100万円に値上がりするなど、ここ1、2年で一気に高騰が進んでいるようだ。そしてこの高騰の波に乗って、投資目的でカードを購入する人もいるらしく、TCGのカードをコレクションすることは、ある種、資産運用の様相を呈しているのである。一体なぜここまでTCGの価格が上がってきているのか?そこで今回は、トレカ専用のフリマアプリ「magi」を運営する株式会社ジラフの担当者に、TCG高騰の理由について話を聞いた。中には1200万円のカードも…はじめに現在高騰しているTCGには、どんなカードが多いのか。「最近、勢いがあるのはポケモンカードと漫画『ONE PIECE』のキャラクターをモデルにした『ONE PIECEカードゲーム』ですね。このふたつが主に上がり続けているのですが、遊戯王も恒常的に中古価格が高め。またデュエルマスターズは一時期下火になっていましたが、現在は盛り返している状況です。magiで販売価格が一番高かったカードは、ゲーム『ポケモンスナップ』のプロモーション用に刷られたポケモンカードで、なんと1200万円の値がつきました」Photo by gettyimages 1枚のカードに1200万円もの値段が付くのは驚くべき事態だ。ではなぜこれほどまでに、高騰しているのだろう。「大前提として値上がりしているカードのほとんどは、流通量が少ないんです。流通量の少ない、いわゆるレアカードがほしくなるのはコレクターの性ですし、なおかつ高騰しているカードであればあるほど、儲ける目的で買い取りたいという個人、業者も出てきます。こうして高値でも購入して、それ以上の値段で転売するというサイクルが続き、徐々に中古カード全体が値上がりしていきました。これがTCG全体の中古市場が高騰している理由です」なぜ高騰しているのか?以上がTCG値上がりの大まかな“からくり”だというが、現在の異常とも呼べる高騰にはほかの要因も関係しているそうだ。「コロナ禍に突入して、政府による金融緩和および巣ごもり需要が拡大したことも要因のひとつですね。これによりカードを買い求める方が急増したことをはじめ、カード需要に対応するカードショップが今までとは比ではないほど参入してきたことも、高騰に拍車をかけたのです。TCG業界は市場全体に需要があって掘り出し物も多いので、人が集まりやすかったのではないかと思います」しかし、TCGというジャンルの性質上、すぐにカードの価値が変動することも珍しくはない。その最たる例がゲームのレギュレーションの変更により、カードの価値が上下するという現象だ。たとえば、現行ルール下においてゲームバランスを崩壊させてしまうほど強いカードや発売から一定程度の期間が経ったカードを、公式側が公式戦での使用を禁止することがあるが、こうした決定によって使えなくなることを“スタン落ちする”という。Photo by gettyimages 「レギュレーションの変更によりスタン落ちしたカードは公式戦で使えないため、復刻でもされない限り増産はしません。これ以上、枚数が増えることがないため市場での希少価値が高まり、価格が高騰しやすのです。特にレギュレーション変更が頻繁に行われているポケモンカードでは、再販が見込めないレアものが一気に高くなる傾向があります。しかし、スタン落ちしたカードが必ず高騰するわけではなく、逆に価値が下がるケースもあります。今まで使用率の高かったカードが突然使えなくなり、競技シーンでの価値が下がり、その影響で価格が暴落することもあるのです」犯罪のリスクも…高騰化の弊害カードの高騰により、転売ヤーの増加はもちろん、犯罪などのトラブルに見舞われるリスクも増しているという。「特に新しく発売されたカードのパックは、未開封品だと高く売れる可能性が出てくるので、転売ヤーに狙われやすい。転売ヤーだけに商品を握られてしまうと、そのほかの純粋にTCGを楽しみたいファンたちに商品が行き届かなくなるので、店側では包装用のビニールを外してわざと開封したり、抽選販売にしたり、購入制限を設けたりと対策を施しています。ただ転売ヤーは独自の情報網を持っていることが多く、あの手この手で買い求めようとしてくるので、完全な対策とは言えないのが実情です。また最近では、カードショップの空き巣被害が急増しているという話をよく耳にします。犯人は単独、集団のどちらのパターンもあるようですが、夜中などにカードショップに侵入し、数百万円相当のカードを持ち去るという犯罪行為が多発しており、多くの店が頭を抱えています。2022年だけで窃盗事件は30件ほどに上っており、業界内では深刻な問題として受け止められています」Photo by gettyimages そして近年では、個人や店側が独自に選んだカードを封入して販売する、オリジナルパック(オリパ)の増加も著しく、高い値段で販売されているようだ。オリパには、売れないカードをまとめ売りして在庫処分するという側面も強いが、なかには数万~十万円相当の当たりカードが入っていることもある。たとえば、1月5日にVTuberの加賀美ハヤト氏がオリパに相当する150万円のカードゲーム福袋を購入し、200万円相当のレアカードを引き当てたと話題になったが、大きな当たりを引くことも夢ではないのである。しかし、一方で当たりが出ないことも当然考えられる。昨年10月29日、YouTuberの霞うた氏がとあるオンラインカードショップのオリパを43万円分購入したところ、当たりのカードが一枚も出ないということもあった。いずれにしてもオリパがよく売れると、販売店側はより多くのカードを仕入れてオリパを作るため、中古市場に出回るカードの在庫が枯渇し、カード価格がより高騰するようになる。そして先述のように、多額の金額をかけて購入したとしても当たりカードが出ないこともあるため、高額オリパはトラブルの元になっているようだ。今後も値上がりが続く?冒頭でお伝えしたとおり、2021年度の「カードゲーム・トレーディングカード」の市場規模は1800億円に迫る勢いだが、この業界全体の潤いを受けて、中古市場でもまだまだ当分は値上がりが続くのだろうか。「浮き沈みが激しい業界ですので断定はできませんが、しばらくは続くと見込んでいます。ユーザー一人ひとりがカードを所有していて、業界全体で盛んに取引されている昨今の状況を見ると、まだまだ中古カードに需要はあるかと思われますし、急なルール、レギュレーションの変更でもなければ中古価格が下がる要因もないので、一気にいくつものカードが手放されることは考えづらいです。結果、市場に流通していないカードほど価値は上がり続けるでしょう。メーカーも売れ残りを懸念して、新パックを余分に製造しないと考えられるので、現時点で値段が高いカードはなかなか値下がりしないのではないでしょうか。ですが、人気のあるカードとそうでないカードの二極化も進んでいるので、すべてが値上がりしてカード自体が買えなくなるという事態にはならないでしょう」Photo by gettyimages ――高騰化するTCG市場。数年経てば、今所持しているカードの値段がさらに上がる可能性もあるが、一方でトラブルも増えてきているようだ。誰しもが安全・健全な取引が行える市場になることを期待したい。(取材・文=文月/A4studio)
そんな市場規模拡大を背景に、TCGのカードの中古価格が今、かなり高騰しているのをご存じだろうか。
たとえば、遊戯王シリーズの人気モンスターカード「青眼の白竜」の初期のシークレットレアは、現在では美品だと1枚300万円の高値で売買されることも珍しくはないという。ほかにも少し前まで数万円で取引されていたポケモンカードが、現在では何十万~100万円に値上がりするなど、ここ1、2年で一気に高騰が進んでいるようだ。
そしてこの高騰の波に乗って、投資目的でカードを購入する人もいるらしく、TCGのカードをコレクションすることは、ある種、資産運用の様相を呈しているのである。
一体なぜここまでTCGの価格が上がってきているのか?
そこで今回は、トレカ専用のフリマアプリ「magi」を運営する株式会社ジラフの担当者に、TCG高騰の理由について話を聞いた。
はじめに現在高騰しているTCGには、どんなカードが多いのか。
「最近、勢いがあるのはポケモンカードと漫画『ONE PIECE』のキャラクターをモデルにした『ONE PIECEカードゲーム』ですね。このふたつが主に上がり続けているのですが、遊戯王も恒常的に中古価格が高め。またデュエルマスターズは一時期下火になっていましたが、現在は盛り返している状況です。
magiで販売価格が一番高かったカードは、ゲーム『ポケモンスナップ』のプロモーション用に刷られたポケモンカードで、なんと1200万円の値がつきました」
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1枚のカードに1200万円もの値段が付くのは驚くべき事態だ。ではなぜこれほどまでに、高騰しているのだろう。「大前提として値上がりしているカードのほとんどは、流通量が少ないんです。流通量の少ない、いわゆるレアカードがほしくなるのはコレクターの性ですし、なおかつ高騰しているカードであればあるほど、儲ける目的で買い取りたいという個人、業者も出てきます。こうして高値でも購入して、それ以上の値段で転売するというサイクルが続き、徐々に中古カード全体が値上がりしていきました。これがTCG全体の中古市場が高騰している理由です」なぜ高騰しているのか?以上がTCG値上がりの大まかな“からくり”だというが、現在の異常とも呼べる高騰にはほかの要因も関係しているそうだ。「コロナ禍に突入して、政府による金融緩和および巣ごもり需要が拡大したことも要因のひとつですね。これによりカードを買い求める方が急増したことをはじめ、カード需要に対応するカードショップが今までとは比ではないほど参入してきたことも、高騰に拍車をかけたのです。TCG業界は市場全体に需要があって掘り出し物も多いので、人が集まりやすかったのではないかと思います」しかし、TCGというジャンルの性質上、すぐにカードの価値が変動することも珍しくはない。その最たる例がゲームのレギュレーションの変更により、カードの価値が上下するという現象だ。たとえば、現行ルール下においてゲームバランスを崩壊させてしまうほど強いカードや発売から一定程度の期間が経ったカードを、公式側が公式戦での使用を禁止することがあるが、こうした決定によって使えなくなることを“スタン落ちする”という。Photo by gettyimages 「レギュレーションの変更によりスタン落ちしたカードは公式戦で使えないため、復刻でもされない限り増産はしません。これ以上、枚数が増えることがないため市場での希少価値が高まり、価格が高騰しやすのです。特にレギュレーション変更が頻繁に行われているポケモンカードでは、再販が見込めないレアものが一気に高くなる傾向があります。しかし、スタン落ちしたカードが必ず高騰するわけではなく、逆に価値が下がるケースもあります。今まで使用率の高かったカードが突然使えなくなり、競技シーンでの価値が下がり、その影響で価格が暴落することもあるのです」犯罪のリスクも…高騰化の弊害カードの高騰により、転売ヤーの増加はもちろん、犯罪などのトラブルに見舞われるリスクも増しているという。「特に新しく発売されたカードのパックは、未開封品だと高く売れる可能性が出てくるので、転売ヤーに狙われやすい。転売ヤーだけに商品を握られてしまうと、そのほかの純粋にTCGを楽しみたいファンたちに商品が行き届かなくなるので、店側では包装用のビニールを外してわざと開封したり、抽選販売にしたり、購入制限を設けたりと対策を施しています。ただ転売ヤーは独自の情報網を持っていることが多く、あの手この手で買い求めようとしてくるので、完全な対策とは言えないのが実情です。また最近では、カードショップの空き巣被害が急増しているという話をよく耳にします。犯人は単独、集団のどちらのパターンもあるようですが、夜中などにカードショップに侵入し、数百万円相当のカードを持ち去るという犯罪行為が多発しており、多くの店が頭を抱えています。2022年だけで窃盗事件は30件ほどに上っており、業界内では深刻な問題として受け止められています」Photo by gettyimages そして近年では、個人や店側が独自に選んだカードを封入して販売する、オリジナルパック(オリパ)の増加も著しく、高い値段で販売されているようだ。オリパには、売れないカードをまとめ売りして在庫処分するという側面も強いが、なかには数万~十万円相当の当たりカードが入っていることもある。たとえば、1月5日にVTuberの加賀美ハヤト氏がオリパに相当する150万円のカードゲーム福袋を購入し、200万円相当のレアカードを引き当てたと話題になったが、大きな当たりを引くことも夢ではないのである。しかし、一方で当たりが出ないことも当然考えられる。昨年10月29日、YouTuberの霞うた氏がとあるオンラインカードショップのオリパを43万円分購入したところ、当たりのカードが一枚も出ないということもあった。いずれにしてもオリパがよく売れると、販売店側はより多くのカードを仕入れてオリパを作るため、中古市場に出回るカードの在庫が枯渇し、カード価格がより高騰するようになる。そして先述のように、多額の金額をかけて購入したとしても当たりカードが出ないこともあるため、高額オリパはトラブルの元になっているようだ。今後も値上がりが続く?冒頭でお伝えしたとおり、2021年度の「カードゲーム・トレーディングカード」の市場規模は1800億円に迫る勢いだが、この業界全体の潤いを受けて、中古市場でもまだまだ当分は値上がりが続くのだろうか。「浮き沈みが激しい業界ですので断定はできませんが、しばらくは続くと見込んでいます。ユーザー一人ひとりがカードを所有していて、業界全体で盛んに取引されている昨今の状況を見ると、まだまだ中古カードに需要はあるかと思われますし、急なルール、レギュレーションの変更でもなければ中古価格が下がる要因もないので、一気にいくつものカードが手放されることは考えづらいです。結果、市場に流通していないカードほど価値は上がり続けるでしょう。メーカーも売れ残りを懸念して、新パックを余分に製造しないと考えられるので、現時点で値段が高いカードはなかなか値下がりしないのではないでしょうか。ですが、人気のあるカードとそうでないカードの二極化も進んでいるので、すべてが値上がりしてカード自体が買えなくなるという事態にはならないでしょう」Photo by gettyimages ――高騰化するTCG市場。数年経てば、今所持しているカードの値段がさらに上がる可能性もあるが、一方でトラブルも増えてきているようだ。誰しもが安全・健全な取引が行える市場になることを期待したい。(取材・文=文月/A4studio)
1枚のカードに1200万円もの値段が付くのは驚くべき事態だ。ではなぜこれほどまでに、高騰しているのだろう。
「大前提として値上がりしているカードのほとんどは、流通量が少ないんです。流通量の少ない、いわゆるレアカードがほしくなるのはコレクターの性ですし、なおかつ高騰しているカードであればあるほど、儲ける目的で買い取りたいという個人、業者も出てきます。こうして高値でも購入して、それ以上の値段で転売するというサイクルが続き、徐々に中古カード全体が値上がりしていきました。これがTCG全体の中古市場が高騰している理由です」
以上がTCG値上がりの大まかな“からくり”だというが、現在の異常とも呼べる高騰にはほかの要因も関係しているそうだ。
「コロナ禍に突入して、政府による金融緩和および巣ごもり需要が拡大したことも要因のひとつですね。これによりカードを買い求める方が急増したことをはじめ、カード需要に対応するカードショップが今までとは比ではないほど参入してきたことも、高騰に拍車をかけたのです。TCG業界は市場全体に需要があって掘り出し物も多いので、人が集まりやすかったのではないかと思います」
しかし、TCGというジャンルの性質上、すぐにカードの価値が変動することも珍しくはない。
その最たる例がゲームのレギュレーションの変更により、カードの価値が上下するという現象だ。たとえば、現行ルール下においてゲームバランスを崩壊させてしまうほど強いカードや発売から一定程度の期間が経ったカードを、公式側が公式戦での使用を禁止することがあるが、こうした決定によって使えなくなることを“スタン落ちする”という。
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「レギュレーションの変更によりスタン落ちしたカードは公式戦で使えないため、復刻でもされない限り増産はしません。これ以上、枚数が増えることがないため市場での希少価値が高まり、価格が高騰しやすのです。特にレギュレーション変更が頻繁に行われているポケモンカードでは、再販が見込めないレアものが一気に高くなる傾向があります。しかし、スタン落ちしたカードが必ず高騰するわけではなく、逆に価値が下がるケースもあります。今まで使用率の高かったカードが突然使えなくなり、競技シーンでの価値が下がり、その影響で価格が暴落することもあるのです」犯罪のリスクも…高騰化の弊害カードの高騰により、転売ヤーの増加はもちろん、犯罪などのトラブルに見舞われるリスクも増しているという。「特に新しく発売されたカードのパックは、未開封品だと高く売れる可能性が出てくるので、転売ヤーに狙われやすい。転売ヤーだけに商品を握られてしまうと、そのほかの純粋にTCGを楽しみたいファンたちに商品が行き届かなくなるので、店側では包装用のビニールを外してわざと開封したり、抽選販売にしたり、購入制限を設けたりと対策を施しています。ただ転売ヤーは独自の情報網を持っていることが多く、あの手この手で買い求めようとしてくるので、完全な対策とは言えないのが実情です。また最近では、カードショップの空き巣被害が急増しているという話をよく耳にします。犯人は単独、集団のどちらのパターンもあるようですが、夜中などにカードショップに侵入し、数百万円相当のカードを持ち去るという犯罪行為が多発しており、多くの店が頭を抱えています。2022年だけで窃盗事件は30件ほどに上っており、業界内では深刻な問題として受け止められています」Photo by gettyimages そして近年では、個人や店側が独自に選んだカードを封入して販売する、オリジナルパック(オリパ)の増加も著しく、高い値段で販売されているようだ。オリパには、売れないカードをまとめ売りして在庫処分するという側面も強いが、なかには数万~十万円相当の当たりカードが入っていることもある。たとえば、1月5日にVTuberの加賀美ハヤト氏がオリパに相当する150万円のカードゲーム福袋を購入し、200万円相当のレアカードを引き当てたと話題になったが、大きな当たりを引くことも夢ではないのである。しかし、一方で当たりが出ないことも当然考えられる。昨年10月29日、YouTuberの霞うた氏がとあるオンラインカードショップのオリパを43万円分購入したところ、当たりのカードが一枚も出ないということもあった。いずれにしてもオリパがよく売れると、販売店側はより多くのカードを仕入れてオリパを作るため、中古市場に出回るカードの在庫が枯渇し、カード価格がより高騰するようになる。そして先述のように、多額の金額をかけて購入したとしても当たりカードが出ないこともあるため、高額オリパはトラブルの元になっているようだ。今後も値上がりが続く?冒頭でお伝えしたとおり、2021年度の「カードゲーム・トレーディングカード」の市場規模は1800億円に迫る勢いだが、この業界全体の潤いを受けて、中古市場でもまだまだ当分は値上がりが続くのだろうか。「浮き沈みが激しい業界ですので断定はできませんが、しばらくは続くと見込んでいます。ユーザー一人ひとりがカードを所有していて、業界全体で盛んに取引されている昨今の状況を見ると、まだまだ中古カードに需要はあるかと思われますし、急なルール、レギュレーションの変更でもなければ中古価格が下がる要因もないので、一気にいくつものカードが手放されることは考えづらいです。結果、市場に流通していないカードほど価値は上がり続けるでしょう。メーカーも売れ残りを懸念して、新パックを余分に製造しないと考えられるので、現時点で値段が高いカードはなかなか値下がりしないのではないでしょうか。ですが、人気のあるカードとそうでないカードの二極化も進んでいるので、すべてが値上がりしてカード自体が買えなくなるという事態にはならないでしょう」Photo by gettyimages ――高騰化するTCG市場。数年経てば、今所持しているカードの値段がさらに上がる可能性もあるが、一方でトラブルも増えてきているようだ。誰しもが安全・健全な取引が行える市場になることを期待したい。(取材・文=文月/A4studio)
「レギュレーションの変更によりスタン落ちしたカードは公式戦で使えないため、復刻でもされない限り増産はしません。これ以上、枚数が増えることがないため市場での希少価値が高まり、価格が高騰しやすのです。特にレギュレーション変更が頻繁に行われているポケモンカードでは、再販が見込めないレアものが一気に高くなる傾向があります。
しかし、スタン落ちしたカードが必ず高騰するわけではなく、逆に価値が下がるケースもあります。今まで使用率の高かったカードが突然使えなくなり、競技シーンでの価値が下がり、その影響で価格が暴落することもあるのです」
カードの高騰により、転売ヤーの増加はもちろん、犯罪などのトラブルに見舞われるリスクも増しているという。
「特に新しく発売されたカードのパックは、未開封品だと高く売れる可能性が出てくるので、転売ヤーに狙われやすい。転売ヤーだけに商品を握られてしまうと、そのほかの純粋にTCGを楽しみたいファンたちに商品が行き届かなくなるので、店側では包装用のビニールを外してわざと開封したり、抽選販売にしたり、購入制限を設けたりと対策を施しています。
ただ転売ヤーは独自の情報網を持っていることが多く、あの手この手で買い求めようとしてくるので、完全な対策とは言えないのが実情です。
また最近では、カードショップの空き巣被害が急増しているという話をよく耳にします。犯人は単独、集団のどちらのパターンもあるようですが、夜中などにカードショップに侵入し、数百万円相当のカードを持ち去るという犯罪行為が多発しており、多くの店が頭を抱えています。2022年だけで窃盗事件は30件ほどに上っており、業界内では深刻な問題として受け止められています」
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そして近年では、個人や店側が独自に選んだカードを封入して販売する、オリジナルパック(オリパ)の増加も著しく、高い値段で販売されているようだ。オリパには、売れないカードをまとめ売りして在庫処分するという側面も強いが、なかには数万~十万円相当の当たりカードが入っていることもある。たとえば、1月5日にVTuberの加賀美ハヤト氏がオリパに相当する150万円のカードゲーム福袋を購入し、200万円相当のレアカードを引き当てたと話題になったが、大きな当たりを引くことも夢ではないのである。しかし、一方で当たりが出ないことも当然考えられる。昨年10月29日、YouTuberの霞うた氏がとあるオンラインカードショップのオリパを43万円分購入したところ、当たりのカードが一枚も出ないということもあった。いずれにしてもオリパがよく売れると、販売店側はより多くのカードを仕入れてオリパを作るため、中古市場に出回るカードの在庫が枯渇し、カード価格がより高騰するようになる。そして先述のように、多額の金額をかけて購入したとしても当たりカードが出ないこともあるため、高額オリパはトラブルの元になっているようだ。今後も値上がりが続く?冒頭でお伝えしたとおり、2021年度の「カードゲーム・トレーディングカード」の市場規模は1800億円に迫る勢いだが、この業界全体の潤いを受けて、中古市場でもまだまだ当分は値上がりが続くのだろうか。「浮き沈みが激しい業界ですので断定はできませんが、しばらくは続くと見込んでいます。ユーザー一人ひとりがカードを所有していて、業界全体で盛んに取引されている昨今の状況を見ると、まだまだ中古カードに需要はあるかと思われますし、急なルール、レギュレーションの変更でもなければ中古価格が下がる要因もないので、一気にいくつものカードが手放されることは考えづらいです。結果、市場に流通していないカードほど価値は上がり続けるでしょう。メーカーも売れ残りを懸念して、新パックを余分に製造しないと考えられるので、現時点で値段が高いカードはなかなか値下がりしないのではないでしょうか。ですが、人気のあるカードとそうでないカードの二極化も進んでいるので、すべてが値上がりしてカード自体が買えなくなるという事態にはならないでしょう」Photo by gettyimages ――高騰化するTCG市場。数年経てば、今所持しているカードの値段がさらに上がる可能性もあるが、一方でトラブルも増えてきているようだ。誰しもが安全・健全な取引が行える市場になることを期待したい。(取材・文=文月/A4studio)
そして近年では、個人や店側が独自に選んだカードを封入して販売する、オリジナルパック(オリパ)の増加も著しく、高い値段で販売されているようだ。オリパには、売れないカードをまとめ売りして在庫処分するという側面も強いが、なかには数万~十万円相当の当たりカードが入っていることもある。
たとえば、1月5日にVTuberの加賀美ハヤト氏がオリパに相当する150万円のカードゲーム福袋を購入し、200万円相当のレアカードを引き当てたと話題になったが、大きな当たりを引くことも夢ではないのである。
しかし、一方で当たりが出ないことも当然考えられる。昨年10月29日、YouTuberの霞うた氏がとあるオンラインカードショップのオリパを43万円分購入したところ、当たりのカードが一枚も出ないということもあった。
いずれにしてもオリパがよく売れると、販売店側はより多くのカードを仕入れてオリパを作るため、中古市場に出回るカードの在庫が枯渇し、カード価格がより高騰するようになる。そして先述のように、多額の金額をかけて購入したとしても当たりカードが出ないこともあるため、高額オリパはトラブルの元になっているようだ。
冒頭でお伝えしたとおり、2021年度の「カードゲーム・トレーディングカード」の市場規模は1800億円に迫る勢いだが、この業界全体の潤いを受けて、中古市場でもまだまだ当分は値上がりが続くのだろうか。
「浮き沈みが激しい業界ですので断定はできませんが、しばらくは続くと見込んでいます。ユーザー一人ひとりがカードを所有していて、業界全体で盛んに取引されている昨今の状況を見ると、まだまだ中古カードに需要はあるかと思われますし、急なルール、レギュレーションの変更でもなければ中古価格が下がる要因もないので、一気にいくつものカードが手放されることは考えづらいです。結果、市場に流通していないカードほど価値は上がり続けるでしょう。
メーカーも売れ残りを懸念して、新パックを余分に製造しないと考えられるので、現時点で値段が高いカードはなかなか値下がりしないのではないでしょうか。ですが、人気のあるカードとそうでないカードの二極化も進んでいるので、すべてが値上がりしてカード自体が買えなくなるという事態にはならないでしょう」
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――高騰化するTCG市場。数年経てば、今所持しているカードの値段がさらに上がる可能性もあるが、一方でトラブルも増えてきているようだ。誰しもが安全・健全な取引が行える市場になることを期待したい。(取材・文=文月/A4studio)
――高騰化するTCG市場。数年経てば、今所持しているカードの値段がさらに上がる可能性もあるが、一方でトラブルも増えてきているようだ。誰しもが安全・健全な取引が行える市場になることを期待したい。
(取材・文=文月/A4studio)