京都市の立命館大3年浜野日菜子さん(21)がタリウムの摂取により殺害された事件で、浜野さんが病院に向かう車の中で吐いたものから致死量に達するタリウムが検出されたことが捜査関係者への取材でわかった。
浜野さんは、不動産会社経営宮本一希容疑者(37)(殺人容疑で逮捕)と自宅で飲酒した後、体調が急変しており、大阪府警は、タリウムの特性と吐いた時間帯から、宮本容疑者が多量に準備した可能性があるとみている。
捜査関係者によると、宮本容疑者は逮捕前の府警の任意聴取に対し、昨年10月12日未明以降、浜野さんが一人暮らしをする京都市の自宅マンションで一緒に飲酒した後、浜野さんがせき込み始めたと説明。府警は、宮本容疑者が浜野さんにタリウムを混ぜた酒を飲ませたとの見方を強めている。
タリウムは一般的に入手困難で、致死量は1グラム程度。摂取すると早ければ10分程度で嘔吐(おうと)や腹痛などの症状が表れ、しばらくすると神経に障害が生じて呼吸不全に陥り、死亡するとされる。
宮本容疑者から連絡を受けた浜野さんの両親が、浜野さんを車に乗せて自宅を出たのは12日朝。浜野さんは大阪府内の病院に向かう途中に車内で嘔吐した。浜野さんは15日に呼吸不全で亡くなり、府警が浜野さんの服に付着していた嘔吐物を調べたところ、致死量に達するタリウムが検出されたという。
浜野さんが吐いたのは、摂取から一定の時間が経過した後で、既に体内に吸収されている分があったとみられる。唐木英明・東京大名誉教授(毒性学)は「嘔吐物から致死量のタリウムが検出されたのであれば、その数倍を摂取した可能性がある」と指摘している。
一方、宮本容疑者は事件当日、浜野さんを両親に引き渡した後、ゴルフ練習場に出かけていたという。逮捕前の任意聴取に「仕事があったので両親に連絡した」という趣旨の説明をしており、府警は不自然な説明をした理由を調べる。宮本容疑者は逮捕後の調べに黙秘している。