2018年の西日本豪雨の復興事業として設けられた補助金約6660万円を不正受給したとして、愛媛県警は31日、西予市の紙加工会社「宇和特紙」(民事再生中)の元社長・大西和人容疑者(62)(四国中央市)ら3人を詐欺容疑で逮捕した。
西日本豪雨の復興事業を巡って逮捕者が出るのは初めてで、県警が実態解明を進める。
ほかに逮捕されたのは、同社の元経理部長・三好照夫(62)(四国中央市)、取引先で東京都内にある包装材メーカー「いしだ屋」(破産)の元専務・関勇一郎(52)(東京都足立区)の両容疑者。
発表では、大西容疑者らは被災した中小企業などの再建を支援する「グループ補助金」制度を利用。19年8月と20年2月に虚偽の申請書や実績報告書を西予市商工会などに提出し、同3月に補助金6659万8000円をだまし取った疑い。県警は捜査に支障があるとして、3人の認否を明らかにしていない。
県によると、「グループ補助金」は18年9月に導入された。県が中小企業などでつくるグループの復興事業計画の適否を判断し、施設や設備の復旧費用の4分の3などを補助する仕組み。
宇和特紙はウェットティッシュなど紙製品を製造していた。県によると、豪雨で被災した同社は、故障した機械など8台を購入したり、修理したりしたと報告していたが、実際はリース契約で済ませていたという。
同社は21年8月、地裁に民事再生手続きを申し立てた。申し立て代理人の弁護士が経理に不可解な点があることに気付き、連絡を受けた県が昨年8月に被害届を出していた。
■大西容疑者 関与を否定
大西容疑者は昨年8月、読売新聞の取材に、不正受給への関与を否定していた。
――なぜ補助金を不正受給する事態になったのか。
「私の管理不足です。申請書に判を押したのは自分だが、補助金や資金繰りは経理部長の三好に任せていた。準備書類まできちんと確認していなかった」
――当時、不正が行われていると認識していたか。
「知らなかった。会社の民事再生手続き中に弁護士に指摘されて気が付いた」
――なぜ不正に気付かなかったのか。
「本社は西予市にあるが、四国中央市での事業が忙しくなった。私がほとんど本社にいない状態が続き、管理ができていなかった」
■三好容疑者 関与認める
三好容疑者は昨年9月、読売新聞の取材に対し、事件への関与を認めていた。
――なぜ補助金を不正受給する事態になったのか。
「社長の一存です。運転資金がなくなり、どうしようもなくなったんじゃないか。私も実行役なので無傷ではないが、全ては社長の指示だ」
――指示とはいえ、なぜ不正に手を染めたのか。
「高校の同級生で、失業した時に助けてもらった。拾われた身で恩もあったので、絶対やらなあかんかった。不正だとわかっていたが、会社を助けるために仕方なかった」