組織的な露天風呂の盗撮事件で、静岡県警生活保安課は1日、盗撮グループの全体像が判明したとして、捜査状況を公表した。
グループのリーダー格として起訴された男(50)(兵庫県迷惑防止条例違反などで公判中)は、「30年前から、100か所以上で、少なくとも1万人は盗撮した」などと供述しているという。
県警は、これまでに関係先80か所を捜索し、ハードディスクやパソコンなど1200点を超える資料を押収。1日、東京都在住の医師ら3人を児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑などで静岡地検に書類送検したと発表した。一連の事件で摘発されたのは、11都道府県の16人に上る。
県警によると、グループはSNSなどを通じて知り合い、複数の隠語を使って、盗撮などを行っていた。知人の女性を温泉旅行などに誘い出して盗撮する「プロジェクト」、動画にテロップをつけておもしろおかしく編集する「魔改造」、睡眠薬で女性を眠らせて性犯罪に及ぶ「眠り姫」など。撮影した画像や動画は、販売目的ではなく、グループ内で「上映会」を開き、楽しんでいたとされる。
「盗撮のカリスマ」としてグループの中心的存在だった男は、これまでの調べに対し、「20歳くらいの頃から約30年間盗撮してきた」と話し、沖縄県を除く46都道府県で盗撮してきたなどと供述しているという。県警生活保安課の寺坂直己次席は「今後も徹底的に捜査を続けていく」と話した。
組織的な露天風呂の盗撮事件が相次いだことを受け、県内では盗撮を防ぐための機器を導入する温泉施設も出ている。
南伊豆町の旅館「石花海別邸 かぎや」では、露天風呂の外壁に照明を設置した。旅館に隣接する山側を照らすことで、山中から露天風呂を盗撮しようとしても、強い逆光となってうまく撮影できないという。
同旅館ではもともと、景観を良くするため、隣接する山を照らす照明を設置していた。盗撮事件が相次いでいることを知り、より強力な光を発するLEDライトに変更したという。LEDライトは1台数千円程度で、県温泉協会会長で、同旅館を経営する定居康夫さん(74)が自ら取り付けた。定居さんは「遠くの山から盗撮されることがあるとは思いもしなかった。対策をしたので、安心して露天風呂に入ってほしい」と話している。