【大田(テジョン)(韓国中部)=溝田拓士】長崎県対馬市の観音寺から盗まれた仏像の所有権が、観音寺にあると認めた大田高裁の1日の控訴審判決は、日本への返還に道を開くもので日韓関係改善の流れを後押ししそうだ。
判決後、所有権を認められなかった原告の韓国・浮石(プソク)寺関係者は「最近の韓日関係の変化が全く影響を与えていないとは考えにくい」と述べた。保守の尹錫悦(ユンソンニョル)政権の下で、日韓の最大の懸案である元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)訴訟問題の解決に向けた機運が高まり、今回の司法判断もこの流れに沿ったものだとする見方だ。
韓国メディアの関心も高く、「1審覆して原告敗訴」(中央日報電子版)などと判決内容を報じた。韓国仏教界は、猛反発しているという。
韓国の裁判所はこれまで、元慰安婦や元徴用工訴訟など歴史問題で日韓関係の摩擦の原因となる判決を相次いで出してきた。仏像をめぐる裁判も「韓国司法の暴走」の一例との見方が日本国内にはある。
今回の1審判決の取り消しは、反日なら何でも許されるという「反日無罪」の流れが変化したことをうかがわせる。
控訴審の対象となった「観世音菩薩坐像(かんぜおんぼさつざぞう)」とは別に、韓国人窃盗団に海神神社(対馬市)から盗まれた国指定重要文化財「銅造如来立像(どうぞうにょらいりゅうぞう)」は15年に返還されている。「坐像」の返還が決まれば、仏像訴訟問題は決着へと向かうため、上告審の行方に注目が集まる。