こんにちは、コラムニストでキャリアコンサルタントのおおしまりえです。
「育休中の学び直しを後押しする」
岸田首相の国会での発言がこのように切り取られ、多くのパパ・ママからの批判が集まっています。
「育児中に勉強出来るなんて育児をやってきていない人の発言」「育児でヘトヘトの中、さらにスキルアップなんて無理」
こうした怒りや落胆の声が聞こえてきます。
Photo by Gettyimages
首相の発言の真意は、あくまでも「希望する者に対しての後押し」を語ったものであり、育児の辛さを理解せずの発言だったのかは分かりません。ただ、産休育休中の大変さについて認識を誤ったまま、リスキリングの必要性が広まることは社会的にも良いことはありません。政府は今後、個人のリスキリングに5年で1兆円の投資をおこなうことを方針発表しています。その波に子育て世代は乗せられるのか、そもそも乗った結果、幸せになれるのでしょうか。こうした問いに、2022年に経験した我が家の話が役に立つのではないかと思っています。我が家は2022年、第一子の産前産後のタイミングで、夫婦それぞれが仕事にいい影響を期待して資格取得にチャレンジしました。まさに政府の発言通り、産休育休中にリスキリングをおこなったことになります。各自が勉強時間を捻出してチャレンジをしたわけですが、振り返ってみても、得られたものも失ったものもあったように思います。「環境を整えられれば、出来ないことはない。ただし相当の工夫が必要」というのが我が家の回答です。では、どういった工夫があれば育児の大変な時期に学び直しが叶うのか。1つの事例として我が家の話を紹介します。我が家の紹介と資格取得を決めた理由まず、夫婦のプロフィールとチャレンジした内容について簡単に紹介します。妻:36歳(出産当時)、フリーランスの文筆業。2022年4月に第一子となる男児を計画帝王切開で出産。出産から3ヶ月後の同年7月に国家試験キャリアコンサルタントを取得(講座受講80時間、試験勉強約100時間)。個人事業主のため産休育休はほぼ取らず。また産後は2ヶ月目から段階的に復職。夫:38歳、大手ファーム所属の専門職コンサルタント。職位はシニアマネージャー。2022年9月にPMP (Project Management Professional)を取得。(講座受講40時間、試験勉強約100時間)。大規模長期案件のプロジェクトマネージャーだったため、育休の取得は断念。しかし、在宅勤務が中心であったことと時間の調整も多少つけられる立場だったため、出張や外出を伴う業務を減らし、育児にもある程度対応できる勤務形態に切り替える。息子:2022年4月誕生。健康面は特に問題なし。 私が産前産後のタイミングで資格取得にチャレンジしたのは、夫の何気ない一言がキッカケでした。「出産したら長期受講が必要な勉強は、金銭的にも時間的にもハードルが上がるよ」そう言われ、前々から気になっていた働き方に関わる勉強にチャレンジすることを決めました。費用は約30万円。会社員など雇用保険加入者であれば最大70%が戻ってくる講座ですが、個人事業主の私はすべて自腹です。これから出産をへて収入が落ち込む予定のため、正直決めるには勇気が必要だったのを覚えています。でも、「今を逃せば次は数年後」という現実が、スタートの後押しになりました。産前産後の資格取得は、余裕のある勉強計画は立てられません。妊娠後期から3ヶ月間で約100時間の講座を受講し、基礎的な知識をつけて出産に望む。産後体力が回復してから時間をやりくりして試験勉強を再開し、約1ヶ月で筆記試験と実技試験対策を仕上げよう。体調不良やトラブルのリスクは一旦忘れ、こんなスケジュールを立てて勉強は進んでいきました。幸いなことに、講座はコロナ禍のためフルリモート開催でした。体調が多少悪ければ、休憩や離席をしながら進められたのはありがたかったです。リスキリングのために駆使した4つの外部サポート体調面での危うい場面もありながら、産前の勉強スケジュールをとりあえずこなして出産へたどり着きます。そしてここから、怒涛の子育て、勉強、復職が始まりました。ここからは、勉強時間の捻出と早期復職に向けて、我が家でおこなったことについて紹介します。言い換えれば、これくらいの事をしないと、産前産後のリスキリングなんて無理! ということです。(1)爆速で体力回復するため産前からシッター探し産褥期と呼ばれる産後の1ヶ月は、とにかく体調の回復に努めました。我が家では夜間対応も含めて育児は私中心におこない、家事は仕事をしながら夫が全部担当していました。それに加えてシッターさんには週3日ほど訪問いただき、息子の面倒を見てもらうことに。その間私は寝不足解消やリフレッシュ、時々勉強をして過ごしました。Photo by iStock 産後のケアが助かったと同時に、あやし方や寝かしつけ方、子どもの特性などを、プロの目から教えてもらえたのは心強かったです。ただ、シッターさんの予約が思うように取れず、探すのに時間がかかったことはお伝えしておきます。また、自治体の補助を使っての利用でしたが、制度自体の認知がまだまだ進んでおらず、改善の余地ありと感じました。(2)保育園の確保は急務!産前から認可外保育園をラッキー確保シッターさんの手配とあわせて、産前から保活もリストを作って計画的におこないました。個人事業主の筆者には制度として産休育休がありません。休みはその分収入が途絶えることを意味しますので、家計的にもキャリア的にも早期復職を決めていました。結果として、ラッキーなことに産前から認可外保育園の内定をいただきました。産後2ヶ月目から子どもを1日6.5時間預け、一部業務のみ復職&空いている時間で資格取得の勉強というスタイルを作りました。(3)家事のアウトソーシングを実行子どもを保育園に預けられると、自分の時間も多少確保することができます。試験前1ヶ月は、平日の午前中に3時間ほど勉強して午後から仕事。余裕があれば夜中にもう少し勉強することで、土日は育児に専念しながら試験前1ヶ月で勉強時間を80時間ほど確保しました。これと合わせて、我が家では家事の中でも負担の大きい料理を、家事代行業者さんにお願いすることを選択しています。Photo by iStock 自宅で食べる料理を人に作ってもらうことには、決断までかなり葛藤がありました。キッチンに他人を入れることや費用面での負担(1回約9,000円+材料費)、家にいるのに家事をしないという心理的な抵抗感もありました。しかし、「優先すべきは時間捻出」という結論を夫婦で確認し(というか、抵抗する私を夫が説き伏せた)、今でも週1回、1週間分のおかずを作ってもらっています。これにより、1週間で約12時間(準備時間を朝15分・昼30分・夜60分と仮定)かかる食事の準備時間を短縮出来ただけでなく、メニューを考える心理的負担も手放せています。また、夫婦ともに在宅ワークだと発生しがちな「ご飯何時に食べる? どっちが作る?」というやり取りを省略し、お互い平日は仕事や勉強に集中できる環境が作れたのは良かったです。(4)夫婦で育児スキルを同レベルにする育児も家事も、ここまで他人の手を頼れたら十分と思われるかもしれません。しかし、何より産後のリスキリングを叶えた要素は、夫婦どちらも同レベルの育児スキルを持つことでした。よくある「パパが抱っこすると泣く」「やっぱりママが居ないとダメ」という状況は、ママとしては優越感を覚えますが、働く上ではリスクです。何があってもどちらでも対応できることを念頭に、健康や発育状況、おむつやミルクのストックまで、我が家では細かく共有し、スムーズな2人育児に活かしています。こうした取り組みにより、勉強や試験のために私一人で出かけるシーンがあっても安心して夫に任せることができ、良かったと思っています。仕事と育児とリスキリングを両立させた夫のコツ続いて、夫側の仕事と育児とリスキリングの両立状況を紹介します。PMPの試験は、受講も受験もオンラインで完結します。普段は寝かしつけを終えた夜間に1~2時間じっくり勉強し、休憩時間や土日の細切れ時間はスマホの学習アプリでインプットを続けました。Photo by iStock ネックは、フルタイムの仕事に朝と夕方以降の育児、そして家事の負担をこなしてから勉強に向かうと体力がなかなか持たないことです。また自宅学習のため、柔軟にスケジューリング出来る反面、自主性がカギになります。自己管理や目標管理、モチベーションの維持は大変で、夫婦で進捗状況を確認し合いながら取り組めたのが良かったと話します。PMPは受験日が複数用意された試験であり、申込みも1週間前であれば可能です。期限までは受験日をずらそうと思えばいつでも出来るため、ズルズルと先伸ばす人もいるといいます。夫は最終的に、目標としていたタイミングから1ヶ月遅れで初受験し、資格取得を叶えました。成功要因を聞くと、体調維持と勉強時間確保のために、自分と家族の生活リズムを維持し続けられたことにあったようです。このために、家事のアウトソーシングやサポート体制に加えて「ネントレ」の成功も欠かせないと話します。ネントレとは、「ねんねトレーニング」の略です。子どもがしっかり眠れるよう、環境や生活リズム、寝かしつけ方法を整えていくものです。我が家では生後1ヶ月頃から本やYou Tubeで学びました。元々息子は眠ったり飲んだりするのが上手だったことや、早期に保育園に通うことで生活リズムが整ったことも成功要因です。生後3~4ヶ月目には、毎晩同じ時間に眠り、夜間授乳の回数やタイミングも乱れることは少なくなっていました。こうした赤ちゃん個別の育てやすさも、リスキリングの取り組みには大きく関係します。産前産後のリスキリングで得られたものここまで、我が家の産前産後のリスキリングのチャレンジについて、成功要因をまとめていきました。幸いにも、2人とも1回の受験で資格取得は完了出来ています。改めて実感している良い成果についてまとめました。1つは、限られた時間で勉強に取り組んだことで、試験合格という成果だけでなく、知識の定着が非常に良い点です。私も夫も実務に活かせる資格を選んだことで、仕事の幅がすでに広がり、キャリアプランの前進があったと思います。これは何より求めていた成果です。また、多忙かつ大変な時期に勉強し完走できた経験は、お互い大きな自信になっています。私個人としては、産前産後でのキャリアの中断やスピードダウンを以前から不安に思っていました。100%払拭できたとは言い切れませんが、資格取得をしたことで軽減されていると感じます。最後は気持ちの話ですが、育児と勉強というチャレンジを通して、夫婦の絆はさらに深まったと思います。紹介した取り組みはすべて夫婦で話し合い、最適解をそのつど出してから決断しています。当然コミュニケーション量は増えましたし、気持ちの面でも、支えてもらったり後押ししたりと立場が逆転することで、絆が深まったように思います。たとえ勉強してスキルや年収アップが叶ったとしても、それを喜びあえる家族がいなければ意味がありません。まず夫婦でじっくり話し合い、お互いが同じ方を向く。こうした協力体制は政府のサポートにはありませんから、もし子育て時期にリスキリングを検討する場合は、夫婦でよく話し合い、足並みを揃えることは非常に重要です。 産前産後のリスキリングで犠牲にしたもの過ぎてみれば達成感の方が断然大きい産前産後のリスキリングですが、後悔もいくつかあります。1つは、産前産後のゆったり休むべき時間を勉強にほぼ使ってしまったことです。ベビーグッズをウキウキ選んだり、のんびりお散歩したりする時間もありませんでした。健康だからこそ勉強も出来たという意味では感謝しかありません。ただ、体にとって大事な休暇をもっと集中して楽しんでもよかったなと今では思います。また、勉強のためにシッターさんを手配したり、家事をアウトソースしたりすることで、短期的な支出が増えるのはデメリットと言えます。中長期で見たら収入増加が見込めるため、我が家は夫婦で話し合ってOKとしました。ただ、家庭によっては意見が別れる部分です。納得できない気持ちを溜めたまま進むと、必ずどこかで爆発します。進み出す際、この点はぜひ慎重に話し合いたいものです。産休育休中のリスキリングについて、「本当に出来るのか?」という現実問題を、我が家の取り組みを例に書かせていただきました。資格取得は1つの目標でしたが、達成後にいい経験として記憶されているのは、夫婦円満を保ちながら達成できたことも大きいです。冒頭でも、産休育休中のリスキリングは「環境を整えられれば、出来ないことはない。ただし相当の工夫が必要」だとお伝えしました。その環境を、幸運にも我が家は整えることが出来ましたが、これがどの家庭にも当てはまるものではないことは理解しています。これから始まる政府のリスキリング支援ですが、「学び」にのみ行われるのでなく、学びにくさがある家庭状況にも寄り添うことに期待します。そうした制度と合わせて、夫婦は一層話し合い、環境構築のために協力し合うことが大切であることも、忘れることはできないものです。
首相の発言の真意は、あくまでも「希望する者に対しての後押し」を語ったものであり、育児の辛さを理解せずの発言だったのかは分かりません。ただ、産休育休中の大変さについて認識を誤ったまま、リスキリングの必要性が広まることは社会的にも良いことはありません。
政府は今後、個人のリスキリングに5年で1兆円の投資をおこなうことを方針発表しています。その波に子育て世代は乗せられるのか、そもそも乗った結果、幸せになれるのでしょうか。
こうした問いに、2022年に経験した我が家の話が役に立つのではないかと思っています。
我が家は2022年、第一子の産前産後のタイミングで、夫婦それぞれが仕事にいい影響を期待して資格取得にチャレンジしました。
まさに政府の発言通り、産休育休中にリスキリングをおこなったことになります。各自が勉強時間を捻出してチャレンジをしたわけですが、振り返ってみても、得られたものも失ったものもあったように思います。
「環境を整えられれば、出来ないことはない。ただし相当の工夫が必要」
というのが我が家の回答です。では、どういった工夫があれば育児の大変な時期に学び直しが叶うのか。1つの事例として我が家の話を紹介します。
まず、夫婦のプロフィールとチャレンジした内容について簡単に紹介します。
妻:36歳(出産当時)、フリーランスの文筆業。2022年4月に第一子となる男児を計画帝王切開で出産。出産から3ヶ月後の同年7月に国家試験キャリアコンサルタントを取得(講座受講80時間、試験勉強約100時間)。個人事業主のため産休育休はほぼ取らず。また産後は2ヶ月目から段階的に復職。
夫:38歳、大手ファーム所属の専門職コンサルタント。職位はシニアマネージャー。2022年9月にPMP (Project Management Professional)を取得。(講座受講40時間、試験勉強約100時間)。大規模長期案件のプロジェクトマネージャーだったため、育休の取得は断念。しかし、在宅勤務が中心であったことと時間の調整も多少つけられる立場だったため、出張や外出を伴う業務を減らし、育児にもある程度対応できる勤務形態に切り替える。
息子:2022年4月誕生。健康面は特に問題なし。
私が産前産後のタイミングで資格取得にチャレンジしたのは、夫の何気ない一言がキッカケでした。「出産したら長期受講が必要な勉強は、金銭的にも時間的にもハードルが上がるよ」そう言われ、前々から気になっていた働き方に関わる勉強にチャレンジすることを決めました。費用は約30万円。会社員など雇用保険加入者であれば最大70%が戻ってくる講座ですが、個人事業主の私はすべて自腹です。これから出産をへて収入が落ち込む予定のため、正直決めるには勇気が必要だったのを覚えています。でも、「今を逃せば次は数年後」という現実が、スタートの後押しになりました。産前産後の資格取得は、余裕のある勉強計画は立てられません。妊娠後期から3ヶ月間で約100時間の講座を受講し、基礎的な知識をつけて出産に望む。産後体力が回復してから時間をやりくりして試験勉強を再開し、約1ヶ月で筆記試験と実技試験対策を仕上げよう。体調不良やトラブルのリスクは一旦忘れ、こんなスケジュールを立てて勉強は進んでいきました。幸いなことに、講座はコロナ禍のためフルリモート開催でした。体調が多少悪ければ、休憩や離席をしながら進められたのはありがたかったです。リスキリングのために駆使した4つの外部サポート体調面での危うい場面もありながら、産前の勉強スケジュールをとりあえずこなして出産へたどり着きます。そしてここから、怒涛の子育て、勉強、復職が始まりました。ここからは、勉強時間の捻出と早期復職に向けて、我が家でおこなったことについて紹介します。言い換えれば、これくらいの事をしないと、産前産後のリスキリングなんて無理! ということです。(1)爆速で体力回復するため産前からシッター探し産褥期と呼ばれる産後の1ヶ月は、とにかく体調の回復に努めました。我が家では夜間対応も含めて育児は私中心におこない、家事は仕事をしながら夫が全部担当していました。それに加えてシッターさんには週3日ほど訪問いただき、息子の面倒を見てもらうことに。その間私は寝不足解消やリフレッシュ、時々勉強をして過ごしました。Photo by iStock 産後のケアが助かったと同時に、あやし方や寝かしつけ方、子どもの特性などを、プロの目から教えてもらえたのは心強かったです。ただ、シッターさんの予約が思うように取れず、探すのに時間がかかったことはお伝えしておきます。また、自治体の補助を使っての利用でしたが、制度自体の認知がまだまだ進んでおらず、改善の余地ありと感じました。(2)保育園の確保は急務!産前から認可外保育園をラッキー確保シッターさんの手配とあわせて、産前から保活もリストを作って計画的におこないました。個人事業主の筆者には制度として産休育休がありません。休みはその分収入が途絶えることを意味しますので、家計的にもキャリア的にも早期復職を決めていました。結果として、ラッキーなことに産前から認可外保育園の内定をいただきました。産後2ヶ月目から子どもを1日6.5時間預け、一部業務のみ復職&空いている時間で資格取得の勉強というスタイルを作りました。(3)家事のアウトソーシングを実行子どもを保育園に預けられると、自分の時間も多少確保することができます。試験前1ヶ月は、平日の午前中に3時間ほど勉強して午後から仕事。余裕があれば夜中にもう少し勉強することで、土日は育児に専念しながら試験前1ヶ月で勉強時間を80時間ほど確保しました。これと合わせて、我が家では家事の中でも負担の大きい料理を、家事代行業者さんにお願いすることを選択しています。Photo by iStock 自宅で食べる料理を人に作ってもらうことには、決断までかなり葛藤がありました。キッチンに他人を入れることや費用面での負担(1回約9,000円+材料費)、家にいるのに家事をしないという心理的な抵抗感もありました。しかし、「優先すべきは時間捻出」という結論を夫婦で確認し(というか、抵抗する私を夫が説き伏せた)、今でも週1回、1週間分のおかずを作ってもらっています。これにより、1週間で約12時間(準備時間を朝15分・昼30分・夜60分と仮定)かかる食事の準備時間を短縮出来ただけでなく、メニューを考える心理的負担も手放せています。また、夫婦ともに在宅ワークだと発生しがちな「ご飯何時に食べる? どっちが作る?」というやり取りを省略し、お互い平日は仕事や勉強に集中できる環境が作れたのは良かったです。(4)夫婦で育児スキルを同レベルにする育児も家事も、ここまで他人の手を頼れたら十分と思われるかもしれません。しかし、何より産後のリスキリングを叶えた要素は、夫婦どちらも同レベルの育児スキルを持つことでした。よくある「パパが抱っこすると泣く」「やっぱりママが居ないとダメ」という状況は、ママとしては優越感を覚えますが、働く上ではリスクです。何があってもどちらでも対応できることを念頭に、健康や発育状況、おむつやミルクのストックまで、我が家では細かく共有し、スムーズな2人育児に活かしています。こうした取り組みにより、勉強や試験のために私一人で出かけるシーンがあっても安心して夫に任せることができ、良かったと思っています。仕事と育児とリスキリングを両立させた夫のコツ続いて、夫側の仕事と育児とリスキリングの両立状況を紹介します。PMPの試験は、受講も受験もオンラインで完結します。普段は寝かしつけを終えた夜間に1~2時間じっくり勉強し、休憩時間や土日の細切れ時間はスマホの学習アプリでインプットを続けました。Photo by iStock ネックは、フルタイムの仕事に朝と夕方以降の育児、そして家事の負担をこなしてから勉強に向かうと体力がなかなか持たないことです。また自宅学習のため、柔軟にスケジューリング出来る反面、自主性がカギになります。自己管理や目標管理、モチベーションの維持は大変で、夫婦で進捗状況を確認し合いながら取り組めたのが良かったと話します。PMPは受験日が複数用意された試験であり、申込みも1週間前であれば可能です。期限までは受験日をずらそうと思えばいつでも出来るため、ズルズルと先伸ばす人もいるといいます。夫は最終的に、目標としていたタイミングから1ヶ月遅れで初受験し、資格取得を叶えました。成功要因を聞くと、体調維持と勉強時間確保のために、自分と家族の生活リズムを維持し続けられたことにあったようです。このために、家事のアウトソーシングやサポート体制に加えて「ネントレ」の成功も欠かせないと話します。ネントレとは、「ねんねトレーニング」の略です。子どもがしっかり眠れるよう、環境や生活リズム、寝かしつけ方法を整えていくものです。我が家では生後1ヶ月頃から本やYou Tubeで学びました。元々息子は眠ったり飲んだりするのが上手だったことや、早期に保育園に通うことで生活リズムが整ったことも成功要因です。生後3~4ヶ月目には、毎晩同じ時間に眠り、夜間授乳の回数やタイミングも乱れることは少なくなっていました。こうした赤ちゃん個別の育てやすさも、リスキリングの取り組みには大きく関係します。産前産後のリスキリングで得られたものここまで、我が家の産前産後のリスキリングのチャレンジについて、成功要因をまとめていきました。幸いにも、2人とも1回の受験で資格取得は完了出来ています。改めて実感している良い成果についてまとめました。1つは、限られた時間で勉強に取り組んだことで、試験合格という成果だけでなく、知識の定着が非常に良い点です。私も夫も実務に活かせる資格を選んだことで、仕事の幅がすでに広がり、キャリアプランの前進があったと思います。これは何より求めていた成果です。また、多忙かつ大変な時期に勉強し完走できた経験は、お互い大きな自信になっています。私個人としては、産前産後でのキャリアの中断やスピードダウンを以前から不安に思っていました。100%払拭できたとは言い切れませんが、資格取得をしたことで軽減されていると感じます。最後は気持ちの話ですが、育児と勉強というチャレンジを通して、夫婦の絆はさらに深まったと思います。紹介した取り組みはすべて夫婦で話し合い、最適解をそのつど出してから決断しています。当然コミュニケーション量は増えましたし、気持ちの面でも、支えてもらったり後押ししたりと立場が逆転することで、絆が深まったように思います。たとえ勉強してスキルや年収アップが叶ったとしても、それを喜びあえる家族がいなければ意味がありません。まず夫婦でじっくり話し合い、お互いが同じ方を向く。こうした協力体制は政府のサポートにはありませんから、もし子育て時期にリスキリングを検討する場合は、夫婦でよく話し合い、足並みを揃えることは非常に重要です。 産前産後のリスキリングで犠牲にしたもの過ぎてみれば達成感の方が断然大きい産前産後のリスキリングですが、後悔もいくつかあります。1つは、産前産後のゆったり休むべき時間を勉強にほぼ使ってしまったことです。ベビーグッズをウキウキ選んだり、のんびりお散歩したりする時間もありませんでした。健康だからこそ勉強も出来たという意味では感謝しかありません。ただ、体にとって大事な休暇をもっと集中して楽しんでもよかったなと今では思います。また、勉強のためにシッターさんを手配したり、家事をアウトソースしたりすることで、短期的な支出が増えるのはデメリットと言えます。中長期で見たら収入増加が見込めるため、我が家は夫婦で話し合ってOKとしました。ただ、家庭によっては意見が別れる部分です。納得できない気持ちを溜めたまま進むと、必ずどこかで爆発します。進み出す際、この点はぜひ慎重に話し合いたいものです。産休育休中のリスキリングについて、「本当に出来るのか?」という現実問題を、我が家の取り組みを例に書かせていただきました。資格取得は1つの目標でしたが、達成後にいい経験として記憶されているのは、夫婦円満を保ちながら達成できたことも大きいです。冒頭でも、産休育休中のリスキリングは「環境を整えられれば、出来ないことはない。ただし相当の工夫が必要」だとお伝えしました。その環境を、幸運にも我が家は整えることが出来ましたが、これがどの家庭にも当てはまるものではないことは理解しています。これから始まる政府のリスキリング支援ですが、「学び」にのみ行われるのでなく、学びにくさがある家庭状況にも寄り添うことに期待します。そうした制度と合わせて、夫婦は一層話し合い、環境構築のために協力し合うことが大切であることも、忘れることはできないものです。
私が産前産後のタイミングで資格取得にチャレンジしたのは、夫の何気ない一言がキッカケでした。
「出産したら長期受講が必要な勉強は、金銭的にも時間的にもハードルが上がるよ」
そう言われ、前々から気になっていた働き方に関わる勉強にチャレンジすることを決めました。費用は約30万円。会社員など雇用保険加入者であれば最大70%が戻ってくる講座ですが、個人事業主の私はすべて自腹です。
これから出産をへて収入が落ち込む予定のため、正直決めるには勇気が必要だったのを覚えています。でも、「今を逃せば次は数年後」という現実が、スタートの後押しになりました。
産前産後の資格取得は、余裕のある勉強計画は立てられません。妊娠後期から3ヶ月間で約100時間の講座を受講し、基礎的な知識をつけて出産に望む。産後体力が回復してから時間をやりくりして試験勉強を再開し、約1ヶ月で筆記試験と実技試験対策を仕上げよう。
体調不良やトラブルのリスクは一旦忘れ、こんなスケジュールを立てて勉強は進んでいきました。幸いなことに、講座はコロナ禍のためフルリモート開催でした。体調が多少悪ければ、休憩や離席をしながら進められたのはありがたかったです。
体調面での危うい場面もありながら、産前の勉強スケジュールをとりあえずこなして出産へたどり着きます。そしてここから、怒涛の子育て、勉強、復職が始まりました。ここからは、勉強時間の捻出と早期復職に向けて、我が家でおこなったことについて紹介します。
言い換えれば、これくらいの事をしないと、産前産後のリスキリングなんて無理! ということです。
(1)爆速で体力回復するため産前からシッター探し産褥期と呼ばれる産後の1ヶ月は、とにかく体調の回復に努めました。我が家では夜間対応も含めて育児は私中心におこない、家事は仕事をしながら夫が全部担当していました。それに加えてシッターさんには週3日ほど訪問いただき、息子の面倒を見てもらうことに。その間私は寝不足解消やリフレッシュ、時々勉強をして過ごしました。
Photo by iStock
産後のケアが助かったと同時に、あやし方や寝かしつけ方、子どもの特性などを、プロの目から教えてもらえたのは心強かったです。ただ、シッターさんの予約が思うように取れず、探すのに時間がかかったことはお伝えしておきます。また、自治体の補助を使っての利用でしたが、制度自体の認知がまだまだ進んでおらず、改善の余地ありと感じました。(2)保育園の確保は急務!産前から認可外保育園をラッキー確保シッターさんの手配とあわせて、産前から保活もリストを作って計画的におこないました。個人事業主の筆者には制度として産休育休がありません。休みはその分収入が途絶えることを意味しますので、家計的にもキャリア的にも早期復職を決めていました。結果として、ラッキーなことに産前から認可外保育園の内定をいただきました。産後2ヶ月目から子どもを1日6.5時間預け、一部業務のみ復職&空いている時間で資格取得の勉強というスタイルを作りました。(3)家事のアウトソーシングを実行子どもを保育園に預けられると、自分の時間も多少確保することができます。試験前1ヶ月は、平日の午前中に3時間ほど勉強して午後から仕事。余裕があれば夜中にもう少し勉強することで、土日は育児に専念しながら試験前1ヶ月で勉強時間を80時間ほど確保しました。これと合わせて、我が家では家事の中でも負担の大きい料理を、家事代行業者さんにお願いすることを選択しています。Photo by iStock 自宅で食べる料理を人に作ってもらうことには、決断までかなり葛藤がありました。キッチンに他人を入れることや費用面での負担(1回約9,000円+材料費)、家にいるのに家事をしないという心理的な抵抗感もありました。しかし、「優先すべきは時間捻出」という結論を夫婦で確認し(というか、抵抗する私を夫が説き伏せた)、今でも週1回、1週間分のおかずを作ってもらっています。これにより、1週間で約12時間(準備時間を朝15分・昼30分・夜60分と仮定)かかる食事の準備時間を短縮出来ただけでなく、メニューを考える心理的負担も手放せています。また、夫婦ともに在宅ワークだと発生しがちな「ご飯何時に食べる? どっちが作る?」というやり取りを省略し、お互い平日は仕事や勉強に集中できる環境が作れたのは良かったです。(4)夫婦で育児スキルを同レベルにする育児も家事も、ここまで他人の手を頼れたら十分と思われるかもしれません。しかし、何より産後のリスキリングを叶えた要素は、夫婦どちらも同レベルの育児スキルを持つことでした。よくある「パパが抱っこすると泣く」「やっぱりママが居ないとダメ」という状況は、ママとしては優越感を覚えますが、働く上ではリスクです。何があってもどちらでも対応できることを念頭に、健康や発育状況、おむつやミルクのストックまで、我が家では細かく共有し、スムーズな2人育児に活かしています。こうした取り組みにより、勉強や試験のために私一人で出かけるシーンがあっても安心して夫に任せることができ、良かったと思っています。仕事と育児とリスキリングを両立させた夫のコツ続いて、夫側の仕事と育児とリスキリングの両立状況を紹介します。PMPの試験は、受講も受験もオンラインで完結します。普段は寝かしつけを終えた夜間に1~2時間じっくり勉強し、休憩時間や土日の細切れ時間はスマホの学習アプリでインプットを続けました。Photo by iStock ネックは、フルタイムの仕事に朝と夕方以降の育児、そして家事の負担をこなしてから勉強に向かうと体力がなかなか持たないことです。また自宅学習のため、柔軟にスケジューリング出来る反面、自主性がカギになります。自己管理や目標管理、モチベーションの維持は大変で、夫婦で進捗状況を確認し合いながら取り組めたのが良かったと話します。PMPは受験日が複数用意された試験であり、申込みも1週間前であれば可能です。期限までは受験日をずらそうと思えばいつでも出来るため、ズルズルと先伸ばす人もいるといいます。夫は最終的に、目標としていたタイミングから1ヶ月遅れで初受験し、資格取得を叶えました。成功要因を聞くと、体調維持と勉強時間確保のために、自分と家族の生活リズムを維持し続けられたことにあったようです。このために、家事のアウトソーシングやサポート体制に加えて「ネントレ」の成功も欠かせないと話します。ネントレとは、「ねんねトレーニング」の略です。子どもがしっかり眠れるよう、環境や生活リズム、寝かしつけ方法を整えていくものです。我が家では生後1ヶ月頃から本やYou Tubeで学びました。元々息子は眠ったり飲んだりするのが上手だったことや、早期に保育園に通うことで生活リズムが整ったことも成功要因です。生後3~4ヶ月目には、毎晩同じ時間に眠り、夜間授乳の回数やタイミングも乱れることは少なくなっていました。こうした赤ちゃん個別の育てやすさも、リスキリングの取り組みには大きく関係します。産前産後のリスキリングで得られたものここまで、我が家の産前産後のリスキリングのチャレンジについて、成功要因をまとめていきました。幸いにも、2人とも1回の受験で資格取得は完了出来ています。改めて実感している良い成果についてまとめました。1つは、限られた時間で勉強に取り組んだことで、試験合格という成果だけでなく、知識の定着が非常に良い点です。私も夫も実務に活かせる資格を選んだことで、仕事の幅がすでに広がり、キャリアプランの前進があったと思います。これは何より求めていた成果です。また、多忙かつ大変な時期に勉強し完走できた経験は、お互い大きな自信になっています。私個人としては、産前産後でのキャリアの中断やスピードダウンを以前から不安に思っていました。100%払拭できたとは言い切れませんが、資格取得をしたことで軽減されていると感じます。最後は気持ちの話ですが、育児と勉強というチャレンジを通して、夫婦の絆はさらに深まったと思います。紹介した取り組みはすべて夫婦で話し合い、最適解をそのつど出してから決断しています。当然コミュニケーション量は増えましたし、気持ちの面でも、支えてもらったり後押ししたりと立場が逆転することで、絆が深まったように思います。たとえ勉強してスキルや年収アップが叶ったとしても、それを喜びあえる家族がいなければ意味がありません。まず夫婦でじっくり話し合い、お互いが同じ方を向く。こうした協力体制は政府のサポートにはありませんから、もし子育て時期にリスキリングを検討する場合は、夫婦でよく話し合い、足並みを揃えることは非常に重要です。 産前産後のリスキリングで犠牲にしたもの過ぎてみれば達成感の方が断然大きい産前産後のリスキリングですが、後悔もいくつかあります。1つは、産前産後のゆったり休むべき時間を勉強にほぼ使ってしまったことです。ベビーグッズをウキウキ選んだり、のんびりお散歩したりする時間もありませんでした。健康だからこそ勉強も出来たという意味では感謝しかありません。ただ、体にとって大事な休暇をもっと集中して楽しんでもよかったなと今では思います。また、勉強のためにシッターさんを手配したり、家事をアウトソースしたりすることで、短期的な支出が増えるのはデメリットと言えます。中長期で見たら収入増加が見込めるため、我が家は夫婦で話し合ってOKとしました。ただ、家庭によっては意見が別れる部分です。納得できない気持ちを溜めたまま進むと、必ずどこかで爆発します。進み出す際、この点はぜひ慎重に話し合いたいものです。産休育休中のリスキリングについて、「本当に出来るのか?」という現実問題を、我が家の取り組みを例に書かせていただきました。資格取得は1つの目標でしたが、達成後にいい経験として記憶されているのは、夫婦円満を保ちながら達成できたことも大きいです。冒頭でも、産休育休中のリスキリングは「環境を整えられれば、出来ないことはない。ただし相当の工夫が必要」だとお伝えしました。その環境を、幸運にも我が家は整えることが出来ましたが、これがどの家庭にも当てはまるものではないことは理解しています。これから始まる政府のリスキリング支援ですが、「学び」にのみ行われるのでなく、学びにくさがある家庭状況にも寄り添うことに期待します。そうした制度と合わせて、夫婦は一層話し合い、環境構築のために協力し合うことが大切であることも、忘れることはできないものです。
産後のケアが助かったと同時に、あやし方や寝かしつけ方、子どもの特性などを、プロの目から教えてもらえたのは心強かったです。
ただ、シッターさんの予約が思うように取れず、探すのに時間がかかったことはお伝えしておきます。また、自治体の補助を使っての利用でしたが、制度自体の認知がまだまだ進んでおらず、改善の余地ありと感じました。
(2)保育園の確保は急務!産前から認可外保育園をラッキー確保シッターさんの手配とあわせて、産前から保活もリストを作って計画的におこないました。個人事業主の筆者には制度として産休育休がありません。休みはその分収入が途絶えることを意味しますので、家計的にもキャリア的にも早期復職を決めていました。
結果として、ラッキーなことに産前から認可外保育園の内定をいただきました。産後2ヶ月目から子どもを1日6.5時間預け、一部業務のみ復職&空いている時間で資格取得の勉強というスタイルを作りました。
(3)家事のアウトソーシングを実行子どもを保育園に預けられると、自分の時間も多少確保することができます。試験前1ヶ月は、平日の午前中に3時間ほど勉強して午後から仕事。余裕があれば夜中にもう少し勉強することで、土日は育児に専念しながら試験前1ヶ月で勉強時間を80時間ほど確保しました。
これと合わせて、我が家では家事の中でも負担の大きい料理を、家事代行業者さんにお願いすることを選択しています。
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自宅で食べる料理を人に作ってもらうことには、決断までかなり葛藤がありました。キッチンに他人を入れることや費用面での負担(1回約9,000円+材料費)、家にいるのに家事をしないという心理的な抵抗感もありました。しかし、「優先すべきは時間捻出」という結論を夫婦で確認し(というか、抵抗する私を夫が説き伏せた)、今でも週1回、1週間分のおかずを作ってもらっています。これにより、1週間で約12時間(準備時間を朝15分・昼30分・夜60分と仮定)かかる食事の準備時間を短縮出来ただけでなく、メニューを考える心理的負担も手放せています。また、夫婦ともに在宅ワークだと発生しがちな「ご飯何時に食べる? どっちが作る?」というやり取りを省略し、お互い平日は仕事や勉強に集中できる環境が作れたのは良かったです。(4)夫婦で育児スキルを同レベルにする育児も家事も、ここまで他人の手を頼れたら十分と思われるかもしれません。しかし、何より産後のリスキリングを叶えた要素は、夫婦どちらも同レベルの育児スキルを持つことでした。よくある「パパが抱っこすると泣く」「やっぱりママが居ないとダメ」という状況は、ママとしては優越感を覚えますが、働く上ではリスクです。何があってもどちらでも対応できることを念頭に、健康や発育状況、おむつやミルクのストックまで、我が家では細かく共有し、スムーズな2人育児に活かしています。こうした取り組みにより、勉強や試験のために私一人で出かけるシーンがあっても安心して夫に任せることができ、良かったと思っています。仕事と育児とリスキリングを両立させた夫のコツ続いて、夫側の仕事と育児とリスキリングの両立状況を紹介します。PMPの試験は、受講も受験もオンラインで完結します。普段は寝かしつけを終えた夜間に1~2時間じっくり勉強し、休憩時間や土日の細切れ時間はスマホの学習アプリでインプットを続けました。Photo by iStock ネックは、フルタイムの仕事に朝と夕方以降の育児、そして家事の負担をこなしてから勉強に向かうと体力がなかなか持たないことです。また自宅学習のため、柔軟にスケジューリング出来る反面、自主性がカギになります。自己管理や目標管理、モチベーションの維持は大変で、夫婦で進捗状況を確認し合いながら取り組めたのが良かったと話します。PMPは受験日が複数用意された試験であり、申込みも1週間前であれば可能です。期限までは受験日をずらそうと思えばいつでも出来るため、ズルズルと先伸ばす人もいるといいます。夫は最終的に、目標としていたタイミングから1ヶ月遅れで初受験し、資格取得を叶えました。成功要因を聞くと、体調維持と勉強時間確保のために、自分と家族の生活リズムを維持し続けられたことにあったようです。このために、家事のアウトソーシングやサポート体制に加えて「ネントレ」の成功も欠かせないと話します。ネントレとは、「ねんねトレーニング」の略です。子どもがしっかり眠れるよう、環境や生活リズム、寝かしつけ方法を整えていくものです。我が家では生後1ヶ月頃から本やYou Tubeで学びました。元々息子は眠ったり飲んだりするのが上手だったことや、早期に保育園に通うことで生活リズムが整ったことも成功要因です。生後3~4ヶ月目には、毎晩同じ時間に眠り、夜間授乳の回数やタイミングも乱れることは少なくなっていました。こうした赤ちゃん個別の育てやすさも、リスキリングの取り組みには大きく関係します。産前産後のリスキリングで得られたものここまで、我が家の産前産後のリスキリングのチャレンジについて、成功要因をまとめていきました。幸いにも、2人とも1回の受験で資格取得は完了出来ています。改めて実感している良い成果についてまとめました。1つは、限られた時間で勉強に取り組んだことで、試験合格という成果だけでなく、知識の定着が非常に良い点です。私も夫も実務に活かせる資格を選んだことで、仕事の幅がすでに広がり、キャリアプランの前進があったと思います。これは何より求めていた成果です。また、多忙かつ大変な時期に勉強し完走できた経験は、お互い大きな自信になっています。私個人としては、産前産後でのキャリアの中断やスピードダウンを以前から不安に思っていました。100%払拭できたとは言い切れませんが、資格取得をしたことで軽減されていると感じます。最後は気持ちの話ですが、育児と勉強というチャレンジを通して、夫婦の絆はさらに深まったと思います。紹介した取り組みはすべて夫婦で話し合い、最適解をそのつど出してから決断しています。当然コミュニケーション量は増えましたし、気持ちの面でも、支えてもらったり後押ししたりと立場が逆転することで、絆が深まったように思います。たとえ勉強してスキルや年収アップが叶ったとしても、それを喜びあえる家族がいなければ意味がありません。まず夫婦でじっくり話し合い、お互いが同じ方を向く。こうした協力体制は政府のサポートにはありませんから、もし子育て時期にリスキリングを検討する場合は、夫婦でよく話し合い、足並みを揃えることは非常に重要です。 産前産後のリスキリングで犠牲にしたもの過ぎてみれば達成感の方が断然大きい産前産後のリスキリングですが、後悔もいくつかあります。1つは、産前産後のゆったり休むべき時間を勉強にほぼ使ってしまったことです。ベビーグッズをウキウキ選んだり、のんびりお散歩したりする時間もありませんでした。健康だからこそ勉強も出来たという意味では感謝しかありません。ただ、体にとって大事な休暇をもっと集中して楽しんでもよかったなと今では思います。また、勉強のためにシッターさんを手配したり、家事をアウトソースしたりすることで、短期的な支出が増えるのはデメリットと言えます。中長期で見たら収入増加が見込めるため、我が家は夫婦で話し合ってOKとしました。ただ、家庭によっては意見が別れる部分です。納得できない気持ちを溜めたまま進むと、必ずどこかで爆発します。進み出す際、この点はぜひ慎重に話し合いたいものです。産休育休中のリスキリングについて、「本当に出来るのか?」という現実問題を、我が家の取り組みを例に書かせていただきました。資格取得は1つの目標でしたが、達成後にいい経験として記憶されているのは、夫婦円満を保ちながら達成できたことも大きいです。冒頭でも、産休育休中のリスキリングは「環境を整えられれば、出来ないことはない。ただし相当の工夫が必要」だとお伝えしました。その環境を、幸運にも我が家は整えることが出来ましたが、これがどの家庭にも当てはまるものではないことは理解しています。これから始まる政府のリスキリング支援ですが、「学び」にのみ行われるのでなく、学びにくさがある家庭状況にも寄り添うことに期待します。そうした制度と合わせて、夫婦は一層話し合い、環境構築のために協力し合うことが大切であることも、忘れることはできないものです。
自宅で食べる料理を人に作ってもらうことには、決断までかなり葛藤がありました。キッチンに他人を入れることや費用面での負担(1回約9,000円+材料費)、家にいるのに家事をしないという心理的な抵抗感もありました。
しかし、「優先すべきは時間捻出」という結論を夫婦で確認し(というか、抵抗する私を夫が説き伏せた)、今でも週1回、1週間分のおかずを作ってもらっています。これにより、1週間で約12時間(準備時間を朝15分・昼30分・夜60分と仮定)かかる食事の準備時間を短縮出来ただけでなく、メニューを考える心理的負担も手放せています。
また、夫婦ともに在宅ワークだと発生しがちな「ご飯何時に食べる? どっちが作る?」というやり取りを省略し、お互い平日は仕事や勉強に集中できる環境が作れたのは良かったです。
(4)夫婦で育児スキルを同レベルにする育児も家事も、ここまで他人の手を頼れたら十分と思われるかもしれません。しかし、何より産後のリスキリングを叶えた要素は、夫婦どちらも同レベルの育児スキルを持つことでした。
よくある「パパが抱っこすると泣く」「やっぱりママが居ないとダメ」という状況は、ママとしては優越感を覚えますが、働く上ではリスクです。何があってもどちらでも対応できることを念頭に、健康や発育状況、おむつやミルクのストックまで、我が家では細かく共有し、スムーズな2人育児に活かしています。
こうした取り組みにより、勉強や試験のために私一人で出かけるシーンがあっても安心して夫に任せることができ、良かったと思っています。
続いて、夫側の仕事と育児とリスキリングの両立状況を紹介します。
PMPの試験は、受講も受験もオンラインで完結します。普段は寝かしつけを終えた夜間に1~2時間じっくり勉強し、休憩時間や土日の細切れ時間はスマホの学習アプリでインプットを続けました。
Photo by iStock
ネックは、フルタイムの仕事に朝と夕方以降の育児、そして家事の負担をこなしてから勉強に向かうと体力がなかなか持たないことです。また自宅学習のため、柔軟にスケジューリング出来る反面、自主性がカギになります。自己管理や目標管理、モチベーションの維持は大変で、夫婦で進捗状況を確認し合いながら取り組めたのが良かったと話します。PMPは受験日が複数用意された試験であり、申込みも1週間前であれば可能です。期限までは受験日をずらそうと思えばいつでも出来るため、ズルズルと先伸ばす人もいるといいます。夫は最終的に、目標としていたタイミングから1ヶ月遅れで初受験し、資格取得を叶えました。成功要因を聞くと、体調維持と勉強時間確保のために、自分と家族の生活リズムを維持し続けられたことにあったようです。このために、家事のアウトソーシングやサポート体制に加えて「ネントレ」の成功も欠かせないと話します。ネントレとは、「ねんねトレーニング」の略です。子どもがしっかり眠れるよう、環境や生活リズム、寝かしつけ方法を整えていくものです。我が家では生後1ヶ月頃から本やYou Tubeで学びました。元々息子は眠ったり飲んだりするのが上手だったことや、早期に保育園に通うことで生活リズムが整ったことも成功要因です。生後3~4ヶ月目には、毎晩同じ時間に眠り、夜間授乳の回数やタイミングも乱れることは少なくなっていました。こうした赤ちゃん個別の育てやすさも、リスキリングの取り組みには大きく関係します。産前産後のリスキリングで得られたものここまで、我が家の産前産後のリスキリングのチャレンジについて、成功要因をまとめていきました。幸いにも、2人とも1回の受験で資格取得は完了出来ています。改めて実感している良い成果についてまとめました。1つは、限られた時間で勉強に取り組んだことで、試験合格という成果だけでなく、知識の定着が非常に良い点です。私も夫も実務に活かせる資格を選んだことで、仕事の幅がすでに広がり、キャリアプランの前進があったと思います。これは何より求めていた成果です。また、多忙かつ大変な時期に勉強し完走できた経験は、お互い大きな自信になっています。私個人としては、産前産後でのキャリアの中断やスピードダウンを以前から不安に思っていました。100%払拭できたとは言い切れませんが、資格取得をしたことで軽減されていると感じます。最後は気持ちの話ですが、育児と勉強というチャレンジを通して、夫婦の絆はさらに深まったと思います。紹介した取り組みはすべて夫婦で話し合い、最適解をそのつど出してから決断しています。当然コミュニケーション量は増えましたし、気持ちの面でも、支えてもらったり後押ししたりと立場が逆転することで、絆が深まったように思います。たとえ勉強してスキルや年収アップが叶ったとしても、それを喜びあえる家族がいなければ意味がありません。まず夫婦でじっくり話し合い、お互いが同じ方を向く。こうした協力体制は政府のサポートにはありませんから、もし子育て時期にリスキリングを検討する場合は、夫婦でよく話し合い、足並みを揃えることは非常に重要です。 産前産後のリスキリングで犠牲にしたもの過ぎてみれば達成感の方が断然大きい産前産後のリスキリングですが、後悔もいくつかあります。1つは、産前産後のゆったり休むべき時間を勉強にほぼ使ってしまったことです。ベビーグッズをウキウキ選んだり、のんびりお散歩したりする時間もありませんでした。健康だからこそ勉強も出来たという意味では感謝しかありません。ただ、体にとって大事な休暇をもっと集中して楽しんでもよかったなと今では思います。また、勉強のためにシッターさんを手配したり、家事をアウトソースしたりすることで、短期的な支出が増えるのはデメリットと言えます。中長期で見たら収入増加が見込めるため、我が家は夫婦で話し合ってOKとしました。ただ、家庭によっては意見が別れる部分です。納得できない気持ちを溜めたまま進むと、必ずどこかで爆発します。進み出す際、この点はぜひ慎重に話し合いたいものです。産休育休中のリスキリングについて、「本当に出来るのか?」という現実問題を、我が家の取り組みを例に書かせていただきました。資格取得は1つの目標でしたが、達成後にいい経験として記憶されているのは、夫婦円満を保ちながら達成できたことも大きいです。冒頭でも、産休育休中のリスキリングは「環境を整えられれば、出来ないことはない。ただし相当の工夫が必要」だとお伝えしました。その環境を、幸運にも我が家は整えることが出来ましたが、これがどの家庭にも当てはまるものではないことは理解しています。これから始まる政府のリスキリング支援ですが、「学び」にのみ行われるのでなく、学びにくさがある家庭状況にも寄り添うことに期待します。そうした制度と合わせて、夫婦は一層話し合い、環境構築のために協力し合うことが大切であることも、忘れることはできないものです。
ネックは、フルタイムの仕事に朝と夕方以降の育児、そして家事の負担をこなしてから勉強に向かうと体力がなかなか持たないことです。また自宅学習のため、柔軟にスケジューリング出来る反面、自主性がカギになります。自己管理や目標管理、モチベーションの維持は大変で、夫婦で進捗状況を確認し合いながら取り組めたのが良かったと話します。
PMPは受験日が複数用意された試験であり、申込みも1週間前であれば可能です。期限までは受験日をずらそうと思えばいつでも出来るため、ズルズルと先伸ばす人もいるといいます。
夫は最終的に、目標としていたタイミングから1ヶ月遅れで初受験し、資格取得を叶えました。成功要因を聞くと、体調維持と勉強時間確保のために、自分と家族の生活リズムを維持し続けられたことにあったようです。このために、家事のアウトソーシングやサポート体制に加えて「ネントレ」の成功も欠かせないと話します。
ネントレとは、「ねんねトレーニング」の略です。子どもがしっかり眠れるよう、環境や生活リズム、寝かしつけ方法を整えていくものです。我が家では生後1ヶ月頃から本やYou Tubeで学びました。元々息子は眠ったり飲んだりするのが上手だったことや、早期に保育園に通うことで生活リズムが整ったことも成功要因です。生後3~4ヶ月目には、毎晩同じ時間に眠り、夜間授乳の回数やタイミングも乱れることは少なくなっていました。
こうした赤ちゃん個別の育てやすさも、リスキリングの取り組みには大きく関係します。
ここまで、我が家の産前産後のリスキリングのチャレンジについて、成功要因をまとめていきました。
幸いにも、2人とも1回の受験で資格取得は完了出来ています。改めて実感している良い成果についてまとめました。
1つは、限られた時間で勉強に取り組んだことで、試験合格という成果だけでなく、知識の定着が非常に良い点です。私も夫も実務に活かせる資格を選んだことで、仕事の幅がすでに広がり、キャリアプランの前進があったと思います。これは何より求めていた成果です。
また、多忙かつ大変な時期に勉強し完走できた経験は、お互い大きな自信になっています。私個人としては、産前産後でのキャリアの中断やスピードダウンを以前から不安に思っていました。100%払拭できたとは言い切れませんが、資格取得をしたことで軽減されていると感じます。
最後は気持ちの話ですが、育児と勉強というチャレンジを通して、夫婦の絆はさらに深まったと思います。紹介した取り組みはすべて夫婦で話し合い、最適解をそのつど出してから決断しています。当然コミュニケーション量は増えましたし、気持ちの面でも、支えてもらったり後押ししたりと立場が逆転することで、絆が深まったように思います。
たとえ勉強してスキルや年収アップが叶ったとしても、それを喜びあえる家族がいなければ意味がありません。まず夫婦でじっくり話し合い、お互いが同じ方を向く。こうした協力体制は政府のサポートにはありませんから、もし子育て時期にリスキリングを検討する場合は、夫婦でよく話し合い、足並みを揃えることは非常に重要です。
産前産後のリスキリングで犠牲にしたもの過ぎてみれば達成感の方が断然大きい産前産後のリスキリングですが、後悔もいくつかあります。1つは、産前産後のゆったり休むべき時間を勉強にほぼ使ってしまったことです。ベビーグッズをウキウキ選んだり、のんびりお散歩したりする時間もありませんでした。健康だからこそ勉強も出来たという意味では感謝しかありません。ただ、体にとって大事な休暇をもっと集中して楽しんでもよかったなと今では思います。また、勉強のためにシッターさんを手配したり、家事をアウトソースしたりすることで、短期的な支出が増えるのはデメリットと言えます。中長期で見たら収入増加が見込めるため、我が家は夫婦で話し合ってOKとしました。ただ、家庭によっては意見が別れる部分です。納得できない気持ちを溜めたまま進むと、必ずどこかで爆発します。進み出す際、この点はぜひ慎重に話し合いたいものです。産休育休中のリスキリングについて、「本当に出来るのか?」という現実問題を、我が家の取り組みを例に書かせていただきました。資格取得は1つの目標でしたが、達成後にいい経験として記憶されているのは、夫婦円満を保ちながら達成できたことも大きいです。冒頭でも、産休育休中のリスキリングは「環境を整えられれば、出来ないことはない。ただし相当の工夫が必要」だとお伝えしました。その環境を、幸運にも我が家は整えることが出来ましたが、これがどの家庭にも当てはまるものではないことは理解しています。これから始まる政府のリスキリング支援ですが、「学び」にのみ行われるのでなく、学びにくさがある家庭状況にも寄り添うことに期待します。そうした制度と合わせて、夫婦は一層話し合い、環境構築のために協力し合うことが大切であることも、忘れることはできないものです。
過ぎてみれば達成感の方が断然大きい産前産後のリスキリングですが、後悔もいくつかあります。1つは、産前産後のゆったり休むべき時間を勉強にほぼ使ってしまったことです。ベビーグッズをウキウキ選んだり、のんびりお散歩したりする時間もありませんでした。健康だからこそ勉強も出来たという意味では感謝しかありません。ただ、体にとって大事な休暇をもっと集中して楽しんでもよかったなと今では思います。
また、勉強のためにシッターさんを手配したり、家事をアウトソースしたりすることで、短期的な支出が増えるのはデメリットと言えます。中長期で見たら収入増加が見込めるため、我が家は夫婦で話し合ってOKとしました。ただ、家庭によっては意見が別れる部分です。納得できない気持ちを溜めたまま進むと、必ずどこかで爆発します。進み出す際、この点はぜひ慎重に話し合いたいものです。
産休育休中のリスキリングについて、「本当に出来るのか?」という現実問題を、我が家の取り組みを例に書かせていただきました。資格取得は1つの目標でしたが、達成後にいい経験として記憶されているのは、夫婦円満を保ちながら達成できたことも大きいです。
冒頭でも、産休育休中のリスキリングは「環境を整えられれば、出来ないことはない。ただし相当の工夫が必要」だとお伝えしました。その環境を、幸運にも我が家は整えることが出来ましたが、これがどの家庭にも当てはまるものではないことは理解しています。
これから始まる政府のリスキリング支援ですが、「学び」にのみ行われるのでなく、学びにくさがある家庭状況にも寄り添うことに期待します。そうした制度と合わせて、夫婦は一層話し合い、環境構築のために協力し合うことが大切であることも、忘れることはできないものです。