今年は4月に政府の子供政策を一元的に担うこども家庭庁が発足し、「子供」「子育て」をめぐる政策の良否が注目される一年となる。
岸田文雄首相は4日の年頭記者会見で「異次元の少子化対策」という強い表現を使い、急激に進む人口減少を自らの手で食い止める覚悟を示した。ただ、乗り越えるべき課題は山積している。
「省庁の縦割りではなく、横断的に考えていくことで全体像を明らかにしていく。政府の本気度を示していきたい」。首相は8日のNHK番組で、少子化対策への取り組みについて、こう強調した。
先月20日に発表された人口動態統計速報で、昨年1~10月の出生数は66万9871人(前年同期比4・8%減)にとどまった。この傾向が続けば、昨年1年間の出生数は過去最少だった令和3年の81万人1622人(確定数)どころか、77万人にまで急減するとの見方もある。
首相は今月6日、小倉将信こども政策担当相に対し、?経済支援?子育て家庭向けサービスの拡充?働き方改革の推進-の3点について、新たな検討会を設置し、具体策を検討するよう指示した。
3月末をめどに方針の大枠を取りまとめる予定だが、加藤勝信厚生労働相が「少子化の背景には若者の経済的不安定や長時間労働など結婚・出産・子育ての希望の実現を阻む要因がさまざまに絡み合っている」と指摘するように、一筋縄ではいきそうにない。
まず、経済支援で検討課題となっているのは児童手当の支給額の拡大だ。現行は中学生まで1人当たり原則1万~1万5千円。自民党には第2子に3万円、第3子には6万円に増やす案が、公明党には18歳まで支給対象を広げる案があるが、ともにかなりの積み増しが必要で安定財源の確保がハードルとなる。
子育て家庭向けサービスの拡充では、産後ケア事業の利用料(自己負担額)の減免や、子供の急な発熱に対応できる病児保育を行う施設の整備など、地域を挙げての支援体制構築が不可欠となる。育児関連の行政手続きの利便性を高める必要も指摘され、学童保育を利用する際の申込書をオンライン化する見直しなどが挙げられる。
働き方改革では、仕事と育児の両立に向けた男性の育児休業の取得率向上が課題だ。厚生労働省によると、3年度の取得率は約14%にとどまり、国が7年度までの達成を目指す30%とは開きがある。
育休中に雇用保険から支給される「育児休業給付金」の給付率を、休業開始前の賃金の67%から引き上げることも検討課題となる。正規雇用の女性が出産や育児を機に離職し、子育てが一段落してから再就職しても非正規雇用になりやすいのをどう防ぐかも課題の一つだ。(村上智博)