政府・与党は、新たな少子化対策として、年金と医療、介護、雇用の各社会保険から拠出金を積み立て、非正規労働者らを対象とした子育て支援の給付制度を創設する方向で調整に入った。
国民1人あたりの月額保険料を総額で数百円程度引き上げ、全世代で子育てを支える仕組みを構築する。
複数の政府・与党関係者が明らかにした。2024年度以降の制度導入を目指し、来年の通常国会への新法提出を検討している。
岸田首相は6日、小倉少子化相を座長とする関係省庁会議を設置し、「異次元の少子化対策」の検討に着手するように指示した。8日のNHKの番組では、「雇用保険、医療保険をはじめ、様々な保険がある。こうしたあり方など、様々な財源、予算について考えなければならない」と述べたうえで、「政策の整理をまず行う」と語った。
新たな給付制度は、現行では支援が行き届いていない、育児休業明けに短時間勤務を利用する労働者や、育休を取得できない非正規労働者、自営業者などが対象となる。関係省庁会議が3月末にまとめる検討項目に盛り込まれる方向だ。
実現には、支給額によって年間で数千億円から最大1兆円の安定財源を確保しなければならない。例えば、育休給付金の支給上限額は現在、月約30万円だ。社会保険料は労働者と企業が折半するケースが多いが、引き上げ幅などの詳細は今後詰める。子どものいない人や子育てを終えた人、経済界の理解をどう得るかが焦点となる。
拠出金は4月に発足するこども家庭庁が所管し、年金特別会計の子ども・子育て支援勘定に積み立てる案がある。
首相は、6月に閣議決定する「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」で、「異次元の少子化対策」のため、子ども関連予算を倍増させる道筋を示す考えだ。予算確保策には、拠出金も含まれる見通しだが、首相が意欲を示す児童手当の拡充には、さらに兆円単位の財源が必要になる。
児童手当を巡っては、政府・与党内で、所得制限の緩和や多子世帯への手当増額、支給対象の拡大などを行う案が浮上している。