社会を、そして国政をも大きく揺さぶった安倍晋三元総理(享年67)の暗殺事件。母親を破産に追い込んだ統一教会への恨みから手製銃の引き金を引いた山上徹也容疑者(42)は間もなく起訴される見通しだが、母親が今、本誌(「週刊新潮」)に明かした思いとは。
***
【画像8枚】自殺した父と兄、宗教に貢ぐ母 山上容疑者の複雑な家庭環境 列島を寒波が襲い、今季の冬で最大級の冷え込みとなった昨年12月のある日。70歳になる彼女は奈良県内のアパートの前で自転車の前カゴから灯油入りと思しきポリタンクをおろし、自室に運び入れていた。小柄な体にコートを羽織り、帽子を目深にかぶったうえ、眼鏡とマスクを着けているため表情は読み取れない。

高校時代の山上徹也容疑者 ある時、声をかけると、呻(うめ)くようにこう言った。「みなさんに……わかってもらえないのでね……」1月13日までに起訴か 母親の語った心情に分け入る前に、まずは山上容疑者の置かれた状況から。「7月8日の事件後、下旬には大阪拘置所に移送され、現在まで鑑定留置されています。専門医が山上や親族と面談を重ね、精神疾患の有無や成育歴などまで調査し、責任能力を検討してきました」(社会部デスク) 検察側は過去2回、奈良簡裁に鑑定留置の延長を申請し、その都度認められた。「ただ、いずれも弁護団が準抗告し、奈良地裁が延長短縮を決定。鑑定留置は1月10日までとなりました。以降は奈良西警察署に身柄が移送される見込み。責任能力に問題はなく、勾留期限を迎える1月13日までに起訴されるでしょう。弁護団は国選2名と、事件の大きさに鑑みて奈良弁護士会から追加選任された1名の計3名構成です」(同)英検1級の問題集を差し入れ 弁護団の一人、古川雅朗弁護士(国選)に聞くと、「接見は2週間に1回くらいです。病気はしておらず、精神的にも問題はない。なぜ検察側が鑑定留置の延長を申請したのか理解に苦しみます。外部から彼宛に手紙が来たりもしますが、彼の妹以外は接見禁止なので、本人には届いていません。週に1、2回、鑑定人の面談も受けていますが、逆にそれ以外の時間は取り調べを受けているわけでもなく、(本人にとって空いた)時間はあるでしょう」 なるほど。ならばヒマを持て余しているのだろうか。 元弁護士でもある山上容疑者の伯父(77)によると、「勉強していますよ」 と言うのである。「徹也は今、衣食住足りた状態なわけです。仕事もしなくていいから、時間はいくらでもある。だから今、勉強しておいたほうがいい。それで私も、英検1級の問題集を差し入れています。徹也の妹も辞書を差し入れたりしているようです」 さらにこうも語った。「殺人事件は裁判員裁判となり、被害者が1人の場合、懲役20年前後の実刑が相場でしょう。安倍さんが亡くなったという事情を考慮しても、懲役25年の実刑といったところでしょうか。ならば今のうちに勉強して、出所した時のために“地頭(じあたま)”を作っておいたほうがいいですから」 父親は京大卒、自身も中学時代から学業優秀で奈良県内有数の進学校に進んだ山上容疑者。英検1級取得に向けて勉学に勤しんでいるか。全国から衣服や食べ物の差し入れが 驚くべきは、どこで住所を知ったのか、伯父のもとに山上容疑者へ宛てた“ファンレター”の類が続々と届いていることだ。「“頑張ってください”という内容の手紙や差し入れの品々のほか、中には“大阪拘置所に洋書を送りました”なんていう内容のものもありました」 SNSには山上容疑者を支持する多数の書き込みが見られ、支援の具体的な方法も詳細に記されている。ネット上でモノを買って送るといったやり方だ。伯父が続ける。「衣服は妹が接見に行った際に要望を聞いて、望んだ種類の服を差し入れています。先日は私も冬服を差し入れたところです。でも全国から衣服やお菓子や食べ物の差し入れが多くて、彼が受け取らずに余ったものがここにたくさん届く。だから私がそれを地域の老人会に提供しています」「子どもですから」 さて、その山上容疑者の実母は本誌に何を語ったのか。――彼の弁護士とはやりとりをしていますか。「時々は、しますよ」――どんなことを伝える?「別に、何も伝えません」――弁護士を通して伝えたいことはないのか。「私のほうが(弁護士から息子の)様子を聞いているだけですよ」――ところで、現在も統一教会を信仰している?「それは、前から言っていますけど、そうです」――彼の犯した事件の重大さは理解していますか?「残念ながら私も、そこにどうやって行ったのか……わかりません」――「そこ」とは?「事件になったのが……」――なぜ事件に至ったのかわからない、と。「ええ、ええ……。反対していましたけど」――反対していた?「教会に対して、ですね。私に対して、言っていますでしょ。(これまでの)記事にいっぱいあるでしょ」 統一教会に「反対」はしていたが、なぜそれと事件がつながったのか理解できないということらしい。――改めて、銃口を安倍元総理に向けた動機は。「私もわかりません……」――どうして政治家を?「それも……また……裁判とかね、そういうので出てくるかと思います」 母親は最後にこう言った。関西なまりのその言葉には、少し力を込めたようなニュアンスがあった。「(自分の)子どもですから。みんな、そうでしょ。一緒でございましょう。あなたがね、大切に思いはるのと同じで、一緒でございましょう」 いかなる犯罪をなそうとも、わが子はわが子。 統一教会と縁を切ってほしいという息子の願いに応えなかった母親にして、なおもそんな思いを口にしようとは……。「週刊新潮」2023年1月5・12日号 掲載
列島を寒波が襲い、今季の冬で最大級の冷え込みとなった昨年12月のある日。70歳になる彼女は奈良県内のアパートの前で自転車の前カゴから灯油入りと思しきポリタンクをおろし、自室に運び入れていた。小柄な体にコートを羽織り、帽子を目深にかぶったうえ、眼鏡とマスクを着けているため表情は読み取れない。
ある時、声をかけると、呻(うめ)くようにこう言った。
「みなさんに……わかってもらえないのでね……」
母親の語った心情に分け入る前に、まずは山上容疑者の置かれた状況から。
「7月8日の事件後、下旬には大阪拘置所に移送され、現在まで鑑定留置されています。専門医が山上や親族と面談を重ね、精神疾患の有無や成育歴などまで調査し、責任能力を検討してきました」(社会部デスク)
検察側は過去2回、奈良簡裁に鑑定留置の延長を申請し、その都度認められた。
「ただ、いずれも弁護団が準抗告し、奈良地裁が延長短縮を決定。鑑定留置は1月10日までとなりました。以降は奈良西警察署に身柄が移送される見込み。責任能力に問題はなく、勾留期限を迎える1月13日までに起訴されるでしょう。弁護団は国選2名と、事件の大きさに鑑みて奈良弁護士会から追加選任された1名の計3名構成です」(同)
弁護団の一人、古川雅朗弁護士(国選)に聞くと、
「接見は2週間に1回くらいです。病気はしておらず、精神的にも問題はない。なぜ検察側が鑑定留置の延長を申請したのか理解に苦しみます。外部から彼宛に手紙が来たりもしますが、彼の妹以外は接見禁止なので、本人には届いていません。週に1、2回、鑑定人の面談も受けていますが、逆にそれ以外の時間は取り調べを受けているわけでもなく、(本人にとって空いた)時間はあるでしょう」
なるほど。ならばヒマを持て余しているのだろうか。
元弁護士でもある山上容疑者の伯父(77)によると、
「勉強していますよ」
と言うのである。
「徹也は今、衣食住足りた状態なわけです。仕事もしなくていいから、時間はいくらでもある。だから今、勉強しておいたほうがいい。それで私も、英検1級の問題集を差し入れています。徹也の妹も辞書を差し入れたりしているようです」
さらにこうも語った。
「殺人事件は裁判員裁判となり、被害者が1人の場合、懲役20年前後の実刑が相場でしょう。安倍さんが亡くなったという事情を考慮しても、懲役25年の実刑といったところでしょうか。ならば今のうちに勉強して、出所した時のために“地頭(じあたま)”を作っておいたほうがいいですから」
父親は京大卒、自身も中学時代から学業優秀で奈良県内有数の進学校に進んだ山上容疑者。英検1級取得に向けて勉学に勤しんでいるか。
驚くべきは、どこで住所を知ったのか、伯父のもとに山上容疑者へ宛てた“ファンレター”の類が続々と届いていることだ。
「“頑張ってください”という内容の手紙や差し入れの品々のほか、中には“大阪拘置所に洋書を送りました”なんていう内容のものもありました」
SNSには山上容疑者を支持する多数の書き込みが見られ、支援の具体的な方法も詳細に記されている。ネット上でモノを買って送るといったやり方だ。伯父が続ける。
「衣服は妹が接見に行った際に要望を聞いて、望んだ種類の服を差し入れています。先日は私も冬服を差し入れたところです。でも全国から衣服やお菓子や食べ物の差し入れが多くて、彼が受け取らずに余ったものがここにたくさん届く。だから私がそれを地域の老人会に提供しています」
さて、その山上容疑者の実母は本誌に何を語ったのか。
――彼の弁護士とはやりとりをしていますか。
「時々は、しますよ」
――どんなことを伝える?
「別に、何も伝えません」
――弁護士を通して伝えたいことはないのか。
「私のほうが(弁護士から息子の)様子を聞いているだけですよ」
――ところで、現在も統一教会を信仰している?
「それは、前から言っていますけど、そうです」
――彼の犯した事件の重大さは理解していますか?
「残念ながら私も、そこにどうやって行ったのか……わかりません」
――「そこ」とは?
「事件になったのが……」
――なぜ事件に至ったのかわからない、と。
「ええ、ええ……。反対していましたけど」
――反対していた?
「教会に対して、ですね。私に対して、言っていますでしょ。(これまでの)記事にいっぱいあるでしょ」
統一教会に「反対」はしていたが、なぜそれと事件がつながったのか理解できないということらしい。
――改めて、銃口を安倍元総理に向けた動機は。
「私もわかりません……」
――どうして政治家を?
「それも……また……裁判とかね、そういうので出てくるかと思います」
母親は最後にこう言った。関西なまりのその言葉には、少し力を込めたようなニュアンスがあった。
「(自分の)子どもですから。みんな、そうでしょ。一緒でございましょう。あなたがね、大切に思いはるのと同じで、一緒でございましょう」
いかなる犯罪をなそうとも、わが子はわが子。
統一教会と縁を切ってほしいという息子の願いに応えなかった母親にして、なおもそんな思いを口にしようとは……。
「週刊新潮」2023年1月5・12日号 掲載