河野太郎デジタル相は10日、60歳の誕生日を迎えた。
昨年夏の内閣改造で消費者担当相などを兼務し再入閣すると、持ち味の発信力や突破力を生かし、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題やマイナンバーカード普及などで存在感を誇示。岸田文雄首相が内閣支持率の低迷に苦しむ中、「ポスト岸田」を見据え、虎視眈々(たんたん)と機会をうかがっている。
「デジタル化は一つ一つ積み上げていくしかない」。河野氏は昨年末のインタビューで、着実に所管分野の政策実現を図る考えを強調。自身の年齢について問われると、「還暦って何?」とおどけてみせ、「(現在も)若手だ」と清新さを強調した。
河野氏は再入閣の直後に旧統一教会問題で検討会設置を表明。当初は慎重だった首相官邸に先んじて、被害者救済に取り組む姿勢を打ち出した。
マイナカードを巡っても、健康保険証の廃止を発表。「事実上のカード義務化だ」と物議を醸したが、申請者数は昨年末に人口の6割を超える約8300万人に達するなど、普及促進で一定の成果を挙げている。
若年層を中心に世論の人気は高いものの、2021年の自民党総裁選で国会議員票が伸び悩んだように、党内基盤の弱さは変わらない。本人もそのことを自覚してか、最近は積極的に若手との会合を設けるなど、「人脈づくりに励むようになった」(周辺)という。
ただ、歯に衣(きぬ)着せぬ言動には依然、党内の忌避感が強く、ベテラン議員の一人は「何をしでかすか分からない」と身構える。政権幹部は「『河野首相』が生まれる時は、自民党の支持率が2割を切った時だ」と指摘。党が危機的状況に陥らない限り、出番が回る可能性は低いと見る。
河野氏は8~19日の日程で欧米6カ国を歴訪。要人との会談や企業の視察を予定するなど、得意と自負する外交分野でもアピールに余念がない。
一方、4月の統一地方選では、応援演説を積極的にこなす考えで、地方議員への浸透も狙う。周辺は「今は職務にまい進し、足場固めを進める時だ」と語った。