沖縄本島から船で30分、人口約4000人の伊江島は日帰り可能な離島として多くの観光客が訪れる。この島の選挙は地縁に基づき行われる、特殊な選挙らしい…。選挙芸人の山本期日前(ゆかいな議事録)が現地で見た衝撃の光景をレポートする。
「戦前世代ですが全力でがんばります!」
世にも稀なキャッチフレーズと選挙事務所前にはシーサー。
2022年9月、沖縄知事選が盛り上がりを見せる中、筆者は同時に行われていた伊江村議選の取材のため伊江島を訪れた。
伊江島は玄関にシーサーがいる家が多い
沖縄本島から船で30分、人口約4000人の伊江島は日帰り可能な離島として多くの観光客が訪れる。島の中央中心部に位置する城山は島のシンボルとして知られ、伊江島タッチューと呼ばれ親しまれている。伊江島名物のジーマミー豆腐はデザートと勘違いするぐらいに甘くて美味。レンタル自転車を借りると「誰も盗む人いないから、自転車のカギかけなくていいですよ」と言われる、ゆったりとした時間の流れる島だ。海から臨む伊江島イメージキャラクターの伊江島タッちゅん伊江島の選挙は地縁・血縁が何よりも重視される。「村議が4年間ずーっと色んな話をして、仕事をした何でも話し合える相手でも、親族が出たら親族に票が行く」とA候補は伊江島の選挙の難しさを語る。親友より親族。友達が候補者に「ごめん」と謝るのはよくある光景だという。船での態度が大事??基本的に伊江島の候補者は演説をしなければ、選挙カーも走らせない。人口約4000人の島では島民みんなが顔見知り。直接顔を会わせて投票をお願いする「Face to Face選挙」が主流だ。島中に選挙カーの音を鳴り響かせていたのは、共産党の候補だけであった。共産党のナカ実候補の選挙カー 伊江島は住民同士の距離感が近い。ある候補の選挙事務所前では、通りがかりの子供も含め、全ての島民と挨拶がかわされていた。横を通る車もわざわざ減速し、窓を開けて候補との挨拶が交わされる。選挙事務所前は、挨拶の為のドライブスルーが形成されていた。小さな島だからこそ、選挙になると島の情報網を掻い潜る事は困難だ。「冗談で選挙出ようかなって友達に言ったら、夜には島中で噂が広がってます」(A候補)。落選候補者は活動量が島全体に筒抜けなので、親族から励ましではなく、責められる事もあるという。現職議員の日常も常に監視対象だ。1日に4往復している沖縄本島と伊江島を結ぶ船の中での態度が有権者に見られているのだ。実際に、候補者を支持するポイントに「船で気さくに挨拶してくれること」をあげている人もいた。伊江島行のフェリー選挙活動中以外も、一時も気を抜けない山羊を何頭焼いたかで、当落が決まる!?筆者が伊江島の選挙を取材していく中で一番衝撃を受けたのは「ヤギ汁を振舞う」文化だ。ヤギ汁はヤギ肉を煮込んだ郷土料理であり、島での結婚祝いや新築祝い等では欠かせない存在となっている。伊江島では人が多く集まる機会にヤギ汁が振る舞われるといい、選挙の際も欠かせないツールであるというのだ。伊江島では昔、選挙の際にこんなやり取りがあったという。当選候補「今回お前が落ちた理由分かるか?」落選候補「分からない」当選候補「山羊何頭焼いた?」落選候補「2頭だ」当選候補「俺は3頭焼いたから当選したんだ」 ヤギ汁は体重50キロのヤギで約100食分作れるという。ヤギを焼いて振舞った数で当落が決まる時代があったというのだ。ヤギにとっては死活問題?実際に、筆者が選挙事務所でヤギ汁を振る舞っている様子を目撃したわけではない。「昔の話」と話す島民もいれば、「選挙が終わってから、お疲れ様的な意味で皆でヤギ汁を食べる。でも、今はコロナ禍だからヤギ汁は中止かな」と話す島民もいた。「ヤギ汁が手っ取り早いからね」と豚汁の炊き出しみたいな感覚で話す島民もいた。ちなみに、沖縄本島でも選挙の際のヤギ汁文化は昔は見られたという。 ある島民がジョーク気味に衝撃の一言を放った。「選挙がある度に島からヤギがいなくなるんだ」ヤギにとっては、選挙は無投票で終わった方がよさそうだ……。他の地域では見ることのできない異色の選挙戦が展開されている伊江島の選挙。なんと、伊江島には日本一周中に立候補した異色の候補者がいるという。後編記事『日本一周中に議員になっちゃった…!伊江島で世にも珍しい日本一周中議員が誕生した「舞台裏」』で、本人の談とともに紹介する。
沖縄本島から船で30分、人口約4000人の伊江島は日帰り可能な離島として多くの観光客が訪れる。島の中央中心部に位置する城山は島のシンボルとして知られ、伊江島タッチューと呼ばれ親しまれている。伊江島名物のジーマミー豆腐はデザートと勘違いするぐらいに甘くて美味。レンタル自転車を借りると「誰も盗む人いないから、自転車のカギかけなくていいですよ」と言われる、ゆったりとした時間の流れる島だ。
海から臨む伊江島
イメージキャラクターの伊江島タッちゅん
伊江島の選挙は地縁・血縁が何よりも重視される。
「村議が4年間ずーっと色んな話をして、仕事をした何でも話し合える相手でも、親族が出たら親族に票が行く」とA候補は伊江島の選挙の難しさを語る。
親友より親族。友達が候補者に「ごめん」と謝るのはよくある光景だという。
基本的に伊江島の候補者は演説をしなければ、選挙カーも走らせない。人口約4000人の島では島民みんなが顔見知り。直接顔を会わせて投票をお願いする「Face to Face選挙」が主流だ。島中に選挙カーの音を鳴り響かせていたのは、共産党の候補だけであった。
共産党のナカ実候補の選挙カー
伊江島は住民同士の距離感が近い。ある候補の選挙事務所前では、通りがかりの子供も含め、全ての島民と挨拶がかわされていた。横を通る車もわざわざ減速し、窓を開けて候補との挨拶が交わされる。選挙事務所前は、挨拶の為のドライブスルーが形成されていた。小さな島だからこそ、選挙になると島の情報網を掻い潜る事は困難だ。「冗談で選挙出ようかなって友達に言ったら、夜には島中で噂が広がってます」(A候補)。落選候補者は活動量が島全体に筒抜けなので、親族から励ましではなく、責められる事もあるという。現職議員の日常も常に監視対象だ。1日に4往復している沖縄本島と伊江島を結ぶ船の中での態度が有権者に見られているのだ。実際に、候補者を支持するポイントに「船で気さくに挨拶してくれること」をあげている人もいた。伊江島行のフェリー選挙活動中以外も、一時も気を抜けない山羊を何頭焼いたかで、当落が決まる!?筆者が伊江島の選挙を取材していく中で一番衝撃を受けたのは「ヤギ汁を振舞う」文化だ。ヤギ汁はヤギ肉を煮込んだ郷土料理であり、島での結婚祝いや新築祝い等では欠かせない存在となっている。伊江島では人が多く集まる機会にヤギ汁が振る舞われるといい、選挙の際も欠かせないツールであるというのだ。伊江島では昔、選挙の際にこんなやり取りがあったという。当選候補「今回お前が落ちた理由分かるか?」落選候補「分からない」当選候補「山羊何頭焼いた?」落選候補「2頭だ」当選候補「俺は3頭焼いたから当選したんだ」 ヤギ汁は体重50キロのヤギで約100食分作れるという。ヤギを焼いて振舞った数で当落が決まる時代があったというのだ。ヤギにとっては死活問題?実際に、筆者が選挙事務所でヤギ汁を振る舞っている様子を目撃したわけではない。「昔の話」と話す島民もいれば、「選挙が終わってから、お疲れ様的な意味で皆でヤギ汁を食べる。でも、今はコロナ禍だからヤギ汁は中止かな」と話す島民もいた。「ヤギ汁が手っ取り早いからね」と豚汁の炊き出しみたいな感覚で話す島民もいた。ちなみに、沖縄本島でも選挙の際のヤギ汁文化は昔は見られたという。 ある島民がジョーク気味に衝撃の一言を放った。「選挙がある度に島からヤギがいなくなるんだ」ヤギにとっては、選挙は無投票で終わった方がよさそうだ……。他の地域では見ることのできない異色の選挙戦が展開されている伊江島の選挙。なんと、伊江島には日本一周中に立候補した異色の候補者がいるという。後編記事『日本一周中に議員になっちゃった…!伊江島で世にも珍しい日本一周中議員が誕生した「舞台裏」』で、本人の談とともに紹介する。
伊江島は住民同士の距離感が近い。ある候補の選挙事務所前では、通りがかりの子供も含め、全ての島民と挨拶がかわされていた。横を通る車もわざわざ減速し、窓を開けて候補との挨拶が交わされる。選挙事務所前は、挨拶の為のドライブスルーが形成されていた。
小さな島だからこそ、選挙になると島の情報網を掻い潜る事は困難だ。「冗談で選挙出ようかなって友達に言ったら、夜には島中で噂が広がってます」(A候補)。
落選候補者は活動量が島全体に筒抜けなので、親族から励ましではなく、責められる事もあるという。
現職議員の日常も常に監視対象だ。1日に4往復している沖縄本島と伊江島を結ぶ船の中での態度が有権者に見られているのだ。実際に、候補者を支持するポイントに「船で気さくに挨拶してくれること」をあげている人もいた。
伊江島行のフェリー
選挙活動中以外も、一時も気を抜けない
筆者が伊江島の選挙を取材していく中で一番衝撃を受けたのは「ヤギ汁を振舞う」文化だ。
ヤギ汁はヤギ肉を煮込んだ郷土料理であり、島での結婚祝いや新築祝い等では欠かせない存在となっている。伊江島では人が多く集まる機会にヤギ汁が振る舞われるといい、選挙の際も欠かせないツールであるというのだ。
伊江島では昔、選挙の際にこんなやり取りがあったという。
当選候補「今回お前が落ちた理由分かるか?」落選候補「分からない」当選候補「山羊何頭焼いた?」落選候補「2頭だ」当選候補「俺は3頭焼いたから当選したんだ」
ヤギ汁は体重50キロのヤギで約100食分作れるという。ヤギを焼いて振舞った数で当落が決まる時代があったというのだ。ヤギにとっては死活問題?実際に、筆者が選挙事務所でヤギ汁を振る舞っている様子を目撃したわけではない。「昔の話」と話す島民もいれば、「選挙が終わってから、お疲れ様的な意味で皆でヤギ汁を食べる。でも、今はコロナ禍だからヤギ汁は中止かな」と話す島民もいた。「ヤギ汁が手っ取り早いからね」と豚汁の炊き出しみたいな感覚で話す島民もいた。ちなみに、沖縄本島でも選挙の際のヤギ汁文化は昔は見られたという。 ある島民がジョーク気味に衝撃の一言を放った。「選挙がある度に島からヤギがいなくなるんだ」ヤギにとっては、選挙は無投票で終わった方がよさそうだ……。他の地域では見ることのできない異色の選挙戦が展開されている伊江島の選挙。なんと、伊江島には日本一周中に立候補した異色の候補者がいるという。後編記事『日本一周中に議員になっちゃった…!伊江島で世にも珍しい日本一周中議員が誕生した「舞台裏」』で、本人の談とともに紹介する。
ヤギ汁は体重50キロのヤギで約100食分作れるという。ヤギを焼いて振舞った数で当落が決まる時代があったというのだ。
実際に、筆者が選挙事務所でヤギ汁を振る舞っている様子を目撃したわけではない。
「昔の話」と話す島民もいれば、「選挙が終わってから、お疲れ様的な意味で皆でヤギ汁を食べる。
でも、今はコロナ禍だからヤギ汁は中止かな」と話す島民もいた。
「ヤギ汁が手っ取り早いからね」と豚汁の炊き出しみたいな感覚で話す島民もいた。ちなみに、沖縄本島でも選挙の際のヤギ汁文化は昔は見られたという。
ある島民がジョーク気味に衝撃の一言を放った。「選挙がある度に島からヤギがいなくなるんだ」ヤギにとっては、選挙は無投票で終わった方がよさそうだ……。他の地域では見ることのできない異色の選挙戦が展開されている伊江島の選挙。なんと、伊江島には日本一周中に立候補した異色の候補者がいるという。後編記事『日本一周中に議員になっちゃった…!伊江島で世にも珍しい日本一周中議員が誕生した「舞台裏」』で、本人の談とともに紹介する。
ある島民がジョーク気味に衝撃の一言を放った。
「選挙がある度に島からヤギがいなくなるんだ」
ヤギにとっては、選挙は無投票で終わった方がよさそうだ……。
他の地域では見ることのできない異色の選挙戦が展開されている伊江島の選挙。なんと、伊江島には日本一周中に立候補した異色の候補者がいるという。
後編記事『日本一周中に議員になっちゃった…!伊江島で世にも珍しい日本一周中議員が誕生した「舞台裏」』で、本人の談とともに紹介する。