世界平和統一家庭連合(旧統一教会)など宗教団体の信者を親に持つ「宗教2世」への児童虐待を巡り、厚生労働省は27日、児童相談所や市町村向けの初めての対応指針を公表した。
脅して宗教活動を強制するのは虐待にあたることなどを明示し、子どもの安全確保のため躊躇(ちゅうちょ)なく一時保護などの対応を取るよう求めた。同日、全国の自治体に通知した。
指針はQ&A形式で、信者家庭で起きうる事例を虐待の4分類(〈1〉身体的〈2〉性的〈3〉ネグレクト〈4〉心理的)に分けて示した。
「地獄に落ちる」などと脅して礼拝や布教活動への参加を強制したり、進路や就労先の意思決定を妨げたりするのは、心理的虐待やネグレクトに当たると指摘。教義を理由に輸血など必要な医療行為を受けさせなかったり、性被害で妊娠した女児の人工妊娠中絶に同意しなかったりするのはネグレクトに当たるとした。
児相や自治体には、背景に宗教の信仰があったとしても、児童虐待に当たる場合は一時保護などの対応をとるよう求めた。さらに宗教団体側が親に対し、子どもへの虐待行為を指示したり、そそのかしたりした場合は、刑法の共同正犯などが成立し得るため、躊躇なく警察に相談する必要があると明記した。
宗教2世らからは指針の作成を歓迎する声があがった。27日に国会内で開かれた野党による2世らへのヒアリングに出席した30歳代女性は「虐待は現在進行形で起きており、指針ができたことは大きな意義がある」と評価した。
女性は子どもの頃から、熱心な信者だった親から集会への参加を強要され、態度が悪いとベルトで体をたたかれた。「宗教活動に割く時間が減る」として中学受験も許されなかったという。女性は「指針が30年前にあれば、私の人生は全く違うものになっていた」と語った。