学校法人「追手門(おうてもん)学院」(大阪府)の職員だった男性2人が、うつ病を発症したのは職員研修で外部講師から退職を迫られたのが原因だとして労災認定される見通しになった。
労働基準監督署は労災と認めていなかったが、2人の不服申し立てを受けた大阪労働者災害補償保険審査官が労基署の決定を取り消した。決定は22日付。
この研修を巡っては、別の男性1人もうつ病を発症したとして22年3月に労災認定されている。
決定書によると、2人は事務職員でいずれも40歳代。学院側から退職勧奨を受け、2016年8月の研修に参加し、コンサルタント会社の講師から「腐ったミカンを置いておけない」「あなたは戦力外」などと言われた。うつ病を発症して休職し、21年に退職扱いとなった。
労基署は発症時期が「研修前」として労災を認めなかったが、審査官は医師の所見から「研修後」と判断。講師の発言が強い心理的負荷をかけたと判断した。
男性の1人は昨年12月に放火殺人事件が起きた大阪・北新地の心療内科クリニックに通院。事件で亡くなった西沢弘太郎院長(当時49歳)の治療を受けていた。西沢院長の意見が審査官の判断に反映されたという。28日に記者会見した男性は「西沢院長はすべての患者が社会復帰できるよう心から願って診察してくれた。感謝している」と話した。
男性らは学院などに損害賠償や地位確認を求めて大阪地裁に提訴し、係争中。学院側は「違法な退職強要はなかった」と争っている。