「バスで幼稚園に行くのを楽しみにしていた。どうして、こんなことになってしまったのか……」
9月7日に開かれた保護者説明会で、亡くなった女児の父親はこう語り怒りをにじませたという。参加したのは114人。会場ではパニックになった保護者が泣き崩れ、過呼吸などで13人が病院に搬送された――。
事件が起きたのは9月5日だ。認定こども園「川崎幼稚園」(静岡県牧之原市)の送迎バスに、河本千奈ちゃん(3)が置き去りにされ死亡。バスは朝9時前に園に到着したが職員が確認を怠り、千奈ちゃんは気温30℃以上の炎天下で5時間にわたり車内に放置された。
「当日は、バスの運転手が休みをとっていました。臨時の運転手3人にも連絡しましたが断られ、理事長兼園長の増田立義氏(73)が代行しています。バスには70代の女性派遣社員が乗っていましたが、千奈ちゃんの下車をチェックせずに園のアプリに『登園』と入力してしまったそうです。担任は千奈ちゃんの姿がないことを認識していましたが、欠席したと思い込んでいたとか」(全国紙社会部記者)
前述した保護者説明会後、園では記者会見が開かれた。冒頭で増田園長は「亡くなった園児、ご遺族に心からお詫び申し上げます」と、頭を下げ謝罪。理事長と園長を辞任する考えを示した。しかし2時間40分におよんだ会見中、増田園長はどこか他人事のような対応。「ハッキリ話してください」という記者からの要望に、こう応えている。
「睡眠と水分不足で、年齢的にも声が出にくくなりまして……。ノドがカラカラです。私も人間なので」
「(千奈ちゃんへ)本当に苦しい思いをさせてしまいました。あの暑い中、かわいそうだった」
猛暑の車内に取り残された千奈ちゃんや遺族への謝罪会見にもかかわらず、自身の「ノドがカラカラ」と発言。千奈ちゃんの印象を問われ「(一人ひとりの)名前までわからない」とし、「ちなつちゃん」と名前を言い間違える場面もあった。
「事件当日の気温は30.5℃で、湿度は70%もありました。車内の温度は、おそらく50℃以上あったでしょう。発見された時の千奈ちゃんは、本当に悲しい姿だったとか……。近くにあった水筒は、水分が1滴もなく空。異常な暑さに耐えられなかったのか、服を脱ぎ上半身裸の状態だったそうです」(前出・記者)
事件の原因を問われた増田園長は、こう弁明している。
「(運転に)不慣れだった。(千奈ちゃんのいる)後ろを見ずに、運転記録の作業をしてしまった。年齢的に、次のことをしたら忘れてしまう」
「(病院に行くという)次の用事があり焦っていた」
過去にも送迎トラブルが「1年に数回あった」とも明かした増田園長。ズサンなチェック体制と、トップの責任感の希薄さが招いた悲劇だったようだ。