お盆に帰省した人もいるだろうが、何歳になっても「実家との関係がツラい」という声は少なくない。年金暮らしの親の経済問題や、介護、相続トラブル…。今回は、10年以内に家族と揉めた経験がある男女300人にアンケートを実施し、家族間トラブルの深層を探ってみた。あなたの実家、大丈夫?
◆家族間トラブルの傾向と対策
今回SPA!が「10年以内に家族間で大きな問題が生じた男女300人」を対象にして実施したアンケートによると、206人が「未解決」と回答した(Q1)。家族問題はなぜそこまでこじれてしまうのか。「家族機能研究所」代表で、精神科医の斎藤学氏に話を聞いた。
「家庭の数だけ問題があり、アンケート結果だけで総論は語りにくい。ただ、家族問題を解決したという3割に聞いた『解決のきっかけ』(Q2)は参考にすべきだと思います」
◆Q1. トラブルは何年で解決した?
未解決……68.7%1年以内……12.7%2~3年……9.6%4~5年……4.7%6~10年……4.3%
解決していないケースが約69%と圧倒的。長期化している家族問題も多く、解消には根気強さが求められそうだ。
◆Q2. <Q1で「トラブルを解決した」人のみ>トラブル解決のきっかけは?(複数回答)
話し合い……31.9%時間……22.3%諦めた(諦めることで気にならなくなった)……21.3%第三者の介入……18.1%死(原因である人が死んだ)……16.0%絶縁……8.5%同居した(引っ越した)……7.4%原因究明……4.3%その他……8.5%
逃げずに「話し合う」か、「時間」の経過に身を委ねるか、いっそのこと「諦める」か、が三大解決策と言えそうだ。
◆「第三者の介入」が重要
斎藤氏は「時間」や「諦める」という解決法に続く、「第三者の介入」に注目する。
「家族問題は、家族が“閉じている”から解消しにくい。家の中で問題を抱え込んでは、時間だけが過ぎ、いつの間にか深刻化している。専門家や第三者への相談が重要です」
たしかにアンケートに寄せられた事例を見ると、「姉が親を虐待し、自宅に放火などで警察沙汰になった」(50歳女性・医薬品卸売)ケースでは、「警察と市役所職員に相談し、姉をシェルターに入れた」ことで解決している。このように公共機関や精神科医ら専門家や、親戚などに助けを求めて解決した人は多い。
◆コミュニケーションで寂しさの解消を
さらに斎藤氏は、解決法の1位「話し合い」の重要性を改めて指摘する。
アンケートでも、「母の死後、父が一人で暮らす家がゴミ屋敷になった」(45歳女性・介護士)というケースでは、「こまめに電話をかけ、会いに行くようにしたら、父も少しずつ明るさを取り戻した。数年後、一緒に家を片付けてくれた」という。
◆無理やり動かすのではなく、寄り添うことから
「実家がゴミ屋敷になって悩むクライアントは、私の元にもよく来ます。“ためこみ症”の大半は、物を溢れさせて、人間関係の寂しさを埋めています。だから家族が無理やり片付けても元通りになる。引きこもりも同じです。無理やり引きずり出しても意味がない。根本にある当事者の寂しさに寄り添うことが重要なんです」
◆自分を責めすぎず第三者に頼る
「自分に原因がある」(Q3)との回答は4割近く、「コミュニケーション不足」を悔いる声は多い(Q4)。しかし斎藤氏は「家族問題はいろんな要素がからんでいるので、自責は無用です」と言う。
自分を責めず、第三者に頼り、焦らず対処することが家族問題では重要なのだ。
◆Q3. トラブルは自分にも非があった?
はい……38.7%いいえ……61.3%
「自分を責めすぎると、うつ病などにもなりかねない。原因探しはやめて、外部に助けを求めましょう」(斎藤氏)
◆Q4. <Q5で「はい」と回答した人のみ>自分の何が原因だった?(複数回答)
面倒だと目を背けて先送りにしてしまった……36.2%あまり連絡を取らなかった……26.7%解決しようとしたが途中で諦めてしまった……24.1%家族に無関心だった……21.6%あまり帰省していなかった……14.7%むしろ火に油を注いでしまった……12.9%他の家族にまかせてしまった……10.3%家族に干渉しすぎた……8.6%その他……17.2%
コロナ禍で実家と疎遠になった人は少なくない。帰省や連絡を怠るうちに問題が大きくなっているかもしれない。
【精神科医・斎藤 学氏】家族機能研究所代表。アダルトチルドレンの概念を紹介。著書に、過剰な毒親批判に警鐘を鳴らす『「毒親」って言うな!』(扶桑社)など
【調査対象】全国の30~50代男女を対象に、6月8~13日に調査。6686人中、「家族とトラブルになったことがある」のが1528人。その中から、「トラブルが10年以内」の300人が回答
取材・文/週刊SPA!編集部 アンケート/パイルアップ