東京都葛飾区が、私立認可保育所に誤支給した補助金計約5億円について、全額の返還を求めることがわかった。
区は当初、適正に使った保育所には請求しない考えだったが、保育所の不当利得になりかねないと判断し、方針を変える。数千万円規模の返済を迫られる保育所もあり、区は期限の延長などを検討する。
補助金は、パート保育士を雇用した私立認可保育所に区が支払う。区の計算方法が誤っていたことが今年に入ってわかり、2018~21年度の4年間で約70保育所に計約5億1000万円を過大に支給していたことが判明した。区側のミスだったことに加え、複数の保育所で返還額が1000万円を超えることを考慮し、区は当時、正規の人件費として使われた分の返還は求めない方針を示していた。
ところが、区が弁護士などに見解を求めたところ、保育所が余分に受け取った補助金は民法上の不当利得となり、返還義務が生じると指摘されたという。行政訴訟などに発展する恐れもあることから、区は方針の転換を余儀なくされた形だ。
区は近く保育所側への説明を始める。ただ、返還額が数百万円に上る見通しだという保育所は「すぐには用意できない額だ」と困惑しており、保育所側の反発も予想される。このため、区は返済期限の延長を含む特例措置の導入も視野に入れ、慎重に協議を進める。