ついに寿司が100円で食べられる日が終わりに近づいてきた。
これまで100円でも利益が出ていたイカ、タコ、エビといった定番の人気ネタでさえも市場価格が高騰しており、厳しい状況となっている。回転寿司チェーン各社が目指すのは「一皿100円」からの脱却だ。
「くら寿司」では100円メニューを全体の6割程度に減らすと発表した。「はま寿司」は平日一皿90円を廃止。そして「スシロー」は一皿120円に値上げするほか、高額商品の充実を画策している。
画像:株式会社元気寿司プレスリリースより引用
そんな中、豊富な一皿100円メニューと「回らない回転寿司」を標榜する完全フルオーダーシステムでメキメキと頭角を表してきたチェーンがある。元気寿司株式会社が運営する「魚べい」だ。
魚べいは現在、東日本を中心に182店舗を展開。従来型のロードサイドから利便性の高い駅前立地への出店を強めており、知名度も着々と上がってきている。
魚べいの1号店がオープンしたのは2009年のこと。それから3年後、渋谷道玄坂にオープンした同店は、他の回転寿司店では見られなかった女子高生やインバウンド観光客で連日行列ができるなど、大きな話題を呼んだ。白を基調とした清潔感ある店内は従来の回転寿司店とは一線を画し、当時はタッチパネルでのオーダーから1分以内で寿司が届くというフルオーダースタイルも近未来の回転寿司を予感させる斬新なスタイルであった。なぜ女性に絶大な人気を誇るのか1990年代の回転寿司は「元気寿司」が天下をとっていた時代だ。特に東日本では圧倒的な強さを見せていた。しかし、2000年代に入ると「かっぱ寿司」の勢力が増し、スシロー、くら寿司にも差をつけられ、三強から大きく取り残されることになってしまった。その大きな原因は元気寿司の中途半端なスタイルにあった。いまでこそ当たり前になった100円、150円、200円と多段階の価格設定をしていたのだが、それが当時は受け入れられなかったのだ。Photo by iStockそこで巻き返すために開発したのが、「回らない回転寿司」というコンセプトを持った魚べいなのである。このスタイルはコロナ禍において、絶大な支持を受けた。レーン上に寿司が流れていないので清潔感が保たれ、作りたての寿司が特急レーンで運ばれてくることで安心感を与えることもできる。多くの回転寿司チェーンが抱える悩みの種である「清潔感」と「作ってからの時間経過」という問題は、魚べいスタイルでなければ解決できない。 特に女性人気は絶大だ。「2021年女性が選ぶ回転ずしチェーン」(シルミル研究所調べ)の総合満足度では魚べいが堂々の1位となっている。ネタの新鮮さ、子供連れでの利用のしやすさ、メニューの豊富さ、アクセスの良さ、価格の安さといった総合評価での1位は、時代に求められている回転寿司像を反映しているといっても良い。中でもこれから際立ってくるのが「価格」であろう。遅かれ早かれ、100円で寿司が食べられる時代は終焉すると思うが、どこまでここにこだわり続けられるかが、今後の回転寿司業界の勢力図に大きく影響してくるからだ。価格維持のウラに様々な工夫が各社とも2週間ごとのフェアに力を入れ、高額商品の投入で利益確保と顧客満足度を上げるための努力をしている。そんな中、魚べいのフェアメニューは110円、130円、160円といった低価格が主役だ。特に110円メニューが豊富なのは消費者にとっては嬉しいところだろう。グランドメニューのほとんどが110円で押さえているのにも驚かされるばかりだ。個人的には、寿司ガリが備え付けではなく、注文で運ばれてくるのがコスト削減の工夫のひとつだと思っている。実際、食べきれない量のガリを取る消費者が多く、コストの足を引っ張っているのが現状だ。Photo by iStockこうした工夫の積み重ねが幾つもあるからこそ、魚べいは価格維持ができているのだと考えられる。いま回転寿司業界は単なる「安価に寿司を食べられる場所」という立ち位置から脱却を目指し、高価格でもそれに見合った商品価値を生み出していくことを模索している。そうなった時、どこで食べてもさして変わらないという認識は消滅し、さらなる個性化が進んでいく。 「味のスシロー」、「エンタメのくら寿司」といったように、すでに個性的なイメージが定着した両社は強いと言えるだろう。しかし、魚べいもまた「回らない回転寿司」として知名度がさらに上がれば、人気の面で追いつくことも夢ではない。東日本に回転寿司を広めた最大の功労者である元気寿司。あの黄金時代を再び取り戻すべく、次なる一手を期待を込めて見守りたい。
魚べいの1号店がオープンしたのは2009年のこと。それから3年後、渋谷道玄坂にオープンした同店は、他の回転寿司店では見られなかった女子高生やインバウンド観光客で連日行列ができるなど、大きな話題を呼んだ。
白を基調とした清潔感ある店内は従来の回転寿司店とは一線を画し、当時はタッチパネルでのオーダーから1分以内で寿司が届くというフルオーダースタイルも近未来の回転寿司を予感させる斬新なスタイルであった。
1990年代の回転寿司は「元気寿司」が天下をとっていた時代だ。特に東日本では圧倒的な強さを見せていた。しかし、2000年代に入ると「かっぱ寿司」の勢力が増し、スシロー、くら寿司にも差をつけられ、三強から大きく取り残されることになってしまった。
その大きな原因は元気寿司の中途半端なスタイルにあった。いまでこそ当たり前になった100円、150円、200円と多段階の価格設定をしていたのだが、それが当時は受け入れられなかったのだ。
Photo by iStock
そこで巻き返すために開発したのが、「回らない回転寿司」というコンセプトを持った魚べいなのである。
このスタイルはコロナ禍において、絶大な支持を受けた。レーン上に寿司が流れていないので清潔感が保たれ、作りたての寿司が特急レーンで運ばれてくることで安心感を与えることもできる。多くの回転寿司チェーンが抱える悩みの種である「清潔感」と「作ってからの時間経過」という問題は、魚べいスタイルでなければ解決できない。
特に女性人気は絶大だ。「2021年女性が選ぶ回転ずしチェーン」(シルミル研究所調べ)の総合満足度では魚べいが堂々の1位となっている。ネタの新鮮さ、子供連れでの利用のしやすさ、メニューの豊富さ、アクセスの良さ、価格の安さといった総合評価での1位は、時代に求められている回転寿司像を反映しているといっても良い。中でもこれから際立ってくるのが「価格」であろう。遅かれ早かれ、100円で寿司が食べられる時代は終焉すると思うが、どこまでここにこだわり続けられるかが、今後の回転寿司業界の勢力図に大きく影響してくるからだ。価格維持のウラに様々な工夫が各社とも2週間ごとのフェアに力を入れ、高額商品の投入で利益確保と顧客満足度を上げるための努力をしている。そんな中、魚べいのフェアメニューは110円、130円、160円といった低価格が主役だ。特に110円メニューが豊富なのは消費者にとっては嬉しいところだろう。グランドメニューのほとんどが110円で押さえているのにも驚かされるばかりだ。個人的には、寿司ガリが備え付けではなく、注文で運ばれてくるのがコスト削減の工夫のひとつだと思っている。実際、食べきれない量のガリを取る消費者が多く、コストの足を引っ張っているのが現状だ。Photo by iStockこうした工夫の積み重ねが幾つもあるからこそ、魚べいは価格維持ができているのだと考えられる。いま回転寿司業界は単なる「安価に寿司を食べられる場所」という立ち位置から脱却を目指し、高価格でもそれに見合った商品価値を生み出していくことを模索している。そうなった時、どこで食べてもさして変わらないという認識は消滅し、さらなる個性化が進んでいく。 「味のスシロー」、「エンタメのくら寿司」といったように、すでに個性的なイメージが定着した両社は強いと言えるだろう。しかし、魚べいもまた「回らない回転寿司」として知名度がさらに上がれば、人気の面で追いつくことも夢ではない。東日本に回転寿司を広めた最大の功労者である元気寿司。あの黄金時代を再び取り戻すべく、次なる一手を期待を込めて見守りたい。
特に女性人気は絶大だ。「2021年女性が選ぶ回転ずしチェーン」(シルミル研究所調べ)の総合満足度では魚べいが堂々の1位となっている。ネタの新鮮さ、子供連れでの利用のしやすさ、メニューの豊富さ、アクセスの良さ、価格の安さといった総合評価での1位は、時代に求められている回転寿司像を反映しているといっても良い。
中でもこれから際立ってくるのが「価格」であろう。遅かれ早かれ、100円で寿司が食べられる時代は終焉すると思うが、どこまでここにこだわり続けられるかが、今後の回転寿司業界の勢力図に大きく影響してくるからだ。
各社とも2週間ごとのフェアに力を入れ、高額商品の投入で利益確保と顧客満足度を上げるための努力をしている。そんな中、魚べいのフェアメニューは110円、130円、160円といった低価格が主役だ。
特に110円メニューが豊富なのは消費者にとっては嬉しいところだろう。グランドメニューのほとんどが110円で押さえているのにも驚かされるばかりだ。
個人的には、寿司ガリが備え付けではなく、注文で運ばれてくるのがコスト削減の工夫のひとつだと思っている。実際、食べきれない量のガリを取る消費者が多く、コストの足を引っ張っているのが現状だ。
Photo by iStock
こうした工夫の積み重ねが幾つもあるからこそ、魚べいは価格維持ができているのだと考えられる。
いま回転寿司業界は単なる「安価に寿司を食べられる場所」という立ち位置から脱却を目指し、高価格でもそれに見合った商品価値を生み出していくことを模索している。そうなった時、どこで食べてもさして変わらないという認識は消滅し、さらなる個性化が進んでいく。
「味のスシロー」、「エンタメのくら寿司」といったように、すでに個性的なイメージが定着した両社は強いと言えるだろう。しかし、魚べいもまた「回らない回転寿司」として知名度がさらに上がれば、人気の面で追いつくことも夢ではない。東日本に回転寿司を広めた最大の功労者である元気寿司。あの黄金時代を再び取り戻すべく、次なる一手を期待を込めて見守りたい。
「味のスシロー」、「エンタメのくら寿司」といったように、すでに個性的なイメージが定着した両社は強いと言えるだろう。しかし、魚べいもまた「回らない回転寿司」として知名度がさらに上がれば、人気の面で追いつくことも夢ではない。
東日本に回転寿司を広めた最大の功労者である元気寿司。あの黄金時代を再び取り戻すべく、次なる一手を期待を込めて見守りたい。