介護施設での虐待が増え続けている。厚生労働省の発表によると、令和3年度の「要介護施設従事者等による高齢者虐待の相談・通報件数」は2390件で、前年度比で14%増だった。
職員の基本給は最低賃金ぎりぎりのところがほとんどで、劣悪な労働環境が常態化しているため、ストレスを抱え込む職員は多い。そのはけ口が入居者へ向かい、ときには性的虐待につながることもある。
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北海道西興部村にある特別養護老人ホームでは、入居者の身体にケガがないか確認するためと称して、職員が入居者全員の裸や下着姿を撮影する事件が発生した。
当時の入居者は60代~90代の男性17人と女性63人。2021年3月19日から3日間にわたって職員が計80人の撮影を行った。
撮影後、入居者の関係者から村に情報提供があり、事件が発覚。村は「本来必要のない写真撮影を行い、入居者の尊厳を著しく損なった」と虐待行為だったと認定。撮影を指示した当時の施設長は退職し、撮影に関わった職員も減俸などの処分を受けた。同ホームの現施設長が語る。
「以前、ある入居者が骨折していたことを見落としていて問題になったことがありました。そのようなことがないよう、前の施設長が『全員の写真を撮って身体を見ろ』と指示したのです。
なかには拒否した入居者の方もいたそうですが、『ケガがあるかどうかの確認です』との説明を受け、結局応じてくれたそうです。
入居者さんには申し訳ない気持ちです。問題があったと反省しております。配慮が足りませんでした。
現場の職員のなかには『それはダメでしょう』と意見をした人もいたそうですが、幹部の意見は覆らなかったそうです。意見が通りにくい環境だったことは否めません」
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こうした雰囲気の一方で、老人ホームでは狭い空間ゆえに愛憎まじりあう濃い人間関係が築かれる。その結果、性的暴行や強制わいせつなど「性」にまつわる事件が後を絶たない。
冒頭と同じく北海道の弟子屈町にある特別養護老人ホームでは、今月、こんな陰惨な事件が起きている。
施設に入居する100歳代の女性に性的暴行を加えたとして、弟子屈署は9月9日、同じ施設に入居する79歳の男を不同意性交等の疑いで逮捕したのだ。
79歳の男は、寝たきりで介護が必要な女性に対し、同意しない意思を表明することが困難な状態にあることに乗じて、性交等をした疑いが持たれている。
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施設の職員が性的暴行の現場を目撃し、容体が悪化したため女性は病院に搬送されたが、約3時間半後に死亡した。
病院から警察に通報があったことから、事件が発覚。警察は暴行と死亡との因果関係を調べているが、調べに対して男は「やったことは間違いない」と容疑を認めているという。
一方、施設側の担当者は「捜査中のため何もお答えできません」と答えた。
実は、寝たきりの入居者女性がわいせつ被害に遭うケースも少なくない。
後編記事『「事故としてもみ消せないか」…80歳入所女性に性的暴行を与えた40代介護職員の「仰天告白」』では、老人ホームの男性職員が、施設内のトイレで入居する80歳の女性の首を絞めて意識を失わせたたうえで性的暴行を加え、窒息死させた事件の詳細について、施設長の告白をまじえながら紹介する。