《観光バス横転》「豪腕で事業急拡大。数年前に渋谷の豪邸へ」やり手社長の“本当の評判”と逮捕運転手(26)が置かれていた“ブラックな環境” から続く
10月13日、富士山五合目を下り始めた静岡県小山町の県道で起こった観光バスの横転事故。専門家らによると、フットブレーキの多用で高熱が発生しブレーキの効きが悪くなる「フェード現象」を起こしてしまった運転手の過失が強く疑われるという。
【画像】元美杉観光バス運転手が告白した過酷な労働環境「多忙期は13連勤が月に2回。連休はなし」
他社の観光バス運転手によると、フェード現象防止策は「基本のキ」。しかし今回の事件を、運転手による単なる初歩的なミスに収れんしてしまっていいのだろうか――。
事故現場の様子 時事通信
事件発生後、10月15日に《観光バス横転》「豪腕で事業急拡大。数年前に渋谷の豪邸へ」やり手社長の“本当の評判”と逮捕運転手(26)が置かれていた“ブラックな環境”を公開した。すると公開直後から、編集部にはバス業界関係者から多くの情報提供が寄せられた。そのほとんどが、観光バス業界の過酷な実態を訴える内容だったのだ。
「ろくな研修もなく現場で不安を感じた」
「勤務が過酷で4時間睡眠が続く」
「待遇が悪すぎて生活が苦しい。優秀な人ほどすぐに辞めてしまう」
文春オンライン取材班は、バスを運行していた「美杉観光バス」(埼玉県飯能市)の複数の関係者らにも取材。印象的だったのは、元社員らが「自分たちの経験と、会見で社長が話していた内容が全然違う」と口を揃えたことだ。
事故発生当日、同社の吉田典弘社長はツアーを企画した「クラブツーリズム」の酒井博社長とともに記者会見を開き、運転手の勤務実態などについて語っている。 大手紙社会部記者が解説する。「どこか他人事のようなクラツーの酒井社長とは対照的に、美杉観光の吉田社長は終始申し訳なさそうな態度でした。人命が失われているので当たり前ですが、記者の質問にはすべて答えていました。『運転手は真面目な勤務態度で当日飲酒などの問題も無い、車両にも異常はなかった』といった説明をしており、事故の予想はできず会社として未然に防ぎようがなかったと考えているようでした」 会見に出席した記者から運転手の勤務体系について問われると、吉田社長は「運転手の休みは月にだいたい8~10日」と回答。しかし文春オンラインの取材に応じた元美杉観光のバス運転手の男性Aさんは「ありえない」とこう訴えるのだ。「多忙期は13連勤が月2回、連休はなし」「少し前まで数年間在籍していましたが、月8日の休みなんてありえませんでした。多忙期は13連勤が月に2回あったりしましたし、連休も取れませんでした。休みたい場合は相当強く上司に訴えないといけませんでした。そうしないと、次々に仕事を入れられてしまうんです。 しかも1業務につき15時間程度は拘束される。睡眠時間が4、5時間しかとれないこともありました。勤務現場の多くは遠方で、飯能の車庫から遠いため拘束時間は長くなります。予算が低い仕事が多かったからか、待機場所もなく路駐しなないといけないことが多かった。周囲に配慮してエアコンが使えずに、熱中症で倒れる運転手もいました」 別の元社員Bさんもこう訴えた。「日帰りの観光なんかが入っちゃうと、午前4時から午後11時までの19時間勤務。翌日は休みや午後からの短い仕事があてがわれるのが普通ですが、翌日も同じような仕事が入ることもありました。 Googleマップの口コミに、速度超過や乱暴な運転の目撃情報が書き込まれていますよね。これも過酷な勤務だからみなさんそのような運転になってしまうんです。次の日に備えて、少しでも寝るために早く帰りたいんですよ。乗務後の洗車も、洗車機はよほどのことがないと使わせてもらえず、これだけ大きなバスを運転手が手洗いしていましたから」 元社員らによると、運転手の研修制度にも疑問を感じることがあったようだ。道路運送法で定められている“必須研修時間” 今回、横転事故を起こし、自動車運転処罰法違反(過失致傷)容疑で静岡県警に逮捕された野口祐太容疑者(26)について、美杉観光の吉田社長は会見でこう話している。「トラック会社やバス会社の勤務を経て、昨年の7月に入社した。小さい車から始め、送迎を経て今年の春頃から観光バスの運転をするようになった。今回のルートは初めての乗務だった」 乗務経験に関係なく、バス会社は入社した貸し切りバスの運転手に対し、座学10時間、乗務20時間の研修をすることなどが道路運送法の規定で定められている。しかし数年前まで美杉観光に務めていた50代の運転手Cさんはこう明かす。「私は観光バスの運転経験なしで美杉観光に入社しましたが、受けたのは1日1、2時間の実務研修を1週間だけ。座学はほとんどありませんでした。 私はもともと地方の営業所での採用でしたが、東京での勤務を命じられ上京。翌日に観光バスに乗務しました。土地勘もなく、首都高も運転したことがありませんでしたが、『習うより慣れろ』といった感じでした。同僚運転手も地方営業所で採用されて関東に来て、すぐに長野や東北の日帰りスキーツアーの担当になった。『怖くて仕方が無い』と言っていました」 前出のAさんとBさんも、美杉観光で受けた研修は不十分だと感じていたようだ。「坂道研修として、運転をほぼしない所長が同乗したことがありました。しかし同乗中に以前の職歴などの雑談が多く、運転に集中できなかったのを覚えています。『あとは経験を積め』と言われて終わりました。20時間もの実技研修なんて受けていませんよ。座学も簡単なDVDを1時間見て、レポートを書くだけでした」(Aさん)「社長は野口容疑者について『小さい車から乗せた』と言っていましたが、自分がいたときにはそんな対応はなく、2種免許を持っていればすぐに現場に入りました。先輩の車に同乗して、運転できるところは自分でして覚えるという感じです。研修らしい研修で言うと、年に1回の雪山研修くらいでした。今回事故のあった山道の研修をやっているのは見たことがない」(Bさん)キャリア不足の運転手が“高難易度仕事”を担当も Bさんは「慢性的な人手不足で、採用後すぐに現場に送り込んでいました」とも明かした。ひときわ経験が必要な現場を、キャリア不足の運転手が担当することもあったという。「そもそも今回事故が起きたクラツーの仕事は、スケジュールがタイトすぎて『ベテラン運転手しかこなせない』が暗黙の了解でした。今回事故を起こした運転手さんのキャリアで担当していること自体、深刻な人手不足に陥っているということだと思いますよ」 長時間労働に自分の能力以上の要求。前出のCさんは「それでも待遇がよかったらまだ我慢できるけどね……」とこぼした。「有給休暇はないし、残業代は固定で交通費やボーナスはもちろん、退職金もなし。この業界はブラックな職場ばかりですが、中でも美杉は特にひどかった。PA(パーキングエリア)で他社の運転手さんから他の会社の状況を聞いて、退職を決意しました」 観光バス業界の過酷な実態。業界全体の構造に問題があるのか、はたまた美杉観光バス固有の事情に問題があるのか、またはそのどちらもか――。 美杉観光バスに勤務体系や賃金、研修制度などについて事実確認を行ったところ、「現在静岡県警察の捜査中のため回答は控えさせていただきます」と返答した。「あと自分たちが許せないのは、幹部たちの豪奢な生活です。私たちが置かれている状況と全然違う……」(Bさん) 低賃金で過酷な現場に疲弊する運転手ら。しかし、取材を進めて見えてきたのは、彼らとはあまりにもかけ離れた豪奢な生活を送る社長と副社長の姿だったのだ――。(続きを読む)◆◆◆「文春オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレス、または「文春くん公式ツイッター」のDMまで情報をお寄せ下さい。 メールアドレス:[email protected] 文春くん公式ツイッター:https://twitter.com/bunshunho2386《観光バス横転》経営幹部と運転手らの“残酷すぎる格差”「社長も副社長も豪邸住まい。高級車が何台も…」「社員は手取り19万円。働くほど赤字になった」 へ続く(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
事故発生当日、同社の吉田典弘社長はツアーを企画した「クラブツーリズム」の酒井博社長とともに記者会見を開き、運転手の勤務実態などについて語っている。
大手紙社会部記者が解説する。
「どこか他人事のようなクラツーの酒井社長とは対照的に、美杉観光の吉田社長は終始申し訳なさそうな態度でした。人命が失われているので当たり前ですが、記者の質問にはすべて答えていました。『運転手は真面目な勤務態度で当日飲酒などの問題も無い、車両にも異常はなかった』といった説明をしており、事故の予想はできず会社として未然に防ぎようがなかったと考えているようでした」
会見に出席した記者から運転手の勤務体系について問われると、吉田社長は「運転手の休みは月にだいたい8~10日」と回答。しかし文春オンラインの取材に応じた元美杉観光のバス運転手の男性Aさんは「ありえない」とこう訴えるのだ。
「少し前まで数年間在籍していましたが、月8日の休みなんてありえませんでした。多忙期は13連勤が月に2回あったりしましたし、連休も取れませんでした。休みたい場合は相当強く上司に訴えないといけませんでした。そうしないと、次々に仕事を入れられてしまうんです。
しかも1業務につき15時間程度は拘束される。睡眠時間が4、5時間しかとれないこともありました。勤務現場の多くは遠方で、飯能の車庫から遠いため拘束時間は長くなります。予算が低い仕事が多かったからか、待機場所もなく路駐しなないといけないことが多かった。周囲に配慮してエアコンが使えずに、熱中症で倒れる運転手もいました」
別の元社員Bさんもこう訴えた。
「日帰りの観光なんかが入っちゃうと、午前4時から午後11時までの19時間勤務。翌日は休みや午後からの短い仕事があてがわれるのが普通ですが、翌日も同じような仕事が入ることもありました。 Googleマップの口コミに、速度超過や乱暴な運転の目撃情報が書き込まれていますよね。これも過酷な勤務だからみなさんそのような運転になってしまうんです。次の日に備えて、少しでも寝るために早く帰りたいんですよ。乗務後の洗車も、洗車機はよほどのことがないと使わせてもらえず、これだけ大きなバスを運転手が手洗いしていましたから」 元社員らによると、運転手の研修制度にも疑問を感じることがあったようだ。道路運送法で定められている“必須研修時間” 今回、横転事故を起こし、自動車運転処罰法違反(過失致傷)容疑で静岡県警に逮捕された野口祐太容疑者(26)について、美杉観光の吉田社長は会見でこう話している。「トラック会社やバス会社の勤務を経て、昨年の7月に入社した。小さい車から始め、送迎を経て今年の春頃から観光バスの運転をするようになった。今回のルートは初めての乗務だった」 乗務経験に関係なく、バス会社は入社した貸し切りバスの運転手に対し、座学10時間、乗務20時間の研修をすることなどが道路運送法の規定で定められている。しかし数年前まで美杉観光に務めていた50代の運転手Cさんはこう明かす。「私は観光バスの運転経験なしで美杉観光に入社しましたが、受けたのは1日1、2時間の実務研修を1週間だけ。座学はほとんどありませんでした。 私はもともと地方の営業所での採用でしたが、東京での勤務を命じられ上京。翌日に観光バスに乗務しました。土地勘もなく、首都高も運転したことがありませんでしたが、『習うより慣れろ』といった感じでした。同僚運転手も地方営業所で採用されて関東に来て、すぐに長野や東北の日帰りスキーツアーの担当になった。『怖くて仕方が無い』と言っていました」 前出のAさんとBさんも、美杉観光で受けた研修は不十分だと感じていたようだ。「坂道研修として、運転をほぼしない所長が同乗したことがありました。しかし同乗中に以前の職歴などの雑談が多く、運転に集中できなかったのを覚えています。『あとは経験を積め』と言われて終わりました。20時間もの実技研修なんて受けていませんよ。座学も簡単なDVDを1時間見て、レポートを書くだけでした」(Aさん)「社長は野口容疑者について『小さい車から乗せた』と言っていましたが、自分がいたときにはそんな対応はなく、2種免許を持っていればすぐに現場に入りました。先輩の車に同乗して、運転できるところは自分でして覚えるという感じです。研修らしい研修で言うと、年に1回の雪山研修くらいでした。今回事故のあった山道の研修をやっているのは見たことがない」(Bさん)キャリア不足の運転手が“高難易度仕事”を担当も Bさんは「慢性的な人手不足で、採用後すぐに現場に送り込んでいました」とも明かした。ひときわ経験が必要な現場を、キャリア不足の運転手が担当することもあったという。「そもそも今回事故が起きたクラツーの仕事は、スケジュールがタイトすぎて『ベテラン運転手しかこなせない』が暗黙の了解でした。今回事故を起こした運転手さんのキャリアで担当していること自体、深刻な人手不足に陥っているということだと思いますよ」 長時間労働に自分の能力以上の要求。前出のCさんは「それでも待遇がよかったらまだ我慢できるけどね……」とこぼした。「有給休暇はないし、残業代は固定で交通費やボーナスはもちろん、退職金もなし。この業界はブラックな職場ばかりですが、中でも美杉は特にひどかった。PA(パーキングエリア)で他社の運転手さんから他の会社の状況を聞いて、退職を決意しました」 観光バス業界の過酷な実態。業界全体の構造に問題があるのか、はたまた美杉観光バス固有の事情に問題があるのか、またはそのどちらもか――。 美杉観光バスに勤務体系や賃金、研修制度などについて事実確認を行ったところ、「現在静岡県警察の捜査中のため回答は控えさせていただきます」と返答した。「あと自分たちが許せないのは、幹部たちの豪奢な生活です。私たちが置かれている状況と全然違う……」(Bさん) 低賃金で過酷な現場に疲弊する運転手ら。しかし、取材を進めて見えてきたのは、彼らとはあまりにもかけ離れた豪奢な生活を送る社長と副社長の姿だったのだ――。(続きを読む)◆◆◆「文春オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレス、または「文春くん公式ツイッター」のDMまで情報をお寄せ下さい。 メールアドレス:[email protected] 文春くん公式ツイッター:https://twitter.com/bunshunho2386《観光バス横転》経営幹部と運転手らの“残酷すぎる格差”「社長も副社長も豪邸住まい。高級車が何台も…」「社員は手取り19万円。働くほど赤字になった」 へ続く(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
「日帰りの観光なんかが入っちゃうと、午前4時から午後11時までの19時間勤務。翌日は休みや午後からの短い仕事があてがわれるのが普通ですが、翌日も同じような仕事が入ることもありました。
Googleマップの口コミに、速度超過や乱暴な運転の目撃情報が書き込まれていますよね。これも過酷な勤務だからみなさんそのような運転になってしまうんです。次の日に備えて、少しでも寝るために早く帰りたいんですよ。乗務後の洗車も、洗車機はよほどのことがないと使わせてもらえず、これだけ大きなバスを運転手が手洗いしていましたから」
元社員らによると、運転手の研修制度にも疑問を感じることがあったようだ。
今回、横転事故を起こし、自動車運転処罰法違反(過失致傷)容疑で静岡県警に逮捕された野口祐太容疑者(26)について、美杉観光の吉田社長は会見でこう話している。
「トラック会社やバス会社の勤務を経て、昨年の7月に入社した。小さい車から始め、送迎を経て今年の春頃から観光バスの運転をするようになった。今回のルートは初めての乗務だった」
乗務経験に関係なく、バス会社は入社した貸し切りバスの運転手に対し、座学10時間、乗務20時間の研修をすることなどが道路運送法の規定で定められている。しかし数年前まで美杉観光に務めていた50代の運転手Cさんはこう明かす。「私は観光バスの運転経験なしで美杉観光に入社しましたが、受けたのは1日1、2時間の実務研修を1週間だけ。座学はほとんどありませんでした。 私はもともと地方の営業所での採用でしたが、東京での勤務を命じられ上京。翌日に観光バスに乗務しました。土地勘もなく、首都高も運転したことがありませんでしたが、『習うより慣れろ』といった感じでした。同僚運転手も地方営業所で採用されて関東に来て、すぐに長野や東北の日帰りスキーツアーの担当になった。『怖くて仕方が無い』と言っていました」 前出のAさんとBさんも、美杉観光で受けた研修は不十分だと感じていたようだ。「坂道研修として、運転をほぼしない所長が同乗したことがありました。しかし同乗中に以前の職歴などの雑談が多く、運転に集中できなかったのを覚えています。『あとは経験を積め』と言われて終わりました。20時間もの実技研修なんて受けていませんよ。座学も簡単なDVDを1時間見て、レポートを書くだけでした」(Aさん)「社長は野口容疑者について『小さい車から乗せた』と言っていましたが、自分がいたときにはそんな対応はなく、2種免許を持っていればすぐに現場に入りました。先輩の車に同乗して、運転できるところは自分でして覚えるという感じです。研修らしい研修で言うと、年に1回の雪山研修くらいでした。今回事故のあった山道の研修をやっているのは見たことがない」(Bさん)キャリア不足の運転手が“高難易度仕事”を担当も Bさんは「慢性的な人手不足で、採用後すぐに現場に送り込んでいました」とも明かした。ひときわ経験が必要な現場を、キャリア不足の運転手が担当することもあったという。「そもそも今回事故が起きたクラツーの仕事は、スケジュールがタイトすぎて『ベテラン運転手しかこなせない』が暗黙の了解でした。今回事故を起こした運転手さんのキャリアで担当していること自体、深刻な人手不足に陥っているということだと思いますよ」 長時間労働に自分の能力以上の要求。前出のCさんは「それでも待遇がよかったらまだ我慢できるけどね……」とこぼした。「有給休暇はないし、残業代は固定で交通費やボーナスはもちろん、退職金もなし。この業界はブラックな職場ばかりですが、中でも美杉は特にひどかった。PA(パーキングエリア)で他社の運転手さんから他の会社の状況を聞いて、退職を決意しました」 観光バス業界の過酷な実態。業界全体の構造に問題があるのか、はたまた美杉観光バス固有の事情に問題があるのか、またはそのどちらもか――。 美杉観光バスに勤務体系や賃金、研修制度などについて事実確認を行ったところ、「現在静岡県警察の捜査中のため回答は控えさせていただきます」と返答した。「あと自分たちが許せないのは、幹部たちの豪奢な生活です。私たちが置かれている状況と全然違う……」(Bさん) 低賃金で過酷な現場に疲弊する運転手ら。しかし、取材を進めて見えてきたのは、彼らとはあまりにもかけ離れた豪奢な生活を送る社長と副社長の姿だったのだ――。(続きを読む)◆◆◆「文春オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレス、または「文春くん公式ツイッター」のDMまで情報をお寄せ下さい。 メールアドレス:[email protected] 文春くん公式ツイッター:https://twitter.com/bunshunho2386《観光バス横転》経営幹部と運転手らの“残酷すぎる格差”「社長も副社長も豪邸住まい。高級車が何台も…」「社員は手取り19万円。働くほど赤字になった」 へ続く(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
乗務経験に関係なく、バス会社は入社した貸し切りバスの運転手に対し、座学10時間、乗務20時間の研修をすることなどが道路運送法の規定で定められている。しかし数年前まで美杉観光に務めていた50代の運転手Cさんはこう明かす。
「私は観光バスの運転経験なしで美杉観光に入社しましたが、受けたのは1日1、2時間の実務研修を1週間だけ。座学はほとんどありませんでした。
私はもともと地方の営業所での採用でしたが、東京での勤務を命じられ上京。翌日に観光バスに乗務しました。土地勘もなく、首都高も運転したことがありませんでしたが、『習うより慣れろ』といった感じでした。同僚運転手も地方営業所で採用されて関東に来て、すぐに長野や東北の日帰りスキーツアーの担当になった。『怖くて仕方が無い』と言っていました」
前出のAさんとBさんも、美杉観光で受けた研修は不十分だと感じていたようだ。
「坂道研修として、運転をほぼしない所長が同乗したことがありました。しかし同乗中に以前の職歴などの雑談が多く、運転に集中できなかったのを覚えています。『あとは経験を積め』と言われて終わりました。20時間もの実技研修なんて受けていませんよ。座学も簡単なDVDを1時間見て、レポートを書くだけでした」(Aさん)
「社長は野口容疑者について『小さい車から乗せた』と言っていましたが、自分がいたときにはそんな対応はなく、2種免許を持っていればすぐに現場に入りました。先輩の車に同乗して、運転できるところは自分でして覚えるという感じです。研修らしい研修で言うと、年に1回の雪山研修くらいでした。今回事故のあった山道の研修をやっているのは見たことがない」(Bさん)
キャリア不足の運転手が“高難易度仕事”を担当も Bさんは「慢性的な人手不足で、採用後すぐに現場に送り込んでいました」とも明かした。ひときわ経験が必要な現場を、キャリア不足の運転手が担当することもあったという。「そもそも今回事故が起きたクラツーの仕事は、スケジュールがタイトすぎて『ベテラン運転手しかこなせない』が暗黙の了解でした。今回事故を起こした運転手さんのキャリアで担当していること自体、深刻な人手不足に陥っているということだと思いますよ」 長時間労働に自分の能力以上の要求。前出のCさんは「それでも待遇がよかったらまだ我慢できるけどね……」とこぼした。「有給休暇はないし、残業代は固定で交通費やボーナスはもちろん、退職金もなし。この業界はブラックな職場ばかりですが、中でも美杉は特にひどかった。PA(パーキングエリア)で他社の運転手さんから他の会社の状況を聞いて、退職を決意しました」 観光バス業界の過酷な実態。業界全体の構造に問題があるのか、はたまた美杉観光バス固有の事情に問題があるのか、またはそのどちらもか――。 美杉観光バスに勤務体系や賃金、研修制度などについて事実確認を行ったところ、「現在静岡県警察の捜査中のため回答は控えさせていただきます」と返答した。「あと自分たちが許せないのは、幹部たちの豪奢な生活です。私たちが置かれている状況と全然違う……」(Bさん) 低賃金で過酷な現場に疲弊する運転手ら。しかし、取材を進めて見えてきたのは、彼らとはあまりにもかけ離れた豪奢な生活を送る社長と副社長の姿だったのだ――。(続きを読む)◆◆◆「文春オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレス、または「文春くん公式ツイッター」のDMまで情報をお寄せ下さい。 メールアドレス:[email protected] 文春くん公式ツイッター:https://twitter.com/bunshunho2386《観光バス横転》経営幹部と運転手らの“残酷すぎる格差”「社長も副社長も豪邸住まい。高級車が何台も…」「社員は手取り19万円。働くほど赤字になった」 へ続く(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
Bさんは「慢性的な人手不足で、採用後すぐに現場に送り込んでいました」とも明かした。ひときわ経験が必要な現場を、キャリア不足の運転手が担当することもあったという。
「そもそも今回事故が起きたクラツーの仕事は、スケジュールがタイトすぎて『ベテラン運転手しかこなせない』が暗黙の了解でした。今回事故を起こした運転手さんのキャリアで担当していること自体、深刻な人手不足に陥っているということだと思いますよ」
長時間労働に自分の能力以上の要求。前出のCさんは「それでも待遇がよかったらまだ我慢できるけどね……」とこぼした。
「有給休暇はないし、残業代は固定で交通費やボーナスはもちろん、退職金もなし。この業界はブラックな職場ばかりですが、中でも美杉は特にひどかった。PA(パーキングエリア)で他社の運転手さんから他の会社の状況を聞いて、退職を決意しました」 観光バス業界の過酷な実態。業界全体の構造に問題があるのか、はたまた美杉観光バス固有の事情に問題があるのか、またはそのどちらもか――。 美杉観光バスに勤務体系や賃金、研修制度などについて事実確認を行ったところ、「現在静岡県警察の捜査中のため回答は控えさせていただきます」と返答した。「あと自分たちが許せないのは、幹部たちの豪奢な生活です。私たちが置かれている状況と全然違う……」(Bさん) 低賃金で過酷な現場に疲弊する運転手ら。しかし、取材を進めて見えてきたのは、彼らとはあまりにもかけ離れた豪奢な生活を送る社長と副社長の姿だったのだ――。(続きを読む)◆◆◆「文春オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレス、または「文春くん公式ツイッター」のDMまで情報をお寄せ下さい。 メールアドレス:[email protected] 文春くん公式ツイッター:https://twitter.com/bunshunho2386《観光バス横転》経営幹部と運転手らの“残酷すぎる格差”「社長も副社長も豪邸住まい。高級車が何台も…」「社員は手取り19万円。働くほど赤字になった」 へ続く(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
「有給休暇はないし、残業代は固定で交通費やボーナスはもちろん、退職金もなし。この業界はブラックな職場ばかりですが、中でも美杉は特にひどかった。PA(パーキングエリア)で他社の運転手さんから他の会社の状況を聞いて、退職を決意しました」
観光バス業界の過酷な実態。業界全体の構造に問題があるのか、はたまた美杉観光バス固有の事情に問題があるのか、またはそのどちらもか――。
美杉観光バスに勤務体系や賃金、研修制度などについて事実確認を行ったところ、「現在静岡県警察の捜査中のため回答は控えさせていただきます」と返答した。
「あと自分たちが許せないのは、幹部たちの豪奢な生活です。私たちが置かれている状況と全然違う……」(Bさん)
低賃金で過酷な現場に疲弊する運転手ら。しかし、取材を進めて見えてきたのは、彼らとはあまりにもかけ離れた豪奢な生活を送る社長と副社長の姿だったのだ――。
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《観光バス横転》経営幹部と運転手らの“残酷すぎる格差”「社長も副社長も豪邸住まい。高級車が何台も…」「社員は手取り19万円。働くほど赤字になった」 へ続く
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