他の車の前に急に割り込む「あおり運転」をしたとして、香川県警三豊署が、丸亀市の男(21)を道路交通法違反(あおり運転)容疑で書類送検していたことが、捜査関係者への取材でわかった。
23日付。男は計約900メートルにわたって追跡していたという。2020年6月施行の改正道路交通法で創設された「あおり運転罪」での摘発は、県内で2例目。(中山真緒、足立壮)
捜査関係者によると、男は7月3日午後1時頃、三豊市三野町の片側2車線の県道で軽乗用車を運転中、近くを走る乗用車の前方に割り込んだ疑い。その後、前方で停止し、後退を2回繰り返したという。
三豊署は、男の割り込みが、あおり運転罪の「進路変更禁止違反(無理な追い越し)」にあたると判断した。被害車両のドライブレコーダーの映像や目撃者の証言などから裏付けたという。
男は割り込みの直前、被害車両を追跡。幅寄せして故意に衝突させ、車を破損させており、その場で三豊署に器物損壊容疑で緊急逮捕されていた。
後退して被害車両を無理やり停車させた後には、乗用車を蹴ったりスケートボードを投げつけたりしたほか、仲裁に入った人に体当たりをし、胸ぐらをつかんでいたことも判明。地検が7月25日、器物損壊と暴行の罪で起訴していた。
■2017年の事故で社会問題化
相手の車につきまとい、幅寄せや割り込みなど危険な行為を繰り返す、あおり運転。2017年6月、神奈川県の東名高速道路で、あおり運転で停止させられたワゴン車が、後続の大型トラックに追突され、一家4人が死傷する事故で社会問題化した。
当時、道路交通法にあおり運転の定義はなかった。同法の車間距離保持義務違反などを適用するケースが多かったが、「罰則が軽すぎる」との指摘もあった。
その後、20年6月に改正道交法が施行。妨害目的での急ブレーキや幅寄せ、執拗(しつよう)なクラクションやハイビームなど、10類型の違反行為が事故の有無に関係なく処罰対象となった。
法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金。高速道で他の車を停止させるなど「著しい危険を生じさせた場合」には、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科された。いずれも直ちに免許取り消しとなった。
同時期に、改正自動車運転死傷行為処罰法も施行された。走行中の車の前に停車するなどし、相手を死傷させた場合には、最高刑が懲役20年の危険運転致死傷罪も適用されるようになった。
あおり運転の被害に遭った場合、ドライブレコーダーやスマートフォンの映像が証拠として有効とされる。県警幹部は「あおられていると感じたら、車を安全な場所に止め、車を降りず窓も開けずに110番することが大事」と話した。