兵庫県淡路市の神戸淡路鳴門自動車道で5月、乗用車が道路脇の斜面に突っ込んで炎上した事故で、近くを通りかかり、運転者の女性と子ども3人を助けた同県高砂市の会社員山田英輔さん(48)、長男で高校2年の臣之輔さん(16)の親子に、県が善行表彰「のじぎく賞」を贈った。
山田さん親子は「みんな無事でよかった」と話した。(川本一喬)
事故は5月5日午後1時半頃、淡路市尾崎の同自動車道上り線で起きた。大阪市都島区の会社員女性(38)が運転する乗用車のタイヤが走行中にパンク。車はバランスを崩して道路脇の斜面に突っ込んで前部が大破し、ボンネット付近から出火した。
「野焼きだろうか」――。山田さんは家族4人で南あわじ市へ遊びに出かけ、帰宅途中に事故現場を通りかかった。遠くから煙が見えていたが、近づくと、燃えているのは乗用車だ。後部座席の窓から、女性が身を乗り出して手を振り、悲痛な表情で助けを求めていた。
「あかん、助けないと!」
路肩に停車し、山田さんと臣之輔さんは燃えている車に駆け寄った。ボンネットの大部分が炎に包まれている。自力で車外に出てうずくまっていた女性を離れた安全な場所まで連れて行った後、山田さんらが車の中をのぞくと、女性の長女(12)、次女(9)、長男(5)がおびえた様子で後部座席に座っていた。
炎はますます大きくなり、周囲の木が燃えて「パン、パン」とはじけるような音が響く。熱い。車体の後部まで火が回る恐怖を感じながら、山田さんが急いで窓から中の子どもを抱きかかえて助け出し、臣之輔さんが女性のいる所まで連れて行った。全員、救助した直後、爆発音がして炎の勢いが増し、車は全焼した。
山田さんの110番などで県警高速隊と救急車が駆けつけた。事故の衝撃で、女性は肋骨(ろっこつ)を、長女は左脚の骨を折る重傷。次女と長男は軽傷で、病院に搬送された。山田さん親子にけがはなかった。
県警高速隊の井上一彦隊長は、のじぎく賞の贈呈式が開かれた高砂署で、「救助してもらわなければ、子どもたちは亡くなっていたかもしれない」と勇気ある行動をたたえた。賞状を受け取った山田さんは「危険は感じたけれど、体が勝手に動いていた。息子が協力してくれたから、助けられた」と振り返り、臣之輔さんは「父は格好良かった。困っている人を助けられる大人になりたい」と語った。