救急車が緊急走行するときに使う「サイレン」。しかし、救急要請をした通報者から「鳴らさないで」といった声が届くことがあるという。こうした中、熊本市消防局がサイレンの必要性を訴える啓発動画を公開して反響を呼んでいる。動画は約3分間で、実際の119番通報をもとに職員がやりとりを再現し、自主制作したものだ。動画内では、腹痛を訴える通報者が「救急車ってサイレン鳴らしますよね?」「いや~、鳴らさないで来て欲しいんですけど」と、サイレンを使わない出動にこだわる。

指令員が「一刻も早く、安全に現場に向かうために必要ですので」と説明すると、電話口では「じゃあ自分で行こうかなぁ」といった声が。指令員が症状が悪化する危険性を伝えても、「あ、もう大丈夫です、どうにかします」と通話が切れてしまった。通報者「そんな緊急とかじゃないんで」さらに別のやり取りでは…。指令員が「救急車は5分ほどでまいりますので、音が聞こえてきたら…」と伝えると、通報者が「あ~もうサイレンは鳴らさんでよかです。ちょっと遅いんでですね、時間が。サイレンとか使わないできてくださいね。そんな緊急とかじゃないんで」とするケースもあった。動画では、熊本市消防局が「確かにサイレンはうるさいかもしれない 大袈裟かもしれない 迷惑かもしれない」としつつ、「それでも誰かの命のため、鳴らさなくてはならない」と強調。サイレンや赤色灯の使用は道路交通法で決められており、交通事故を未然に防ぐためにも必要不可欠なこととして、署員たちが頭を下げて理解と協力を求める形で終わっている。動画はYouTubeで11月9日に公開され、1万5000回以上も再生されている。(11月17日時点)住宅街で“サイレンなし”の要望が目立つ考えさせられる内容だが、啓発動画を公開したのはなぜだろう。例えば、サイレンを鳴らさないとどうなるのだろうか。熊本市消防局の担当者に聞いた。――啓発動画を公開した、経緯や背景を教えて。救急要請の場合に多いのですが、通報者から「サイレンを止めて来てほしい」などと要望されることがあります。応対する指令員は、道路交通法上の理由などの説明を交えながら、その都度(鳴らすことの)理解を求めているような状況です。啓発動画を活用して広報することで、必要とされる方には一刻も早く現場へ、医療機関には安全に搬送することが可能になります。市民の安全安心、緊急車両の安全かつ有効な活用につながればと公開しました。――サイレンを鳴らさないでとの要望は、通報全体のうちどれくらい?熊本市消防局に2022年10月寄せられた、救急要請に関する119番通報は3385件ありました。このうち約150件でサイレンを使わないでほしいとの要望がありました。月ごとに若干の違いはありますが、大体は毎月この程度の要望があります。――鳴らしてほしくない理由はどんなものが多い?主に「近所の迷惑になる」というもので、夜間の住宅街で救急車の要請時に多いです。サイレンを消せないと伝えると救急要請を断ることもあるので、緊急性は低いのではと想定できます。赤色灯だけでは緊急車両とみなされない――サイレンを鳴らさずに緊急走行はできるの?救急車も消防車も緊急走行の場合は道路交通法で、緊急通行時のサイレンの吹鳴と赤色灯の点灯が義務付けられています。(鳴らさなければ)信号も通常と同じく止まることになり、到着に時間がかかることも想定されます。(サイレンなどを)使わずに向かうことはありません。――サイレンは救急業務にはどう役立つ?119番通報者(傷病者など)のもとには一刻も早く救急隊を到着させることが必要です。交通量が多い道路、交差点などはもちろん、特に夜間の住宅街は路地から人・自転車・自動車の飛び出しがあり、事故などの危険性も高いです。サイレン、赤色灯の必要性の効果も高いと思います。――啓発動画の反応は?YouTubeの再生回数をどう受け止めている?直接的な反響は感じていません。ただ、再生されているのをみるとご理解いただけているのかなと思っています。(サイレンなしの)要望があること、(サイレンや赤色灯が)緊急走行に必要であることが、皆さんご存じでなかった部分もあるのではとも感じています。騒ぎが気になる心情も分かるが、安全安心を守るために必要――サイレンを鳴らさないでほしい人が一定数いることをどう受け止めている?音で近所の騒ぎになる事が気になる心情は分かります。ただ、私どもの使命は緊急で助けを求めている市民のもとへ、1分1秒でも早く到着(救急隊を接触)させることです。そのためにも協力をお願いしたいと考えています。――救急業務に関連して伝えたいことはある?救急車や消防車は安全に早く到着するために、サイレンを鳴らし、赤色灯を点灯して走行します。車を運転中にサイレンや赤色灯に気付いたら、安全に道を譲っていただければとも願います。今後ともご理解とご協力のほどをお願いします。サイレンや赤色灯は救急車が迅速かつ安全に、現場や医療機関に向かうため欠かせないものだった。こうした通報者からの要望は熊本市内に限ったことではないと思うが、今回のような啓発動画で認識の共有ができれば、鳴らさないでほしいという要望も減っていくかもしれない
救急車が緊急走行するときに使う「サイレン」。しかし、救急要請をした通報者から「鳴らさないで」といった声が届くことがあるという。
こうした中、熊本市消防局がサイレンの必要性を訴える啓発動画を公開して反響を呼んでいる。動画は約3分間で、実際の119番通報をもとに職員がやりとりを再現し、自主制作したものだ。
動画内では、腹痛を訴える通報者が「救急車ってサイレン鳴らしますよね?」「いや~、鳴らさないで来て欲しいんですけど」と、サイレンを使わない出動にこだわる。
指令員が「一刻も早く、安全に現場に向かうために必要ですので」と説明すると、電話口では「じゃあ自分で行こうかなぁ」といった声が。指令員が症状が悪化する危険性を伝えても、「あ、もう大丈夫です、どうにかします」と通話が切れてしまった。
さらに別のやり取りでは…。
指令員が「救急車は5分ほどでまいりますので、音が聞こえてきたら…」と伝えると、通報者が「あ~もうサイレンは鳴らさんでよかです。ちょっと遅いんでですね、時間が。サイレンとか使わないできてくださいね。そんな緊急とかじゃないんで」とするケースもあった。
動画では、熊本市消防局が「確かにサイレンはうるさいかもしれない 大袈裟かもしれない 迷惑かもしれない」としつつ、「それでも誰かの命のため、鳴らさなくてはならない」と強調。
サイレンや赤色灯の使用は道路交通法で決められており、交通事故を未然に防ぐためにも必要不可欠なこととして、署員たちが頭を下げて理解と協力を求める形で終わっている。
動画はYouTubeで11月9日に公開され、1万5000回以上も再生されている。(11月17日時点)
考えさせられる内容だが、啓発動画を公開したのはなぜだろう。例えば、サイレンを鳴らさないとどうなるのだろうか。熊本市消防局の担当者に聞いた。
――啓発動画を公開した、経緯や背景を教えて。
救急要請の場合に多いのですが、通報者から「サイレンを止めて来てほしい」などと要望されることがあります。応対する指令員は、道路交通法上の理由などの説明を交えながら、その都度(鳴らすことの)理解を求めているような状況です。啓発動画を活用して広報することで、必要とされる方には一刻も早く現場へ、医療機関には安全に搬送することが可能になります。市民の安全安心、緊急車両の安全かつ有効な活用につながればと公開しました。
――サイレンを鳴らさないでとの要望は、通報全体のうちどれくらい?
熊本市消防局に2022年10月寄せられた、救急要請に関する119番通報は3385件ありました。このうち約150件でサイレンを使わないでほしいとの要望がありました。月ごとに若干の違いはありますが、大体は毎月この程度の要望があります。
――鳴らしてほしくない理由はどんなものが多い?
主に「近所の迷惑になる」というもので、夜間の住宅街で救急車の要請時に多いです。サイレンを消せないと伝えると救急要請を断ることもあるので、緊急性は低いのではと想定できます。
――サイレンを鳴らさずに緊急走行はできるの?
救急車も消防車も緊急走行の場合は道路交通法で、緊急通行時のサイレンの吹鳴と赤色灯の点灯が義務付けられています。(鳴らさなければ)信号も通常と同じく止まることになり、到着に時間がかかることも想定されます。(サイレンなどを)使わずに向かうことはありません。
――サイレンは救急業務にはどう役立つ?
119番通報者(傷病者など)のもとには一刻も早く救急隊を到着させることが必要です。交通量が多い道路、交差点などはもちろん、特に夜間の住宅街は路地から人・自転車・自動車の飛び出しがあり、事故などの危険性も高いです。サイレン、赤色灯の必要性の効果も高いと思います。
――啓発動画の反応は?YouTubeの再生回数をどう受け止めている?
直接的な反響は感じていません。ただ、再生されているのをみるとご理解いただけているのかなと思っています。(サイレンなしの)要望があること、(サイレンや赤色灯が)緊急走行に必要であることが、皆さんご存じでなかった部分もあるのではとも感じています。
――サイレンを鳴らさないでほしい人が一定数いることをどう受け止めている?
音で近所の騒ぎになる事が気になる心情は分かります。ただ、私どもの使命は緊急で助けを求めている市民のもとへ、1分1秒でも早く到着(救急隊を接触)させることです。そのためにも協力をお願いしたいと考えています。
――救急業務に関連して伝えたいことはある?
サイレンや赤色灯は救急車が迅速かつ安全に、現場や医療機関に向かうため欠かせないものだった。こうした通報者からの要望は熊本市内に限ったことではないと思うが、今回のような啓発動画で認識の共有ができれば、鳴らさないでほしいという要望も減っていくかもしれない