男女平等が進んでも…「上昇婚」を望む女性の数が変わらない“納得の理由”

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内閣府の調査で「恋人が欲しくない」と回答する男女(20~30代未婚)は全体の4割を超えている。俗に言う「若者の恋愛離れ」である。一方で、国の第三者機関が実施した調査では、18~34歳の男女の8割以上が、「いずれ結婚するつもり」だと考えているのだという。恋愛はしたくないけど結婚はしたい。こうしたギャップはなぜ生まれているのか。
【写真】この記事の写真を見る(4枚) ここでは世代・トレンド評論家の牛窪恵氏による『恋愛結婚の終焉』(光文社新書)の一部を抜粋。現代女性が結婚相手に求める条件、そしてその背景を探る。

◆◆◆男性への要求は増えるばかり 男性の雇用や年収は「恋愛経験」や「恋愛(結婚)意欲」とも深く結びついており、取材しても、非正規や年収200~300万円台の男性(おもに20~30代)は、「僕は恋愛できる身分じゃない」や「『そっち(恋愛できる)側』の人間じゃないんで」など、みずからを卑下する傾向が見られます。 ある民間の調査でも、結婚願望が「ない」と回答した未婚男性(20~40代前半)は、やはり年収が下がるほど多く、年収500~699万円でおよそ7人に1人(14.3%)、年収100~299万円では3人に1人以上(36.6%)と、一定の開きがみてとれるのです(’21年 ネクストレベル調べ/年収700万円未満の場合)。 そんな様子を見て、「なんだか弱々しい」「頼りない」などと受け取ってしまう女性たちを、端から全否定することはできません。 ただ一方で、別の民間の調査において、女性(18歳以上)が男性に望む「最低年収」をみると、いまだに8割近くが「400万円以上」と答えています(図表1)(’21年 リンクバル「未婚男女の婚活・結婚意識調査」)。図表1 未婚男女(18歳以上)が結婚相手に求める年収 おそらく彼女たちは、それを高望みとは考えていないのですが、たとえば35~39歳男性で「年収400万円」は、正規男性に限っても「最低」どころか平均より約50万円も多く、しかも同水準の未婚男性は3割程度です。多くは、30代前半までに結婚してしまっているのです(’19年 「賃金構造基本統計調査」)。 そもそも近年、結婚しない男女が増えた一因は、女性の社会進出にもあります。正社員の20~29歳で、男女の年収における「中央値」を比べても、男性では「250~400万円」、女性で「240~350万円」と、20代では劇的な差はありません(’22年 パーソルキャリア「正社員の年収中央値」)。20代は年収だけを見れば、着実に“男女平等”の時代に近づいてはいるのです。経済力も、家事・育児協力も、容姿も… 近年は、女性における「正規」割合自体も増えています。適齢期(25~34歳)女性の非正規割合は、ピーク時(’07年)には4割強にのぼりましたが、近年は3割強と減少傾向で、正規比率の増加が顕著です。(総務省「労働力調査(詳細統計)」ほか)。 それなのに、いまも女性の8割近くは「年収400万円以上」を結婚相手の最低条件だとするなど、91.6%(*1)が男性に「経済力」を求めます。そのうえ同じ調査では、96.5%が「家事・育児の能力や姿勢(家事・育児協力)」を男性に望み、さらに(恋愛時ほどではないにせよ)81.3%の女性が、「容姿(見た目力)」まで求めるようになりました。 *1 「重視する+考慮する」の合計。「第16回出生動向基本調査」より まるで、結婚相手に「3高(高学歴、高収入、高身長)」を求めていた、能天気な私たちバブル女性の青春時代(’80年代後半~’90年代前半)に逆戻りしたかのようです。いえそれどころか、新たに家事・育児力を求める分、男性への要求をさらに強めたとも言えるでしょう。「キャリア女性は結婚しづらい」は風説 女性の社会進出が進んだ’90年代後半~’10年ぐらいまで、「高年収の女性は、男性が敬遠するので結婚しづらい」といった噂も囁かれていました。 ですが、アナリストでリクルートワークス研究所研究員の坂本貴志氏によれば、「キャリア女性、すなわち年収が高い女性が結婚できないというのは、少なくとも現代においては風説に過ぎない」とのこと(’18年 同「リクルートワークス研究所サイト―少子化はキャリア女性のせい?」5月23日掲載)。 たとえば、女性で年収500万円以上の層は、圧倒的に「未婚」に多いのですが、おそらくその最大の理由は「高年収女性が結婚できない」からではなく、「結婚(出産)した女性が、少なからず(非正規に雇用転換するなどして)年収500万円未満の働き方を選択するからではないか」と想像できます(’22年 内閣府「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」)。女性も「高収入プレミアム」傾向 また、リクルートワークス研究所が、未婚男女の年齢・年収別に「向こう1年間で結婚に至る確率」を計算した数値も、先の“風説”を否定します。年収が上がるにつれて結婚確率も上がる「高収入プレミアム」は、男性ほどではないものの、女性においても明らかで、年収増につれて結婚確率もほぼ上昇するのです(図表2)。 おそらく背後には、キャリア女性ほど異性との出会いのチャンスが多い、あるいは男性側が結婚後のことも考えて「収入の高い女性」を進んで選んでいる可能性もあるでしょう。先の「第16回出生動向基本調査」を見ても、男性が結婚相手に「経済力」を求める割合は年々増加しており、’21年時点で約5割(48.2%)にものぼっているのですから。また、先の民間(リンクバル)の調査を見ても、結婚相手の女性に「年収300万円以上」を求める男性が、既に5割以上もいるのです。女性の変わらない「上昇婚志向」 一方で、坂本氏は「女性の保守的な思想こそが、未婚率を上昇させている」とも言います。なぜなら、彼の研究や同研究所の統計分析においても、女性は年収200万円台であろうが、500万円以上であろうが、自身の収入未満の男性とは、まったくと言っていいほど結婚していないからです。 山田教授は、生活レベルや社会的地位の上昇を目的に、経済力が高い異性を結婚相手に選ぶことを「上昇婚志向」と定義しましたが、「均等法改正以降、これほど長きにわたって女性の『上昇婚志向』が変わらない(減少しない)とは思ってもみなかった」そうです。 背後にあるのは、「『仕事の劣化』ではないか」とのこと。仕事に楽しさや憧れを抱きにくい社会だからこそ、上昇婚に期待をかけてしまうのではないか、といいます。あるいは、一部のキャリア女性においては「(将来の)妻が夫より稼いでいると、夫も肩身が狭く感じるのではないか」など、過度に気を遣ってしまっているのかもしれません。「年収が自分より上」の男性は減っていく 実は私も独身時代、恥ずかしながら結婚式の3か月前に「ドタキャン」した過去があります。婚約者が私に黙って仕事を辞めていたことが分かり、「信頼できない」と感じたからです。いまも若い未婚女性に取材する機会が多いので、彼女たちが強い将来不安から、結婚相手の男性に「堂々として欲しい」「安定した年収(稼ぎ)を」と望む気持ちは分かります。 ただ、だからといって「いまの(未婚時代の)生活水準を落としたくない」からと、令和のいまも上昇婚志向を捨てず、昭和の視点で相手を探すようでは、結婚に至りにくいはずです。なぜなら既述の通り、若い女性では近年、正規割合が増え、平均年収も少しずつ男性に近づいており、年収が「自分より上」の男性は今後、減っていくからです。 内閣府が、結婚意向のある未婚男女に「今、結婚していない理由」を聞いた調査でも、20~30代女性の回答で圧倒的1位は、「適当な相手に巡り会わない」(49.9%)でした(’19年 同「少子化社会対策に関する意識調査」)。ですが、少々厳しい言い方をすれば、男性に「自分より上」の経済力のほか、家事・育児力も、見た目力も、そのうえ「恋愛力」までをも求めているようでは、思うような相手に巡り合えなくても当然ではないでしょうか。親と同居で現状に安心? また、’21年時点で、7割前後の未婚男女(18~34歳)は、いずれも親と同居しています(「第16回出生動向基本調査」)。この割合は、私(弊社)が積水ハウスと2年間マーケティング調査を続け、「同居親子(母娘)」に向けた新たな住まい(「CASA figlia(カーサ・フィーリア)―娘と暮らす家」)を開発した’06年当時から、さほど変わりません。 山田教授は「近年の親世代は寿命が長く、子世代が40歳を過ぎても、彼らの精神的支柱として健在であるケースが多い」といいます。ゆえに、子どもたちは自身の老後不安を感じながらも、自分を愛してくれる存在が身近にいる現状に安心し、「結婚は、いい人が現れてから考えよう」などと、つい先送りしてしまうこともあるのでしょう。(牛窪 恵/Webオリジナル(外部転載))
ここでは世代・トレンド評論家の牛窪恵氏による『恋愛結婚の終焉』(光文社新書)の一部を抜粋。現代女性が結婚相手に求める条件、そしてその背景を探る。
◆◆◆
男性の雇用や年収は「恋愛経験」や「恋愛(結婚)意欲」とも深く結びついており、取材しても、非正規や年収200~300万円台の男性(おもに20~30代)は、「僕は恋愛できる身分じゃない」や「『そっち(恋愛できる)側』の人間じゃないんで」など、みずからを卑下する傾向が見られます。
ある民間の調査でも、結婚願望が「ない」と回答した未婚男性(20~40代前半)は、やはり年収が下がるほど多く、年収500~699万円でおよそ7人に1人(14.3%)、年収100~299万円では3人に1人以上(36.6%)と、一定の開きがみてとれるのです(’21年 ネクストレベル調べ/年収700万円未満の場合)。
そんな様子を見て、「なんだか弱々しい」「頼りない」などと受け取ってしまう女性たちを、端から全否定することはできません。
ただ一方で、別の民間の調査において、女性(18歳以上)が男性に望む「最低年収」をみると、いまだに8割近くが「400万円以上」と答えています(図表1)(’21年 リンクバル「未婚男女の婚活・結婚意識調査」)。
図表1 未婚男女(18歳以上)が結婚相手に求める年収
おそらく彼女たちは、それを高望みとは考えていないのですが、たとえば35~39歳男性で「年収400万円」は、正規男性に限っても「最低」どころか平均より約50万円も多く、しかも同水準の未婚男性は3割程度です。多くは、30代前半までに結婚してしまっているのです(’19年 「賃金構造基本統計調査」)。
そもそも近年、結婚しない男女が増えた一因は、女性の社会進出にもあります。正社員の20~29歳で、男女の年収における「中央値」を比べても、男性では「250~400万円」、女性で「240~350万円」と、20代では劇的な差はありません(’22年 パーソルキャリア「正社員の年収中央値」)。20代は年収だけを見れば、着実に“男女平等”の時代に近づいてはいるのです。
近年は、女性における「正規」割合自体も増えています。適齢期(25~34歳)女性の非正規割合は、ピーク時(’07年)には4割強にのぼりましたが、近年は3割強と減少傾向で、正規比率の増加が顕著です。(総務省「労働力調査(詳細統計)」ほか)。
それなのに、いまも女性の8割近くは「年収400万円以上」を結婚相手の最低条件だとするなど、91.6%(*1)が男性に「経済力」を求めます。そのうえ同じ調査では、96.5%が「家事・育児の能力や姿勢(家事・育児協力)」を男性に望み、さらに(恋愛時ほどではないにせよ)81.3%の女性が、「容姿(見た目力)」まで求めるようになりました。
*1 「重視する+考慮する」の合計。「第16回出生動向基本調査」より
まるで、結婚相手に「3高(高学歴、高収入、高身長)」を求めていた、能天気な私たちバブル女性の青春時代(’80年代後半~’90年代前半)に逆戻りしたかのようです。いえそれどころか、新たに家事・育児力を求める分、男性への要求をさらに強めたとも言えるでしょう。
「キャリア女性は結婚しづらい」は風説 女性の社会進出が進んだ’90年代後半~’10年ぐらいまで、「高年収の女性は、男性が敬遠するので結婚しづらい」といった噂も囁かれていました。 ですが、アナリストでリクルートワークス研究所研究員の坂本貴志氏によれば、「キャリア女性、すなわち年収が高い女性が結婚できないというのは、少なくとも現代においては風説に過ぎない」とのこと(’18年 同「リクルートワークス研究所サイト―少子化はキャリア女性のせい?」5月23日掲載)。 たとえば、女性で年収500万円以上の層は、圧倒的に「未婚」に多いのですが、おそらくその最大の理由は「高年収女性が結婚できない」からではなく、「結婚(出産)した女性が、少なからず(非正規に雇用転換するなどして)年収500万円未満の働き方を選択するからではないか」と想像できます(’22年 内閣府「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」)。女性も「高収入プレミアム」傾向 また、リクルートワークス研究所が、未婚男女の年齢・年収別に「向こう1年間で結婚に至る確率」を計算した数値も、先の“風説”を否定します。年収が上がるにつれて結婚確率も上がる「高収入プレミアム」は、男性ほどではないものの、女性においても明らかで、年収増につれて結婚確率もほぼ上昇するのです(図表2)。 おそらく背後には、キャリア女性ほど異性との出会いのチャンスが多い、あるいは男性側が結婚後のことも考えて「収入の高い女性」を進んで選んでいる可能性もあるでしょう。先の「第16回出生動向基本調査」を見ても、男性が結婚相手に「経済力」を求める割合は年々増加しており、’21年時点で約5割(48.2%)にものぼっているのですから。また、先の民間(リンクバル)の調査を見ても、結婚相手の女性に「年収300万円以上」を求める男性が、既に5割以上もいるのです。女性の変わらない「上昇婚志向」 一方で、坂本氏は「女性の保守的な思想こそが、未婚率を上昇させている」とも言います。なぜなら、彼の研究や同研究所の統計分析においても、女性は年収200万円台であろうが、500万円以上であろうが、自身の収入未満の男性とは、まったくと言っていいほど結婚していないからです。 山田教授は、生活レベルや社会的地位の上昇を目的に、経済力が高い異性を結婚相手に選ぶことを「上昇婚志向」と定義しましたが、「均等法改正以降、これほど長きにわたって女性の『上昇婚志向』が変わらない(減少しない)とは思ってもみなかった」そうです。 背後にあるのは、「『仕事の劣化』ではないか」とのこと。仕事に楽しさや憧れを抱きにくい社会だからこそ、上昇婚に期待をかけてしまうのではないか、といいます。あるいは、一部のキャリア女性においては「(将来の)妻が夫より稼いでいると、夫も肩身が狭く感じるのではないか」など、過度に気を遣ってしまっているのかもしれません。「年収が自分より上」の男性は減っていく 実は私も独身時代、恥ずかしながら結婚式の3か月前に「ドタキャン」した過去があります。婚約者が私に黙って仕事を辞めていたことが分かり、「信頼できない」と感じたからです。いまも若い未婚女性に取材する機会が多いので、彼女たちが強い将来不安から、結婚相手の男性に「堂々として欲しい」「安定した年収(稼ぎ)を」と望む気持ちは分かります。 ただ、だからといって「いまの(未婚時代の)生活水準を落としたくない」からと、令和のいまも上昇婚志向を捨てず、昭和の視点で相手を探すようでは、結婚に至りにくいはずです。なぜなら既述の通り、若い女性では近年、正規割合が増え、平均年収も少しずつ男性に近づいており、年収が「自分より上」の男性は今後、減っていくからです。 内閣府が、結婚意向のある未婚男女に「今、結婚していない理由」を聞いた調査でも、20~30代女性の回答で圧倒的1位は、「適当な相手に巡り会わない」(49.9%)でした(’19年 同「少子化社会対策に関する意識調査」)。ですが、少々厳しい言い方をすれば、男性に「自分より上」の経済力のほか、家事・育児力も、見た目力も、そのうえ「恋愛力」までをも求めているようでは、思うような相手に巡り合えなくても当然ではないでしょうか。親と同居で現状に安心? また、’21年時点で、7割前後の未婚男女(18~34歳)は、いずれも親と同居しています(「第16回出生動向基本調査」)。この割合は、私(弊社)が積水ハウスと2年間マーケティング調査を続け、「同居親子(母娘)」に向けた新たな住まい(「CASA figlia(カーサ・フィーリア)―娘と暮らす家」)を開発した’06年当時から、さほど変わりません。 山田教授は「近年の親世代は寿命が長く、子世代が40歳を過ぎても、彼らの精神的支柱として健在であるケースが多い」といいます。ゆえに、子どもたちは自身の老後不安を感じながらも、自分を愛してくれる存在が身近にいる現状に安心し、「結婚は、いい人が現れてから考えよう」などと、つい先送りしてしまうこともあるのでしょう。(牛窪 恵/Webオリジナル(外部転載))
女性の社会進出が進んだ’90年代後半~’10年ぐらいまで、「高年収の女性は、男性が敬遠するので結婚しづらい」といった噂も囁かれていました。
ですが、アナリストでリクルートワークス研究所研究員の坂本貴志氏によれば、「キャリア女性、すなわち年収が高い女性が結婚できないというのは、少なくとも現代においては風説に過ぎない」とのこと(’18年 同「リクルートワークス研究所サイト―少子化はキャリア女性のせい?」5月23日掲載)。
たとえば、女性で年収500万円以上の層は、圧倒的に「未婚」に多いのですが、おそらくその最大の理由は「高年収女性が結婚できない」からではなく、「結婚(出産)した女性が、少なからず(非正規に雇用転換するなどして)年収500万円未満の働き方を選択するからではないか」と想像できます(’22年 内閣府「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」)。
また、リクルートワークス研究所が、未婚男女の年齢・年収別に「向こう1年間で結婚に至る確率」を計算した数値も、先の“風説”を否定します。年収が上がるにつれて結婚確率も上がる「高収入プレミアム」は、男性ほどではないものの、女性においても明らかで、年収増につれて結婚確率もほぼ上昇するのです(図表2)。
おそらく背後には、キャリア女性ほど異性との出会いのチャンスが多い、あるいは男性側が結婚後のことも考えて「収入の高い女性」を進んで選んでいる可能性もあるでしょう。先の「第16回出生動向基本調査」を見ても、男性が結婚相手に「経済力」を求める割合は年々増加しており、’21年時点で約5割(48.2%)にものぼっているのですから。また、先の民間(リンクバル)の調査を見ても、結婚相手の女性に「年収300万円以上」を求める男性が、既に5割以上もいるのです。女性の変わらない「上昇婚志向」 一方で、坂本氏は「女性の保守的な思想こそが、未婚率を上昇させている」とも言います。なぜなら、彼の研究や同研究所の統計分析においても、女性は年収200万円台であろうが、500万円以上であろうが、自身の収入未満の男性とは、まったくと言っていいほど結婚していないからです。 山田教授は、生活レベルや社会的地位の上昇を目的に、経済力が高い異性を結婚相手に選ぶことを「上昇婚志向」と定義しましたが、「均等法改正以降、これほど長きにわたって女性の『上昇婚志向』が変わらない(減少しない)とは思ってもみなかった」そうです。 背後にあるのは、「『仕事の劣化』ではないか」とのこと。仕事に楽しさや憧れを抱きにくい社会だからこそ、上昇婚に期待をかけてしまうのではないか、といいます。あるいは、一部のキャリア女性においては「(将来の)妻が夫より稼いでいると、夫も肩身が狭く感じるのではないか」など、過度に気を遣ってしまっているのかもしれません。「年収が自分より上」の男性は減っていく 実は私も独身時代、恥ずかしながら結婚式の3か月前に「ドタキャン」した過去があります。婚約者が私に黙って仕事を辞めていたことが分かり、「信頼できない」と感じたからです。いまも若い未婚女性に取材する機会が多いので、彼女たちが強い将来不安から、結婚相手の男性に「堂々として欲しい」「安定した年収(稼ぎ)を」と望む気持ちは分かります。 ただ、だからといって「いまの(未婚時代の)生活水準を落としたくない」からと、令和のいまも上昇婚志向を捨てず、昭和の視点で相手を探すようでは、結婚に至りにくいはずです。なぜなら既述の通り、若い女性では近年、正規割合が増え、平均年収も少しずつ男性に近づいており、年収が「自分より上」の男性は今後、減っていくからです。 内閣府が、結婚意向のある未婚男女に「今、結婚していない理由」を聞いた調査でも、20~30代女性の回答で圧倒的1位は、「適当な相手に巡り会わない」(49.9%)でした(’19年 同「少子化社会対策に関する意識調査」)。ですが、少々厳しい言い方をすれば、男性に「自分より上」の経済力のほか、家事・育児力も、見た目力も、そのうえ「恋愛力」までをも求めているようでは、思うような相手に巡り合えなくても当然ではないでしょうか。親と同居で現状に安心? また、’21年時点で、7割前後の未婚男女(18~34歳)は、いずれも親と同居しています(「第16回出生動向基本調査」)。この割合は、私(弊社)が積水ハウスと2年間マーケティング調査を続け、「同居親子(母娘)」に向けた新たな住まい(「CASA figlia(カーサ・フィーリア)―娘と暮らす家」)を開発した’06年当時から、さほど変わりません。 山田教授は「近年の親世代は寿命が長く、子世代が40歳を過ぎても、彼らの精神的支柱として健在であるケースが多い」といいます。ゆえに、子どもたちは自身の老後不安を感じながらも、自分を愛してくれる存在が身近にいる現状に安心し、「結婚は、いい人が現れてから考えよう」などと、つい先送りしてしまうこともあるのでしょう。(牛窪 恵/Webオリジナル(外部転載))
おそらく背後には、キャリア女性ほど異性との出会いのチャンスが多い、あるいは男性側が結婚後のことも考えて「収入の高い女性」を進んで選んでいる可能性もあるでしょう。先の「第16回出生動向基本調査」を見ても、男性が結婚相手に「経済力」を求める割合は年々増加しており、’21年時点で約5割(48.2%)にものぼっているのですから。また、先の民間(リンクバル)の調査を見ても、結婚相手の女性に「年収300万円以上」を求める男性が、既に5割以上もいるのです。
一方で、坂本氏は「女性の保守的な思想こそが、未婚率を上昇させている」とも言います。なぜなら、彼の研究や同研究所の統計分析においても、女性は年収200万円台であろうが、500万円以上であろうが、自身の収入未満の男性とは、まったくと言っていいほど結婚していないからです。
山田教授は、生活レベルや社会的地位の上昇を目的に、経済力が高い異性を結婚相手に選ぶことを「上昇婚志向」と定義しましたが、「均等法改正以降、これほど長きにわたって女性の『上昇婚志向』が変わらない(減少しない)とは思ってもみなかった」そうです。
背後にあるのは、「『仕事の劣化』ではないか」とのこと。仕事に楽しさや憧れを抱きにくい社会だからこそ、上昇婚に期待をかけてしまうのではないか、といいます。あるいは、一部のキャリア女性においては「(将来の)妻が夫より稼いでいると、夫も肩身が狭く感じるのではないか」など、過度に気を遣ってしまっているのかもしれません。
「年収が自分より上」の男性は減っていく 実は私も独身時代、恥ずかしながら結婚式の3か月前に「ドタキャン」した過去があります。婚約者が私に黙って仕事を辞めていたことが分かり、「信頼できない」と感じたからです。いまも若い未婚女性に取材する機会が多いので、彼女たちが強い将来不安から、結婚相手の男性に「堂々として欲しい」「安定した年収(稼ぎ)を」と望む気持ちは分かります。 ただ、だからといって「いまの(未婚時代の)生活水準を落としたくない」からと、令和のいまも上昇婚志向を捨てず、昭和の視点で相手を探すようでは、結婚に至りにくいはずです。なぜなら既述の通り、若い女性では近年、正規割合が増え、平均年収も少しずつ男性に近づいており、年収が「自分より上」の男性は今後、減っていくからです。 内閣府が、結婚意向のある未婚男女に「今、結婚していない理由」を聞いた調査でも、20~30代女性の回答で圧倒的1位は、「適当な相手に巡り会わない」(49.9%)でした(’19年 同「少子化社会対策に関する意識調査」)。ですが、少々厳しい言い方をすれば、男性に「自分より上」の経済力のほか、家事・育児力も、見た目力も、そのうえ「恋愛力」までをも求めているようでは、思うような相手に巡り合えなくても当然ではないでしょうか。親と同居で現状に安心? また、’21年時点で、7割前後の未婚男女(18~34歳)は、いずれも親と同居しています(「第16回出生動向基本調査」)。この割合は、私(弊社)が積水ハウスと2年間マーケティング調査を続け、「同居親子(母娘)」に向けた新たな住まい(「CASA figlia(カーサ・フィーリア)―娘と暮らす家」)を開発した’06年当時から、さほど変わりません。 山田教授は「近年の親世代は寿命が長く、子世代が40歳を過ぎても、彼らの精神的支柱として健在であるケースが多い」といいます。ゆえに、子どもたちは自身の老後不安を感じながらも、自分を愛してくれる存在が身近にいる現状に安心し、「結婚は、いい人が現れてから考えよう」などと、つい先送りしてしまうこともあるのでしょう。(牛窪 恵/Webオリジナル(外部転載))
実は私も独身時代、恥ずかしながら結婚式の3か月前に「ドタキャン」した過去があります。婚約者が私に黙って仕事を辞めていたことが分かり、「信頼できない」と感じたからです。いまも若い未婚女性に取材する機会が多いので、彼女たちが強い将来不安から、結婚相手の男性に「堂々として欲しい」「安定した年収(稼ぎ)を」と望む気持ちは分かります。
ただ、だからといって「いまの(未婚時代の)生活水準を落としたくない」からと、令和のいまも上昇婚志向を捨てず、昭和の視点で相手を探すようでは、結婚に至りにくいはずです。なぜなら既述の通り、若い女性では近年、正規割合が増え、平均年収も少しずつ男性に近づいており、年収が「自分より上」の男性は今後、減っていくからです。
内閣府が、結婚意向のある未婚男女に「今、結婚していない理由」を聞いた調査でも、20~30代女性の回答で圧倒的1位は、「適当な相手に巡り会わない」(49.9%)でした(’19年 同「少子化社会対策に関する意識調査」)。ですが、少々厳しい言い方をすれば、男性に「自分より上」の経済力のほか、家事・育児力も、見た目力も、そのうえ「恋愛力」までをも求めているようでは、思うような相手に巡り合えなくても当然ではないでしょうか。
また、’21年時点で、7割前後の未婚男女(18~34歳)は、いずれも親と同居しています(「第16回出生動向基本調査」)。この割合は、私(弊社)が積水ハウスと2年間マーケティング調査を続け、「同居親子(母娘)」に向けた新たな住まい(「CASA figlia(カーサ・フィーリア)―娘と暮らす家」)を開発した’06年当時から、さほど変わりません。
山田教授は「近年の親世代は寿命が長く、子世代が40歳を過ぎても、彼らの精神的支柱として健在であるケースが多い」といいます。ゆえに、子どもたちは自身の老後不安を感じながらも、自分を愛してくれる存在が身近にいる現状に安心し、「結婚は、いい人が現れてから考えよう」などと、つい先送りしてしまうこともあるのでしょう。
(牛窪 恵/Webオリジナル(外部転載))

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