山梨県警「ポケカに輪ゴム」で批判殺到。“キズはNG”という転売ヤー目線が常識となったポケカブームの末路

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連日のようにポケモンカード関連のニュースが報道されている。転売、偽造、セミナーにサロン、投資情報、極めつけは強盗に殺傷事件……。 そんなポケモンカードのニュースのなか、山梨県富士吉田市の店からポケモンカードを盗んだとして25歳の男が逮捕された事件で、山梨県警が「押収したポケモンカードの取り扱いがずさんだ」とSNS上で批判が相次いでいる。
強盗から盗まれたカードを取り戻した警察。「褒められるべきなのになぜ……?」と思う人もいるだろうが、その後のマスメディアへの公開方法が悪かった。大量のポケモンカードを輪ゴムで留め、押収品を公開したのだ。
◆山梨県警の取り扱い方に対する意見
お札のように通し番号もなければ偽造防止もないポケモンカード。押収したカードは、盗まれたものなのか、偽造されたものか、今では鑑定も難しくなっている。
筆者としては、取り戻せた事に焦点を当て、山梨県警に「よくやった」と労をねぎらいたいところだ。
果たして本当に取り扱い方法は間違っていたのだろうか。秋葉原のポケモンカードショップ店員とポケモンカードプレイヤーに実際に話を伺ってみた。
◆カードショップ店員の意見は山梨県警の取り扱いに否定的
いまやポケモンカードは美術品と同等と言っても過言ではない。投資家もポケモンカード界隈に参加しており、ポケモンカードの事を「鑑定会社で最高評価を取るための素体」と言う人もいる。
ポケモンカードを取り扱う際に無造作に素手で取り扱うなんてもってのほか。息も殺し、マスクをして手袋を使い、傷のつかないように取り扱うのが業界の常識なのである。
たとえ今は価値のないカードでも、ルールやプレイスタイル次第で価値は大きく変動する物もあるわけで……。新品開封ですら気を使うポケモンカードば、輪ゴムの傷跡どころか小さな汚れキズなどですら大きな減額対象となる。
「取り戻したポケモンカードを再査定し、減額となってしまう傷に対して山梨県警はどう責任を取るのか……」話を聞いたカードショップ店員はこのように語った。
◆「キズがついたら価格が下がる」は転売ヤー的見解 一方でポケモンカードプレイヤーからは逆の意見も多かった。
プレイヤーとしてみれば、プレイしてこそのポケモンカード。たしかにコレクターも存在する世界だが、現在のように値段が釣り上げられた状態がおかしいだけである。いまのポケモンカードはプレイヤー各々が楽しく遊べる環境ではなくなってしまった。
プレイヤーの中には、輪ゴムで束ねて保管したり、お菓子の空き缶に入れて無造作に保管しているなんて人もいる。
プレイヤーではない山梨県警が輪ゴムで留めるという判断をしてしまったのは大きなミスだが、ネット上で「キズが付く」、「県警の扱いは雑だ」などの批判はおこがましい。それこそ“転売ヤーの味方”のような意見を見ているようである。 ◆所有者ではない人が輪ゴムで固定したことが問題
ショップ店員もポケモンカードプレイヤーも同意見だったのは、「所有者でもない第三者が輪ゴムで固定してしまったこと」だという。山梨県警は「紛失防止のため、押収場所ごとに価値の低いカードを輪ゴムで固定した」としているのだが、カードゲーム界隈では価値の低いカードや保管にはストレージボックスを使うのが一般的となっている。

◆税金でストレージボックスを買っても批判されていただろう
市場価値の高いカードの取り扱いには細心の注意を払っていたということは、県警内にもポケモンカードにある程度は精通した職員がいたはずだ。それならば、なぜそこから一歩先のストレージボックスで管理といった方法が取られなかったのか。
ただ、我々の税金でポケモンカードのためにストレージボックスを大量購入して公開となれば、今度はそちらの方で文句が来るかもしれない。たかがポケモンカードで……と思う人もいるだろう。
◆本来は取り返した事実に賛辞が送られるべき
結果的に輪ゴム固定による保管、公開を選択してしまった山梨県警のチョンボはポケモンカード史に大きな足跡を残したようだ。 しかし筆者はもう一度言いたい。さまざまな事件で失われてしまったものがほぼ完璧な形で取り戻されるということは滅多にないことである。強盗事件の犯人を逮捕し、盗まれたポケモンカードを取り戻すことができた山梨県警に大きな拍手を送ってもいいのではないだろうか。
文/板倉正道
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