道路脇の側溝(幅約30センチ、深さ約30センチ、水深約1センチ)にぴったり挟まって動けなくなっていた高齢女性を保護したとして、富山県警高岡署は高岡市赤祖父、会社員河口雅季さん(31)に感謝状を贈った。
河口さんは「初めてのことでパニックになったが、住民の協力が支えになった。地域や社会のつながりの大切さを実感した」と振り返った。
「ホタルでも見に行こうか」。6月21日夜、河口さんは20歳代の妻を乗用車に乗せて、2人でドライブに出かけた。道中の午後9時半頃、同市岩坪の薄暗い道路で、ヘッドライトが照らす道路左脇の側溝から、人間の後頭部らしきものがひょっこり飛び出しているのが見えた。
「えっ、ちょっと待って。今の見た?」。河口さんは10メートルほど先で慌てて車を止め、妻に尋ねた。妻は気づいていない様子だった。「幽霊かもしれない。どうしよう」
それでも、「本当に人だったら大変だ」との気持ちが勝り、河口さんはすぐにUターン。一度、現場を通り過ぎ、またUターンして同じ道を通って現場にさしかかった。すると、側溝にパジャマ姿の女性が横向きに挟まっていることがわかった。
河口さんは車内から「大丈夫ですか」と声をかけたが、女性と会話がかみ合わなかった。急いで車を降り、女性を抱きかかえて側溝から救出。すぐに110番すると同時に、妻と「大丈夫ですか」「おうちわかりますか」と声をかけ続けた。
数分後、たまたま通りかかった近隣の住民が「あそこのおばあちゃんや」と気づき、女性の家族を呼び寄せてくれた。慌てて駆けつけた家族は河口さんらに「ありがとうございます」と感謝しきりだった。
高岡署によると、女性は市内在住の70歳代。膝に擦り傷を負っていたが、病院に搬送されることもなく、無事だったという。
7月14日の感謝状贈呈式で、豊田馨署長は「誰も気づかないまま朝を迎えていたら、生命に重大な危険があった。本当にありがとうございます」とねぎらった。
河口さんは「見つけられたのは本当に奇跡。最初は怖かったが、勇気を出して行動できてよかった。地域や社会が手を取り合って、支え合っていきたい」と語り、「あの日はその後、無事にホタルも見に行けた。女性も無事で、ホタルも見られて、ハッピーエンドでよかった」と話していた。(吉武幸一郎)