小学生なのに「生活習慣病リスク」ヤバすぎる現実

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「糖尿病の芽」はすでに子どものときに「発芽」してしまっているのです(写真:shima-risu/PIXTA)
【写真で見る】「食品添加物の神様」と呼ばれた安部司氏が「無添加×美味しい」「軽食・おかずにもなる」をコンセプトに考案した「安部おやつ」の大人気メニューの数々
70万部の大ベストセラー『食品の裏側:みんな大好きな食品添加物』の著者、安部司氏が、このたび料理家のタカコナカムラ氏とともに『日本人なら必ず食べたい安部おやつ』を上梓した。
砂糖と油が大量に使われ、添加物が入った市販のお菓子に不安を感じる人、日々の子どものおやつに悩む人のために、「無添加×安心×美味しい」「軽食・おかずにもなる」をコンセプトに、112のバラエティに富む「健康おやつ」を、両氏が開発した。
今年度「第12回 料理レシピ本大賞」の料理部門で『食品の裏側』が、おやつ部門で『安部おやつ』がそれぞれ「最終候補作品」に選ばれ、大きな話題を呼んでいる。
本稿では、人生をかけて「食の安全性」を追求し続ける安部氏が「子どもたちの生活習慣病リスク」について語る。
香川県では小児生活習慣病の予防を目的に「小児生活習慣病予防健診」が行われています。

令和5年度の健診結果によると、小学4年生のうち、
・脂質異常がある児童:11.0%
・糖尿病リスクのある児童:11.7%
・肥満(20%以上)の児童:13.8%
・肝機能異常のある児童:7.7%
・脂肪肝リスクのある児童:3.4%
という衝撃的な数字が報告されました。
「生活習慣病予備軍」になっている子どもがこれほどいるのです。
小学生ばかりではありません。
ちょっと古いデータになってしまいますが、2009年に厚生労働省研究班が発表した高校生に関する調査では、「内臓脂肪」「高血圧」「高中性脂肪」「低HDLコレステロール」「空腹時高血糖」の5つで、男子の44%が1つ以上で基準値を超え、3つ以上超えた人も5%いました。
また女子では1つ以上が42%、3つ以上も3%いたという結果も出ています。
対象は千葉・富山・鹿児島の高校生1500人。複数の項目で異常を示す生徒も少なくなく、思春期を迎える段階ですでに“見えない予兆”が体に現れていることがわかります。
糖尿病は、いまや「国民病」と言われます。
厚生労働省の「患者調査」によると全国で糖尿病の治療を受けている総患者数は552万人超といわれます。
しかしこれは診断がついて通院して治療を受けている人の数であって、糖尿病が強く疑われる、あるいは糖尿病の可能性が否定できない人がそれぞれ1000万人ずつ、つまり約2000万人が糖尿病予備軍だといわれています。なんと20歳以上の5人のうち1人は糖尿病予備軍という計算になります。
政府は糖尿病を予防・改善するために「運動をしよう、食生活を見直そう」と躍起になっていますが、「糖尿病の芽」は、すでに子どものときに「発芽」してしまっているのです。
なぜこうなってしまうのか。

食の豊かな現代は「おいしいもの」にあふれています。それらの多くは高脂質、高カロリーです。
「普通に」食事をしているだけで、脂肪過多、糖質過多、カロリー過多になってしまいがちなのです。
これを食い止めるためには、私が拙著『食品の裏側』でおすすめてしている「手首の運動」しかありません。
「手首の運動? それは何?」と思われるかもしれませんが、これは長年私が提唱してきた食品選びにおけるカギとなる動作です。
つまり、食品を買うときに、手首のスナップを利かせてひっくり返して「食品の裏ラベル」を見てほしいのです。
そこには栄養成分表示が記載されているはずです。
この栄養成分の「脂質」の項目を見ましょう。脂質の量はバターの場合、小さじ山盛り1杯で約10g、大さじ軽く1杯で約15g程度です。
パウンドケーキ、デニッシュ、ミルクホイップドーナッツなどは1個当たり脂質が20~35g含まれています。つまり1個で「小さじ山盛り2~3杯」の油を摂ってしまうことがわかります。
一方、糖分については表示義務がなく、表示されているのは「炭水化物」だけ。炭水化物は「糖質+食物繊維」なので、炭水化物だけでは糖質がどのぐらい含まれているか、正確にはわかりません。
清涼飲料水であれば、食物繊維はほとんど含まれていないので、「炭水化物=糖質」と考えて構いません(詳しくは「本気で『子供に食べさせたくない』3大NG”お菓子”」を参照してください)。
しかし、そのほかの食品は知ることができません。
消費者庁では炭水化物・脂質をそれぞれ詳細に表示することを推奨しています。
たとえば炭水化物であれば糖質、食物繊維、脂質であれば飽和脂肪酸、n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸の内訳、コレステロールなど「内訳」「詳細」を記載するのです。
表は消費者庁の示す「栄養成分表示の詳細のガイドライン」から筆者が作成したものです。このガイドラインに沿った実際の食品の表示が「市販品実例(豆菓子)」です。
(外部配信先では図表や画像がうまく表示されない場合があります。その際は東洋経済オンラインでご覧ください)
当たり前ですが、詳細表示があったほうが消費者に親切です。食品を吟味し、より安心して選ぶことができるからです。
しかし、この詳細表示は「義務」ではなく、あくまで「推奨」なので、表示をするメーカーはまだ一部に限られています。
(図表:消費者庁のHP記載の資料をもとに筆者作成)
(図表:市販品をもとに筆者作成)
(図表:市販品をもとに筆者作成)
子どもは保護者が与えたものを食べます。共働きで忙しい現代の家庭では食事の準備に十分な時間が取れず、手軽に食べられるスーパーの総菜や加工品に頼る機会が多くなりがちです。
その結果として高脂質・高糖質の食事が日常化してしまっている家庭も少なくありません。
もちろん私も3人の子どもを育てた身として、子育て中の親御さんの日常が慌ただしく、常に忙しいのはわかります。しかし、いまの親御さんたちは「作るのが面倒くさい」「料理は手間がかかる」と料理に対して過剰に苦手意識を持っているような気がしてならないのです。
なぜ面倒なのか、時間がかかるのかというと「その都度、いちから作ろうとしている」からだと思います。
確かに仕事から疲れて帰ってきて魚をさばいて野菜を切って、レシピを見ながら調味料を調合して……とやっていたのでは大変です。時間がいくらあっても足りないでしょう。
でも下ごしらえがしてあって合わせ調味料さえあれば、本当に仕上げだけ、ものの10分、15分で食卓を整えることが可能です。その方法を「安部ごはん」で伝えました。
幼少時に何を食べさせるかはその子の一生を左右する大きな問題です。子どもたちを生活習慣病予備軍にしないためには「いま」が大事です。
夏休み、真っ只中です。お昼ご飯も家で食べることが多くなります。
「忙しいから」「時間がないから」と買ってきたものをレンチンして出すのではなく、本気で考えてみてほしいと思います。
(安部 司 : 『食品の裏側』著者、一般社団法人 加工食品診断士協会 代表理事)

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