旧ジャニーズ事務所(現SMILE―UP.=スマイルアップ)グループが、東京都内に少なくとも土地13カ所・建物11棟の所有権を持っていることが判明した。毎日新聞がそれぞれの不動産登記簿で確認した。不動産鑑定士・税理士の冨田建さん(49)に全ての土地・建物の推定評価額を算出してもらったところ、約380億円に上った。グループの巨額資産の一端が明らかになった。
【写真まとめ】ジュリー氏の手紙全文「株主として残るのは…」 創業者の故ジャニー喜多川氏(2019年死去)による性加害問題を巡っては、被害者への補償の原資になる可能性があるグループの資産がどれだけに上るか、注目されている。不動産に加え、音楽著作権や出版権などの資産があるとみられる。

旧ジャニーズが設置した被害者救済委員会が被害者の救済手続きを進めている。旧ジャニーズによると、11月20日時点で補償に関する受付窓口に連絡があったのは834人。金額は明らかにしないものの、同30日までに計23人への補償金支払いを完了したという。在籍実績はなくても被害を受けたと訴えた人も対象としている。 毎日新聞が調べたのは、旧ジャニーズと同社ホームページに掲載されている関連会社13社が持つ土地と建物。10~11月時点の登記簿を確認すると、港区内の6カ所、渋谷区内の6カ所、新宿区内の1カ所の計13カ所の土地を所有していた。1990年代に4カ所、2000年代に6カ所、10年代に2カ所、20年代に1カ所の名義が変更され、旧ジャニーズ側が取得した。このうち11カ所に建っている建物の所有権も持っていた。 毎日新聞の依頼を受け、冨田さんは税務上の評価額を算出する際に使用する相続税路線価や新築建物課税標準価格に基づき推定。冨田さんによると、推定評価額は土地計336億1900万円、建物計42億7640万円、合わせて378億9540万円に上った。港区赤坂の6階建て本社ビルは土地を含め約120億円だった。冨田さんは「市場の動向をみると、都心であれば概算した土地価格の2倍(13カ所で計672億円)以上での売買も考えられる」と話す。 土地の評価額は、国税庁が相続税の算出基準として公表する23年の相続税路線価を基に推定した。国土交通省発表の「公示地価」に比べ対象地点が多く、実態が反映されやすいため採用した。ただ、公示地価が取引価格に近い価格として位置づけられるのに対し、相続税路線価は急な地価高騰などで納税者に不利にならないよう、公示地価の8割程度に設定されている。このため、推定する際は、相続税路線価に登記簿上の面積を掛けた値を0・8で割り、公示地価に近づけた。また、実際の相続で使われる評価額は土地の形などで変わってくるが、今回は客観性を保つため個別の補正は行わなかった。 建物の評価額は、「新築建物課税標準価格認定基準表」(21年度)に、登記簿上の延べ床面積や、建築年数の経過で生じる減価を表す経年減点補正率を掛け、算出した。冨田さんは「実際に鑑定する場合は周囲の土地の取引価格や建築関連支出、賃貸物件の収益性なども勘案するので、あくまで課税評価額ベースの概算値にすぎない」としている。【榊真理子】
創業者の故ジャニー喜多川氏(2019年死去)による性加害問題を巡っては、被害者への補償の原資になる可能性があるグループの資産がどれだけに上るか、注目されている。不動産に加え、音楽著作権や出版権などの資産があるとみられる。
旧ジャニーズが設置した被害者救済委員会が被害者の救済手続きを進めている。旧ジャニーズによると、11月20日時点で補償に関する受付窓口に連絡があったのは834人。金額は明らかにしないものの、同30日までに計23人への補償金支払いを完了したという。在籍実績はなくても被害を受けたと訴えた人も対象としている。
毎日新聞が調べたのは、旧ジャニーズと同社ホームページに掲載されている関連会社13社が持つ土地と建物。10~11月時点の登記簿を確認すると、港区内の6カ所、渋谷区内の6カ所、新宿区内の1カ所の計13カ所の土地を所有していた。1990年代に4カ所、2000年代に6カ所、10年代に2カ所、20年代に1カ所の名義が変更され、旧ジャニーズ側が取得した。このうち11カ所に建っている建物の所有権も持っていた。
毎日新聞の依頼を受け、冨田さんは税務上の評価額を算出する際に使用する相続税路線価や新築建物課税標準価格に基づき推定。冨田さんによると、推定評価額は土地計336億1900万円、建物計42億7640万円、合わせて378億9540万円に上った。港区赤坂の6階建て本社ビルは土地を含め約120億円だった。冨田さんは「市場の動向をみると、都心であれば概算した土地価格の2倍(13カ所で計672億円)以上での売買も考えられる」と話す。
土地の評価額は、国税庁が相続税の算出基準として公表する23年の相続税路線価を基に推定した。国土交通省発表の「公示地価」に比べ対象地点が多く、実態が反映されやすいため採用した。ただ、公示地価が取引価格に近い価格として位置づけられるのに対し、相続税路線価は急な地価高騰などで納税者に不利にならないよう、公示地価の8割程度に設定されている。このため、推定する際は、相続税路線価に登記簿上の面積を掛けた値を0・8で割り、公示地価に近づけた。また、実際の相続で使われる評価額は土地の形などで変わってくるが、今回は客観性を保つため個別の補正は行わなかった。
建物の評価額は、「新築建物課税標準価格認定基準表」(21年度)に、登記簿上の延べ床面積や、建築年数の経過で生じる減価を表す経年減点補正率を掛け、算出した。冨田さんは「実際に鑑定する場合は周囲の土地の取引価格や建築関連支出、賃貸物件の収益性なども勘案するので、あくまで課税評価額ベースの概算値にすぎない」としている。【榊真理子】