〈「おぢを騙して20歳からホス狂い」“被害総額1億5000万円”頂き女子りりちゃんが手がけた『詐欺マニュアル』に購入者が殺到したワケ〉から続く
夜職の女性を中心にSNSで大きな人気を集めていた、「頂き女子りりちゃん」こと渡辺真衣氏。逮捕されるまで、彼女はどんな発信をしていたのか? かつてカリスマ的存在だった彼女の伝説の数々を、フリーランス記者の宇都宮直子氏の新刊『渇愛: 頂き女子りりちゃん』(小学館)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
【衝撃画像…】“被害総額1億5000万円”ーー胸の谷間に「ちいかわ」を挟ませた動画の『頂き女子・りりちゃん』を見る
頂き女子りりちゃんこと渡辺真衣氏(本人YouTubeより)
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彼女が多数のファンを得たのは、その型破りな豪快さにもあった。
ホス狂いとして単にお金を使うだけではなく、1000万円は下らないシャンパンタワーの上にスワロフスキーで「破滅」とデコった高級ボトルを飾り、それにダイブし、何針も縫うほどの大けがをする。“担当”として大金を貢いでいた狼谷歩(2023年10月23日に渡邊被告の共犯として逮捕・当時26歳)には、狼谷がアマゾンで2900円で購入した魚をかたどった酒器(通称シャケフォン)を1250万円で買い取るなど数々のぶっ飛んだエピソードが重ねられた。
また、「催涙スプレーをぶっかけられたときのわたし」と題して、3人の制服姿の警官に囲まれた写真をアップするなど、毎晩のように「伝説」を更新。もはや一線を越えているのではないかと心配するような過激な内容の配信や投稿が、ますます彼女のファンを増やしていった。
とりわけ多くの女のコたちから熱視線を集めていたのは、「りりちやんはホームレスです」と題して配信を行っていたYouTubeのチャンネルだ。そこに登場する彼女は、大きな花柄の毛布がかけられたベッドにピンクのスリッパくらいしか家具のないシンプルなワンルームの部屋で、大きな赤いハートマークがちりばめられたピンクのボアパジャマの胸元を大きく開け、胸の谷間からは、「ちいかわ」のぬいぐるみをのぞかせている。
アッシュブロンドのボブカットに、ハイライトやラメを多用したメイクをキレイに施し、「みんなの世界の平和を守る、魔法少女りりちゃん!」と自己紹介をする。そして時にフリップを多用しながら、「風俗嬢がされたらヤ!なこと」などの「夜の街あるある」を饒舌に語る。
現在では、夜の街で働く女性たちが自らの経験を配信するチャンネルも増加し、「客がコンビニのお菓子を持ってきたらムカつく」「小銭でもいいからその分の現金を持ってこい」など、実際に働いているコにしかわからないようなエピソードを投稿することは珍しくはなくなった。しかし当時は「風俗で働いていること」を明かしつつ、そこで起きる様々な出来事を顔出しで配信するということはまだ珍しかったのだ。
内容も、従事している女のコでなければ気がつかないようなリアルかつ具体的なものであり、多くの夜職のコからの共感を集めた。また、言葉遣いの独特さもカリスマ化に拍車をかけた。
例えば「クソ客らめえええええええええええええ」なるタイトルの配信では「びびびびびょ~!」と絶叫して視聴者の度肝を抜き、客の「おぢ」たちを「キモ客」と断罪しながらも、「先祖、先祖、先祖が怒ってる! ごめんねぇ~!!!」と独特の「りりちゃん節」を多用し、チャンネルを盛り上げるのだ。
歌舞伎町に住み込んでいた私は、毎日のように歌舞伎町の住人たちや「ホス狂い」の女のコたちの話を聞き続けていたせいか、「りりちゃん」がこの街の人気者になった頃にはすっかりこの世界に染まってきていた。私自身も彼女のこうした動画配信やSNSの更新、女のコたちが教えてくれる「どこぞのホストクラブで一晩で1000万円使ったらしい」という噂話や武勇伝を、いつしか楽しみにするようになっていた。
だがその一方で、彼女がろれつも回らず、泥酔しているであろうことが見て取れる様子で配信したり、自身のSNSで「早く捕まりたい」と心境を吐露したりしていた危うげな様子を案じてもいた。
(宇都宮 直子/Webオリジナル(外部転載))